スズキ・ハスラーJスタイルIIターボ(4WD/CVT)
進化は続くよどこまでも 2022.11.05 試乗記 海や山はもちろん、都会にも映えるスタイリングが魅力の「スズキ・ハスラー」。スズキ自慢の軽クロスオーバーに、より装備を充実させる商品改良が加えられた。2代目となっても厚い支持を得る人気モデルの試乗を通し、進化し続ける軽自動車の“今”に触れた。より便利に、より安全に
2代目の現行モデル登場から2年半、ハスラーに仕様変更が施された。一番のハイライトは、全車速追従機能付きのACC(アダプティブクルーズコントロール)と車線逸脱抑制機能を130万円台から始まる全グレードに標準装備したことである。しかし、高速道路を走らない人なら、そんなものいらないという声もあるのではないかと思ったら、最廉価グレードの「ハイブリッドG」だけ-2万2000円のレスオプションを用意してあるのがスズキらしい。
上記の運転支援システムより日常運転でははるかに有用な誤発進抑制機能も全グレードに備わる。サポカー認定の要件としておなじみの、うっかり事故防止システムだ。壁に向かってやるのはコワイので、生け垣の手前にクルマを止めて試してみた。たしかにアクセルを踏み込んでも飛び出したりしなかった。
テストしたのは「JスタイルII」。上級モデルの「ハイブリッドX」系のグレードにメッキの装飾パーツをはじめ専用の内外装を与えた特別仕様車で、ターボエンジン+4WDだと183万3700円。試乗車はさらに全方位モニター付きカーナビなどのオプションが付き、210万円近くになっていた。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
ターボ四駆でこの燃費は優秀
210万円もするのだから当然かもしれないが、最上級ハスラーは実に上等な軽自動車である。まず乗り心地がいい。車重が50㎏重い4WDの恩恵かもしれないが、足まわりにはしっとりした落ち着きがある。フロアや上屋の剛性も高い。路面の凸凹や段差が一線を超すと、大きな衝撃を食らうこともあるが、そこまでいかない通常の範囲なら、乗り心地はフラットで快適だ。
エンジンは64PS(47kW)を発する658cc 3気筒ターボ。これに3.1PS(2.3kW)のISG(モーター機能付き発電機)と小型リチウムイオン電池を組み合わせたマイルドハイブリッドシステムを組み込む。「エネチャージ」と呼ばれる電動アシスト機構の発展型だ。
もはや手慣れた印象のあるこのパワートレインにもツッコミどころは見当たらない。発進加速は力強いし、高速道路の追い越し車線でも引け目を感じることはほとんどない。パドルシフトで有段変速が効くCVTは山道での走りも楽しませてくれる。
今回、481kmを走って27.4リッターのレギュラーガソリンを消費した。燃費は満タン法だと17.6km/リッター。車載燃費計表示では15.1km/リッターだった。燃料タンク容量は27リッターなので、途中一度、給油している。給油誤差で満タン法だとよくなりすぎている気もするが、15.1km/リッターでも装備満載の重荷を背負った軽の四駆ターボとしてはワルくない数値だと思う。ウチのヨメさんの「MRワゴン」は二駆のノンターボ純エンジン車だが、近距離走り専門のせいもあって、車載燃費計表示が15km/リッターを超えるのはまれである。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
装備の充実ぶりには感心するものの……
新搭載のACCは全車速対応。前走車に追従し、自動的に減速、加速してETCゲートも通過できる。設定速度の上限は110km/hだ。
車線逸脱抑制機能はいわゆるレーンキープアシストである。しかし高速で試すと、最初、操舵機能はないのかと思ったほど操舵力が微弱で、自らぐいぐいハンドルを動かして車線の中央を守るような積極的なレーンキープ感はない。ならば、いらないのではないかと思った。
全方位モニターカメラでノーズ先端の180°画像を見ることができる。ウチの車庫から道路に出るとき、あると実にありがたい視覚支援だ。しかし画像が暗めで解像度も低いので、近づいてくる歩行者や自転車は見つけにくい。最近乗ったジャガーのカメラは路面のバッタやカエルでも見える感じがした。軽自動車が絶えずさらされてきた“付けなきゃいけないプレッシャー”には同情するしかない。
