ジープ・コマンダー リミテッド(4WD/9AT)
どうにも憎めない 2022.11.01 試乗記 ディーゼルエンジンを搭載するジープの新たな7人乗りミドルサイズSUV「コマンダー」が上陸。フラッグシップモデルである「グランドチェロキー」の流れをくむルックスや、日本でも使いやすいサイズ感で注目されるニューフェイスの走りを報告する。北米にはないジープ
ジープのコマンダーといえば、日本で2006年〜2009年に販売されていたモデルを思い起こす向きも多いだろう。それは、同世代のグランドチェロキーなどと同様のモノコック車体にラダーフレームを内蔵した堅牢な骨格設計をもつ3列シート車だった。そして、当時のジープとしては最高価格のフラッグシップでもあった。そんな初代コマンダーだが、日本での販売期間は前記のとおりわずか3年、北米や豪州などのメイン市場でも4年ほどと、とても短命なジープだった。
新旧コマンダーには“3列7人乗り”という共通点こそあれ、それ以外はまったく別物だ。新型コマンダーはグローバルでは2021年に生産開始となった最新ジープで、生産拠点はブラジルとインド。ジープの母国である北米には導入されない。日本仕様は同じ右ハンドルの国であるインド生産だそうだ。
その基本骨格は「スモールワイドプラットフォーム」と呼ばれるものだ。源流は旧フィアットがゼネラルモーターズ(GM)と共同開発したもので、初出は2005年。エンジン横置きFFレイアウトのモノコック構造で、日本でも人気の「レネゲード」とも血縁関係がある。コマンダーはそのロングホイールベースの4WD版で、現行モデルでいうとジープの「コンパス」や「アルファ・ロメオ・トナーレ」に近い。
4770mmというコマンダーの全長は、モノコック構造の3列SUVとしては「ランドローバー・ディスカバリー スポーツ」に「プジョー5008」「メルセデス・ベンツGLB」、そして「日産エクストレイル」や「三菱アウトランダー」より長く、「マツダCX-8」よりは短い。コマンダーでも3列目は大人が座るといわゆる“体育座り”に近い姿勢になるので、長距離には向かない。しかし、身長170cm程度の大人が3列目に座っても、ひざ前や頭上にいくばくかの余裕が残るのは、このなかではCX-8とコマンダーくらいである。
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ハードウエアはベテラン級
というわけで、新しいコマンダーはジープでも最新鋭の一台ながら、その乗り味はどこかなつかしい。目地段差や凹凸などでドスンと伝わってくる突き上げの衝撃や、ガラガラヒリヒリというディーゼルまる出しのノイズは、昭和……とはいわないが、平成半ばを思い出すくらいの風情がある。
エンジンは国内では“ジープ初”をうたうディーゼルの2リッターだが、海外では以前からコンパスやレネゲードに搭載されているものだ。これももとは旧フィアットがGMと提携していた時代に開発したもので「マルチジェット」もしくは「JTD」と呼ばれていた。このエンジンも初出は2008年までさかのぼる。
つまり、コマンダーの基本ハードウエアは17年前に初めて世に出たプラットフォームに、同じく14年もののディーゼルエンジンを積んでいるわけだ。もちろんプラットフォームもエンジンも、時代ごとに改良やアップデートが繰り返されてきている。とはいえ、この独特のなつかしさを感じさせる乗り味は、古典的な原設計に起因するところもありそうだ。
ダッシュボードやセンターコンソールの一部にレザークッションがあしらわれており、メーターパネルやセンターディスプレイは最新の大型カラーTFT液晶となるなど、それなりに上級感を演出している。しかし、メインとなる樹脂シボ表現がちょっと古典的で、やはり全体になつかしい雰囲気が出てしまっている。
まあ、これが日本やドイツの乗用車だったら、ひとこと“古臭い!”で終わってしまうかもしれない。しかし、コマンダーがどことなく憎めないのは、これがジープであり、頼れるオフロード性能をもつことが明らかだからだ。
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ハイテク装備はすべて最新
今回は横浜周辺の舗装路だけの試乗だったが、見るからに余裕たっぷりの地上高に、コンパスやレネゲードゆずりのシャシーやドライブトレイン、ディーゼルエンジン、そしてマッド&スノータイヤのジープ……とくれば、オフロード性能が低いわけがない。
4WDシステムは、状況に応じてFFと4WDを自動的に切り替える油圧多板クラッチによるオンデマンド型である。路面に応じて「SAND/MUD(砂・泥)」「SNOW(雪)」「AUTO(オート)」にセットすれば、スロットル、変速、トラクションコントロールなどすべての制御システムを総動員して最適な走りを提供する。
