ボルボXC60リチャージプラグインハイブリッドT6 AWDインスクリプション(4WD/8AT)
もう後戻りはできない 2022.05.21 試乗記 外部充電が可能な電動パワートレインをリニューアルした、ボルボのミドルクラスSUV「XC60リチャージプラグインハイブリッドT6 AWD」に試乗。モーターの出力向上やバッテリーの強化によって、その走りはどう変わった?気がつけば日本でも主力に
ここ数年、路上でボルボを見る機会がグンと増えていると感じているのは、きっと私だけではないだろう。2018年に導入されたコンパクトSUVの「XC40」が人気となり、輸入車のモデル別ランキングでは、「40シリーズ」がボルボの最量販モデルとして2018年は6位、翌2019年には7位と健闘。2020年も8位とベスト10内にとどまっているが、ボルボの最量販モデルの座は同年にラインナップの変更を行った「60シリーズ」が受け継ぎ、同年のランキングが6位、2021年には4位と大躍進。40シリーズも9位に入り、どうりで新車のボルボが目立つわけだ。
なかでも人気がミッドサイズSUVのXC60なのだが、そのXC60のプラグインハイブリッドモデルが電気モーターとバッテリー性能を大幅に向上し、日本でも2022年1月に販売がスタートした。
2017年10月に「XC60 T8ツインエンジンAWDインスクリプション」として導入された当初は、最高出力317PS(233kW)の2リッター直4直噴ターボ+スーパーチャージャーとCISG(Crank Integrated Starter Generator)、リアに同87PS(65kW)の電気モーターを組み合わせたパワーユニットと、容量11.6kWhの駆動用リチウムイオンバッテリーを搭載。EV走行距離は40.9kmを達成した。
これに対して、最新モデルの「XC60リチャージプラグインハイブリッドT6 AWDインスクリプション」は、最高出力253PS(186kW)の2リッター直4直噴ターボとCISG、リアに同145PS(107kW)の電気モーター、容量18.8kWhのリチウムイオンバッテリーという組み合わせになり、EV走行距離は従来の約2倍となる81kmに延びているのだ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
エンジンパワーはダウンしたが……
XC60リチャージのプラグインハイブリッドシステムでは、前輪をガソリンエンジン、後輪を電気モーターでそれぞれ別々に駆動することで、4WD(AWD)を構成している。
新旧を比較すると、新型はリアモーターの出力がアップする一方、フロントのエンジンはスーパーチャージャーを廃止したことで出力が低下している。しかし実際には、エンジンに組み合わされるCISG、すなわちスターター兼発電用モーターの性能が最高出力46PS/最大トルク160N・mから同71PS/同165N・mに向上。加速時にはエンジンを強力にアシストすることで、スーパーチャージャーの廃止をカバーする。なお、フロントのエンジンには8段オートマチックが組み合わされる。
プラグインハイブリッドシステムの変更とともに、この新しいXC60リチャージにはGoogleと共同で開発した新しいインフォテインメントシステムが搭載されている。さらに、モーターの回生ブレーキを利用することでアクセルペダルだけで加減速を行い、減速時の車両停止も可能なワンペダル機能を搭載。これを利用するには、走行時のシフトポジションを“D”から“B”に設定するとともに、車両設定でクリープ機能をオフにすればいい。
パワートレインが変わっても、変わらないのが室内空間。駆動用バッテリーは車両中央、センターコンソール下に収められるが、バッテリーセル自体の性能向上と、それを3層に積み上げる新しいレイアウトなどにより、室内の広さは以前のまま。荷室もこれまでどおり、ボディーサイズに見合った十分広いスペースが確保されているのがうれしいところだ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
スムーズで素早い走り
XC60リチャージには5つの走行モードが用意されている。基本となる「ハイブリッド」は、バッテリーに十分電気がある場合にはできるかぎりモーターで走り、必要に応じてエンジンを起動させる。「パワー」はエンジンとモーターにより強力な加速を実現。一方、「ピュア」を選ぶと、アクセルペダルを奥まで踏み込まないかぎりはモーターで走行する。このほかに滑りやすい路面で4WD走行を行う「コンスタントAWD」と、オフロード走行に適した「オフロード」が用意される。
まずはEV走行用モードのピュアを選び、走り始めることにした。バッテリー容量は満充電に少し欠けるくらいで、航続距離は67kmと表示されている。
ワンペダル機能が使える設定にして軽くアクセルペダルを踏むと、車両重量2180kgのXC60リチャージは、軽々と発進した。動きだしのスムーズさはモーター駆動ならではだが、その後の加速も素早く、アクセルペダルの動きに対して間髪入れずに反応するのも気持ちがいい。
アクセルペダルを戻すと、その量に応じて回生ブレーキが利くので、急ブレーキが必要な場面以外は右足だけで速度がコントロールできる。一方、Dレンジでは回生ブレーキの利きは穏やかだ。ワンペダル機能の搭載には賛否があるが、慣れてしまえばとても便利な機能なだけに、個人的には機能をオン/オフできるかたちで搭載を続けてほしいものだ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