実際、装備はテンコ盛りだ。ハスラーはクロスオーバーと呼ばれる範疇(はんちゅう)だが、4WDモデルには「ジムニー」と同じヒルディセントコントロール(降坂用自動スロットル調整装置)も付いている。一方、液晶ディスプレイには加減速Gや横GがわかるGメーターも呼び出せる。それよりもエキゾーストトラブル気味の筆者にはシートヒーターがありがたかったが。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
三日会わざれば刮目して見よ
登場から2年半がたつのに、実は2代目ハスラーに乗るのはこれが初めてだった。上屋のリアクオーターにもウィンドウを持つ6ライトに変わったが、2代目も一見してハスラーとわかる。
だが乗ってみると、このクルマには先代より1ランク上の“車格感”を覚えた。なんというか、クルマの器が大きくなったような印象だ。プラットフォーム(車台)をより高剛性で軽量な“ハーテクト”にバージョンアップしたことが効いていると思われる。
今回の取材はたまたま「日産フェアレディZバージョンST」と同道だった。つまり、新型Zの最上級モデルととっかえひっかえ乗ることになった。405PS対64PSだから、オープンロードで先行するZについていくのはタイヘンだが、ハスラーが先行していれば、油断するZを慌てさせるくらいの加速はみせる。なによりもZから乗り換えたとき、走りの品質感の点で「やっぱり軽だ」と思わせるようなトホホな差別感がないのは驚きだった。
筆者は「アルト、47万円」の時代から試乗車として軽を経験してきたが、そのころ、軽自動車をフェアレディZと同行の取材ロケに連れ出すなんて、あり得なかった。軽の進歩はフェアレディZのそれより大きいと思う。
(文=下野康史<かばたやすし>/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
スズキ・ハスラーJスタイルII
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3395×1475×1680mm
ホイールベース:2460mm
車重:890kg
駆動方式:4WD
エンジン:0.66リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
モーター:直流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:64PS(47kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:98N・m(10.0kgf・m)/3000rpm
モーター最高出力:3.1PS(2.3kW)/1000rpm
モーター最大トルク:50N・m(5.1kgf・m)/100rpm
タイヤ:(前)155/60R15 77H/(後)155/60R15 77H(ダンロップ・エナセーブEC300+)
燃費:20.8km/リッター(WLTCモード)
価格:183万3700円/テスト車=209万7865円
オプション装備:全方位モニター付きメモリーナビゲーション装着車(18万4800円)/ ※以下、販売店オプション フロアマット<ジュータン>(2万0515円)/ETC車載器(2万1120円)/ドライブレコーダー(3万7730円)
テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:459km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4)/高速道路(5)/山岳路(1)
テスト距離:481.0km
使用燃料:27.4リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:17.6km/リッター(満タン法)/15.1km/リッター(車載燃費計計測値)
◇◆こちらの記事も読まれています◆◇
◆動画で見る「スズキ・ハスラーJスタイルIIターボ」【Movie】
◆スズキが「ハスラー」の一部仕様を変更【ニュース】
◆スズキが新型「ハスラー」を発表【ニュース】

下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
-
