「プロサングエ」の電動化プランは? フェラーリ・ジャパンの社長を直撃インタビュー!
2022.11.21 デイリーコラム 拡大 |
フェラーリ初のSUV(らしきモデル)「プロサングエ」が国内初公開された。京都の仁和寺を舞台に展開されたお披露目会にはフェラーリ・ジャパンのフェデリコ・パストレッリ社長も登場。プロサングエの成り立ちや、フェラーリの今後について聞いてみた。
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紛れもないスポーツモデル
2022年11月8日……といえば、日本では442年ぶりという皆既月食&天王星食を迎えたその日、その特別な瞬間を迎えた京都の仁和寺でジャパンプレミアと相成ったのが、フェラーリのプロダクションモデルとしては初の4ドア・4シーターとなるプロサングエだ。
全長×全幅×全高のスリーサイズは4973×2028×1589mm、そしてホイールベースは3018mm。このディメンションをして、フェラーリはプロサングエをSUVではなく紛れもないスポーツモデルだと仰る。もちろんそれは単にプロポーションだけではなく、独創的な四駆システムを内包したトランスアクスルパッケージを採用するなど、本格的なスポーツラインのメカニズムを押さえていることにも起因する。かくして実物はといえば、想像以上に肉感的だけどしつこくなく、加飾要素を抑えて凝縮感を押し出した印象だった。車幅に対しての背の低さも効いているのか、小さくはないけど手なじみはよさそうにも感じられる。
21世紀に入るや登場したスペチアーレ「エンツォ」への搭載に端を発する65度バンクのV型12気筒「F140」系を採用したこともまた、プロサングエの紛れもないスポーツモデルたる自信の一端だ。逆アリゲーター式のボンネットを開くと、短くはないそのエンジンがストラットタワーよりも室内側に食い込んで置かれていることが分かる。前後重量配分は49:51。トランスアクスルの恩恵はあらたかだが、そのトランスミッションとクラッチ側もドライサンプによる小型化を施し、搭載位置を下げることで低重心化とともに段差のない容量470リッターの荷室を得ている。後席の背もたれを倒して2シーターワゴン的な使い方も可能と、そのユーティリティーもまた、お歴々のフェラーリとは別次元だ。
V12以外は搭載しない
「プロサングエはイタリア語でサラブレッドを意味します。つまりわれわれにとってこのクルマは純然たるスポーツカーであり、われわれのトラディションを託すに疑いのない存在です。12気筒のフィーリングやサウンドは、このクルマが唯一無二であり、フェラーリであることを知らしめる必然でもあります」
フェラーリ・ジャパンのフェデリコ・パストレッリ社長は発表会上、メディアとのQ&Aセッションでプロサングエの成り立ち、そして最も伝統的な自然吸気のV12を搭載した理由をそのように説明した。いきなり伝家の宝刀を抜かれた日にはライバルはぐうの音も出ないという見方もあるが、フェラーリにとってプロサングエはライバル不在の孤高の存在ゆえ、持てる最も象徴的なものを積むのは当然ということだろう。
「この先、他のパワーユニットを搭載するプランはありません。そのタイミングがくることも考えられますが、いま言えるのは、このクルマはV12のみの展開です」
この先に控えるトラディショナルなV12ストラダーレ、そしてスペチアーレは2025年以降の発売、そしてそれは「ハイブリタリゼーション=電動化」を前提としたものになるとみられている。ちなみに現在、V12のラインナップは999台限定の「812コンペティツィオーネ」や「812GTS」の生産の真っただ中と目され、その生産終了と相前後するかたちで、プロサングエの生産は始まる。
大人4人がきちんとくつろげる
アナウンスどおりであれば、生産台数は年間で約2000台が上限、既に受注はそれを優に上回る勢いで積み上がっているといわれている。初物にして最後の自然吸気V12搭載車という臆測も手伝って、ともあれ人気は過熱気味だ。
「プロサングエは従来のフェラーリのクライアントはもちろんですが、そうではないカスタマーの方々にも今までとは異なるフェラーリとして注目されているようです。日々のあらゆる状況下でも、家族とともにフェラーリの世界観を感じていただける。このクルマが提供する新しい体験とその喜びに興味を抱いていただいています」
実際、注目の後席まわりは、身長181cmの筆者でも前後や天地に窮屈感なくしっかり座れる空間が用意されていた。シートのつくり込みもしっかりしていて座面や背もたれの大きさにもゆとりがあり、その着座感も前席と大差はない。広々とまでは言わないが、大人4人がくつろいで移動できる環境は整えられている。パッケージの巧みさは、返す返すも世界で最も官能的なあの12気筒を搭載するクルマとは思えない。
プロサングエが引く手あまたな一方で、新しいV12ストラダーレも着々と開発が進んでいるようで、そのスクープ情報は海外からも伝わってきている。この両方がそろい踏みとなるだろう2025年に向けて、台数規模などに鑑みると設備も含めた生産体制の再構築などが課題になるのではと思うが、この点についてはさすがに新しい話を聞くことはできなかった。
跳ね馬におけるサステイナビリティー
プロサングエのトピックのひとつは、その仕立てにおいてぜいたくななめしの革のみならず、リサイクルポリエステルの内装材を用いるなど、サステイナビリティーを指向しているところだ。フェデリコ・パストレッリ社長は今後、その潮流はますます顕著になるという。
「われわれは2013年に『ラ・フェラーリ』でスーパースポーツの電動化を先駆け、現在はV8とV6ユニットのハイブリッド化を完了しました。現在のポートフォリオでは2025年にV12をハイブリッド化、そして2030年にBEVのスポーツモデルのローンチを掲げています。そして、それに並行して生産を含めた企業活動全体でサステイナビリティーについて厳格な目標を掲げているのです。これには販売店の活動も含まれています。これら各部門での目標が明確に2030年に向かっており、そのすべてが結実することがわれわれの大きな課題なのです」
誰よりも先鋭的であることを、誰もが期待するブランド。それでも社会との親和は無視できない……どころか、範となる行動が求められるわけだ。そういう時代にプロサングエは、フェラーリが好事家を引きつけてきたその魔性を、最も民主的に世に伝えるという役割も担うことになるのだろう。
(文=渡辺敏史/写真=フェラーリ・ジャパン、webCG/編集=藤沢 勝)

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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