近距離ならほぼEV
しばらくピュアモードを試したあと、ハイブリッドにモードを切り替える。首都高速の入り口でアクセルペダルを大きく踏み込んだときこそエンジンが始動したが、それ以外の場面ではエンジンは停止したまま、リアモーターだけで走行ができてしまう。しかも、バッテリー容量が増えたおかげで、スタートから50km以上走った時点でも電気は残っており、近距離ならほぼEV走行で済むのは頼もしいかぎりだ。バッテリー残量に余裕があれば積極的にEV走行することを考えると、わざわざピュアモードを選ぶ場面は少ないのかもしれない。
一方、急加速が必要なときや、バッテリー残量が少なくなったときには自動的にエンジンが始動するが、その場合でもエンジン音は気にならないレベルに抑えられる。パワーモードに変え、キックダウンでエンジン回転を高めたときに初めて、その存在を意識させられるほどだ。強力に加速する場面では4輪で大トルクを受け止めるAWDだけに安定性は抜群だ。
XC60リチャージの乗り心地はマイルドで、走行時の姿勢もSUVとしては落ち着いている。ガソリンエンジン仕様車に対して約200kg重量が増えたのが、良い意味で効いているのだろう。一方、プラグインハイブリッドである弱点はほとんど見当たらず、強いて言えば価格が高いことくらいだろうか。それでもXC60リチャージが誇るモーターが主役の走りは、慣れてしまうと後戻りできないほど爽快で、価格の上乗せぶん以上の満足感が得られるクルマだと思った。
(文=生方 聡/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
ボルボXC60リチャージプラグインハイブリッドT6 AWDインスクリプション
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4710×1900×1660mm
ホイールベース:2865mm
車重:2180kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:253PS(186kW)/5500rpm
エンジン最大トルク:350N・m(35.7kgf・m)/2500-5000rpm
フロントモーター最高出力:71PS(52kW)/3000-4500rpm
フロントモーター最大トルク:165N・m(16.8kgf・m)/0-3000rpm
リアモーター最高出力:145PS(107kW)/3280-15900rpm
リアモーター最大トルク:309N・m(31.5kgf・m)/0-3280rpm
タイヤ:(前)255/45R20 105V/(後)255/45R20 105V(ミシュラン・プライマシー4)
ハイブリッド燃料消費率:14.3km/リッター(WLTCモード)
充電電力使用時走行距離:81km(WLTCモード)
EV走行換算距離:81km(WLTCモード)
交流電力量消費率:234Wh/km(WLTCモード)
価格:934万円/テスト車=986万1650円
オプション装備:ボディーカラー<サンダーグレーメタリック>(9万2000円)/Bowers & Wilkinsプレミアムサウンドオーディオシステム<1100W、15スピーカー、サブウーハー付き>(34万円) ※以下、販売店オプション ボルボ・ドライブレコーダー<フロント&リアセット/スタンダード/工賃含む>(8万9650円)
テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:2044km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
-
ホンダ・シビック タイプR/ヴェゼルe:HEV RS 純正アクセサリー装着車【試乗記】 2026.1.26 ホンダアクセスが手がける純正パーツを装着した最新ラインナップのなかから、「シビック タイプR」と「ヴェゼルe:HEV RS」に試乗。独自のコンセプトとマニアックなこだわりでつくられたカスタマイズパーツの特徴と、その印象を報告する。
-
トヨタbZ4X Z(4WD)【試乗記】 2026.1.24 トヨタの電気自動車「bZ4X」の一部改良モデルが登場。「一部」はトヨタの表現だが、実際にはデザインをはじめ、駆動用の電池やモーターなども刷新した「全部改良」だ。最上級グレード「Z」(4WD)の仕上がりをリポートする。
-
アウディA5 TDIクワトロ150kW(4WD/7AT)【試乗記】 2026.1.21 「アウディA5」の2リッターディーゼルモデルが登場。ただでさえトルクフルなエンジンに高度な制御を自慢とするマイルドハイブリッドが組み合わされたリッチなパワートレインを搭載している。260km余りをドライブした印象をリポートする。
-
プジョー208 GTハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】 2026.1.20 「プジョー208」にマイルドハイブリッド車の「GTハイブリッド」が登場。仕組みとしては先に上陸を果たしたステランティス グループの各車と同じだが、小さなボディーに合わせてパワーが絞られているのが興味深いところだ。果たしてその乗り味は?