マツダ・ロードスターPS/ロードスターS/ロードスターRF VS【試乗記】 2026.9.15 デビュー以来、不断の進化を続ける「マツダ・ロードスター」。2026年の改良は、“走り”の特別仕様車「PS」の設定が話題だが、試乗すると、ほかにも多くの変化が見てとれた。日本を代表するライトウェイトオープンスポーツの、最新モデルの仕上がりを報告する。
-
スズキ・ジムニー ノマドFC(4WD/5MT)【試乗記】 2026.9.14 「スズキ・ジムニー ノマド」でロングドライブ。本格クロカンとして悪路での走りに定評あるジムニーの5ドア・ロングボディー版は、カジュアルなSUVとしても使えるのか。多くの人が多くの時間を過ごすであろうオンロードにおける日常的シーンで、その実力を確かめた。
-
BMW X3 20 xDriveオリジナル(4WD/8AT)/X3 20d xDriveオリジナル(4WD/8AT)【試乗記】 2026.9.12 「BMW X3」に新たなエントリーグレードの「オリジナル」が登場。装備の厳選によって価格抑制を図ったとのことだが、人気のディーゼルエンジン搭載車では、なんと基準車から100万円近く引き下げたというから見逃せない。安かろう悪かろうのはずはないと思いつつも、その仕上がりをチェックした。
-
日産キックスG(FF)【試乗記】 2026.9.9 日産が満を持して投入したコンパクトSUVの新型「キックス」。Cセグメントに迫るサイズとなったこのモデルは、競合ひしめくマーケットで存在感を示せるのか? 上級グレード「G」の試乗を通し、ライバルに対するアドバンテージを探った。
-
マツダCX-5 L(FF/6AT)【試乗記】 2026.9.8 マツダの最量販SUV「CX-5」の最新モデルに試乗。計画外のフルモデルチェンジによって誕生した3代目は、走りや操作系などに、従来のマツダにはない新しい試みが見られる一台となっていた。失敗の許されない基幹モデルの仕上がりを報告する。
-
NEW
100万円台で購入できるカーマニア納得の“素うどん的名作ハッチバック”を探す
2026.9.17デイリーコラム豪華な装備や使いきれないパワーはもういらない。多くの経験を積み、もしもクルマの基本である「走る・曲がる・止まる」の純粋な手応えにこだわった「素うどん的なクルマ」が気になるのなら、おススメしたいのはこの3モデルだ。 -
BYDラッコ300プレミアム(FWD)【試乗記】
2026.9.16試乗記中国BYDの軽スーパーハイトワゴン「ラッコ」がいよいよ日本の道を走り始めた。価格の安さや装備の充実度はすでに報じられているとおりだが、やはり自動車の仕上がりは実際に動かしてみなければ分からない。高速道路やワインディングロードでの印象をリポートする。 -
新型「パジェロ」も該当 タイ生産にはどんなメリットがあるのか?
2026.9.16デイリーコラム国内メーカーが取り扱うタイ生産車のラインナップが増えている。話題の新型「三菱パジェロ」も同様だ。東南アジアに限ったとしてもさまざまな国が存在するなかで、多くのメーカーがタイを拠点とするのはなぜなのか。そのメリットを解説する。 -
第128回:日本のカーデザインに足りないもの・欠けているもの(前編) ―厳しい制約が鍛えた独創の美と創造性―
2026.9.16カーデザイン曼荼羅日本の地に自動車産業が芽生えて幾星霜。今やすっかり自動車大国となったわが国だが、ことカーデザインの質については、世界的に見てどれほどのレベルにあるのだろうか? 日本車の“美”がさらに進化していくうえで必要なものを、カーデザインの識者と考えた。 -
マツダ・ロードスターPS/ロードスターS/ロードスターRF VS【試乗記】
2026.9.15試乗記デビュー以来、不断の進化を続ける「マツダ・ロードスター」。2026年の改良は、“走り”の特別仕様車「PS」の設定が話題だが、試乗すると、ほかにも多くの変化が見てとれた。日本を代表するライトウェイトオープンスポーツの、最新モデルの仕上がりを報告する。 -
自動パーキングシステムの駐車作業は、人間が行うよりも速く正確になりうるか?
2026.9.15あの多田哲哉のクルマQ&A一部のクルマに採用されている自動駐車システムは、便利そうだが駐車に時間がかかる印象がある。それも、いつかは人間が駐車するより速く正確になるだろうか? 元トヨタの多田哲哉さんに見解を聞いた。

















