さらに「4WD LOCK」と「4WD LOW」というモードが用意されるのもジープ4WDのお約束。ただ、このFFベースの4WDは副変速機をもっていないので、「ラングラー」などのローレンジとは異なる。この場合の4WD LOWとはトータルで20:1という非常に低いレシオをもつ1速でクロール走行をするモードだが、アマチュアが踏み入れられるレベルのオフロードでは十分以上に戦闘力がある。
また、路面からの突き上げこそちょっと強めなのに車体そのものはガタピシしないのも、コマンダーをどうにも憎めない理由のひとつだ。それゆえダイレクト感もあり、オフロード志向の強いSUVとしては直進性や操縦安定性も不足はない。
さらに、先進運転支援システム(ADAS)も最新鋭。電動パーキングブレーキが備わるので、アダプティブクルーズコントロール(ACC)も渋滞機能つきの全車速対応である。高速道でACCとともに車線中央をキープする「ハイウェイアシスト」のマナーも悪くないし、車線を逸脱しかけたときに作動する「アクティブレーンマネジメント」はギョッとするくらいに強力に車線中央に引き戻されて、頼りがいがある。乗り味はなるほど古典的だが、ADASをはじめとするハイテク装備はすべて最新なのだ。
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割高感は否めない
コマンダーは3列シートに加えて、デザインを見てもわかるように、ジープの最新フラッグシップである「グランドチェロキーL」の弟分という位置づけである。サイズが大きすぎず、しかしほどよく使えるサードシートをもつSUVは貴重な存在だ。しかも、安全機能や快適性を含めた装備は充実。この物価高のご時世ではディーゼルの経済性もありがたい。というわけで、ちょっと古さのある乗り味に突っ込みどころはあれど、筆者にはどうにも憎めないコマンダーである。
ただ、どうにも気になる点があるとしたら、それは価格だ。新型コマンダーの素の本体価格は597万円。つまり約600万円。ETC車載器まで含めてほぼフル装備で、追加するのはフロアマットくらいではある。
しかし、たとえば、わが日本のマツダCX-8(2022年10月下旬現在は受注停止中)の従来価格は、2.2リッターディーゼル4WDの最上級グレードにオプションをテンコ盛りにしても、500万円強といったところである。CX-8の車体サイズや室内空間はコマンダーを上回り、より質感が高く、走りもよく、燃費もいい……と考えると、コマンダーに割高感があるのは否めない。
ジープのインポーターであるステランティス ジャパンといえば、最近は毎月のように値上げのニュースが飛び込んでくる。この点について、同社の担当者にうかがうと「私たちは正面から正直な価格設定をしているので、為替が少しでも変わると価格に反映せざるをえないんです」とのことだ。それが本当なら、昨今の円安を憎むしかないということになる。ああ、とにかく、早く落ち着いてほしい。
(文=佐野弘宗/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
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テスト車のデータ
ジープ・コマンダー リミテッド
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4770×1860×1730mm
ホイールベース:2780mm
車重:1870kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:9段AT
最高出力:170PS(125kW)/3750rpm
最大トルク:350N・m(35.7kgf・m)/1750-2500rpm
タイヤ:(前)235/55R18 100V(後)235/55R18 100V(ブリヂストン・デューラーH/T 684 II)
燃費:13.9km/リッター(WLTCモード)
価格:597万円/テスト車=601万8400円
オプション装備:なし ※以下、販売店オプション フロアマット<WEB>(4万8400円)
テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:328km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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