-
ベントレー・コンチネンタルGTアズール(4WD/8AT)【試乗記】 2026.1.19 ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」のなかでも、ウェルビーイングにこだわったという「アズール」に試乗。控えめ(?)な680PSのハイブリッドがかなえる走りは、快適で満ち足りていて、ラグジュアリーカーの本分を感じさせるものだった。
-
NEW
スズキ・ワゴンR ZL(FF/5MT)【試乗記】
2026.1.28試乗記スズキの「ワゴンR」がマイナーチェンジ。デザインを変更しただけでなく、予防安全装備もアップデート。工場設備を刷新してドライバビリティーまで強化しているというから見逃せない。今や希少な5段MTモデルを試す。 -
NEW
クワッドモーター搭載で過去にないパフォーマンス BMWが示したBEV版「M3」の青写真
2026.1.28デイリーコラムBMW Mが近い将来に市場投入を図る初のピュア電気自動車の骨子を発表した。車種は明かされていないものの、「BMW Mノイエクラッセ」と呼ばれており、同時に公開された写真が小型セダンであることから、おそらく次期型「M3」と思われる。その技術的特徴を紹介する。 -
NEW
第100回:コンパクトSUV百花繚乱(前編) ―デザイン的にも粒ぞろい! 老若男女をメロメロにする人気者の実情―
2026.1.28カーデザイン曼荼羅日本国内でも、海外でも、今や自動車マーケットで一大勢力となっているコンパクトSUV。ちょっと前までマイナーな存在だったこのジャンルは、なぜ老若男女をメロメロにする人気者となったのか? 話題の車種を俯瞰(ふかん)しつつ、カーデザインの識者と考えた。 -
“走行性能がいいクルマ”と“運転しやすいクルマ”は違うのか?
2026.1.27あの多田哲哉のクルマQ&Aクルマの「走行性能の高さ」と「運転のしやすさ」は本来、両立できるものなのか? 相反するようにも思える2つ特性の関係について、車両開発のプロである多田哲哉が語る。 -
スバル・ソルテラET-HS(4WD)【試乗記】
2026.1.27試乗記“マイナーチェンジ”と呼ぶにはいささか大きすぎる改良を受けた、スバルの電気自動車(BEV)「ソルテラ」。試乗を通して、劇的に改善した“BEVとしての性能”に触れていると、あまりに速いクルマの進化がもたらす、さまざまな弊害にも気づかされるのだった。 -
【番外編】バイパー、磐越を駆ける
2026.1.27バイパーほったの ヘビの毒にやられましてwebCG編集部員が、排気量8リッターの怪物「ダッジ・バイパー」で福島・新潟を縦走! 雄大な吾妻連峰や朋友との酒席で思った、自動車&自動車評論へのふとしたギモンとは。下手の考え休むに似たり? 自動車メディアの悩める子羊が、深秋の磐越を駆ける。
















































