トヨタ・プリウスZ(FF/CVT)/プリウスZ(4WD/CVT)/プリウスPHEVプロトタイプ(FF/CVT)
名・門・復・活 2023.02.04 試乗記 トヨタのエコなイメージの看板を背負ってきた「プリウス」が、5代目でガラリとイメージチェンジ。歴代モデルで執念のように切り詰めてきた燃費に代わって追求したのは、「速さ」と「カッコよさ」だ。ハイブリッド(HEV)の市販車とプラグインハイブリッド(PHEV)のプロトタイプを試す。圧倒的に速い
新型プリウスの試乗会は、千葉県の袖ヶ浦で行われた。走りを試すワインディングロードが近くにないこの場所が選ばれたのには理由がある。すでに発売されているHEVの公道試乗に合わせ、袖ヶ浦フォレストレースウェイでPHEVが披露されたのだ。
5代目プリウスには、3種類のパワートレインが用意されている。HEVは先代と同じ1.8リッターを受け継ぎながら、2リッターエンジンを用いたシステムが加わった。PHEVは2リッターエンジンと大容量のバッテリーを組み合わせている。1.8リッターHEVは「X」と「U」というグレードで、Xは実質的なビジネス専用車、Uはトヨタのサブスクリプションサービス「KINTO」専用モデルである。2リッターHEVには装備の異なる「G」と「Z」があり、それぞれFFと四駆のE-Fourが選べる。
最初に乗ったのは、PHEVモデル。わずか3周の試乗だが、仕上がりの素晴らしさははっきりと分かった。最初の一周は「EV」モードで走る。当然ながら静粛性は抜群で、発進と加速の滑らかさはとてつもないレベルだ。音もなくスムーズに加速していき、指定された制限速度の80km/hをうっかり超えてしまいそうになった。スピードが出ていることに気づかない。
2周目に「HV」モードに切り替えても、事情はあまり変わらなかった。バッテリー残量は十分だったので、モーター走行が続く。アクセルを踏み込んでエンジンがかかっても、音はほとんど気にならない。路面がいいことは割り引かなければならないが、しっとりとした乗り心地は高級車の趣である。悠然と走るだけではなく、コーナーではスポーツカー然とした機敏な動きを見せる。少々オーバースピードでも姿勢を乱すことはなく、思いどおりのコースをトレースしていく。
KINTO専用のUを試す
比較のために先代「プリウスPHV」にも乗ることができた。長距離試乗したことがあり、乗り心地のよさと低燃費に感心したことを覚えている。しかし、新型のあとではなんともガサツに感じてしまった。エンジンが始動すると無粋な音が室内に広がり、コーナーでは不安感がある。まるで別物だった。新型の詳しいスペックはまだ発表されていないが、バッテリー容量は50%ほど増えるらしい。おそらくEV走行換算距離は100kmに近づくはずで、実用性も相当な向上が見込まれる。
次に乗ったのは、Uグレードである。1.8リッターエンジンは先代と同じだが、出力は1割以上アップしている。PHEVモデルと違い、明らかに軽快だ。従来のトヨタハイブリッドらしい乗り味で、新鮮味がない代わりに安心感がある。EVモードで走りだしたが、ちょっとアクセルを踏み込むとすぐにエンジンが始動した。ゆっくり加速すれば40km/hぐらいまでモーターだけで走ることができるが、通常の運転ではエンジンの存在感が強い。
かつて「THS II」という名前だったシステムは「シリーズパラレルハイブリッド」に名称変更された。1997年の初代から続くトヨタ自慢の技術である。複雑な制御で低燃費と高い走行性能をバランスさせるという志の高さには敬服する。改良が重ねられ、プリウスに搭載されるのは現行「ノア/ヴォクシー」で初採用された第5世代のシステムだ。リチウムイオンバッテリーを採用するなど、大幅な設計変更を施している。
今もなお輝きを失っていないが、まわりの環境が大きく変化してきた。日産やホンダが採用するハイブリッドシステムは、モーターの走りを強く前面に押し出している。EVに近い走行感覚が斬新だと受け止められ、トヨタのハイブリッドが古くさく感じられるようになった。広く普及したことで陳腐化してしまったのは皮肉なことである。
走りも音もスポーティー
次に乗った2リッターのZは、この“弱点”がかなり解消されていた。システム最高出力は従来の約1.6倍となる196PSで、公道走行では大きな余裕がある。エンジンがかかる割合は少なくなり、モーターの役割が増えているようだ。加速時にはエンジン音が高まるが、嫌な音質ではない。遮音に手をかけるとともに、音のデザインにも取り組んだそうだ。以前は不愉快に感じたエンジン音だが、新型では心地よい響きになっている。
PHEVほどではないが、走りはスポーティーである。加速性能は初代「86」に迫る数字で、乗用車の枠を超えるレベルだ。コーナーでの動きも機敏だから、山道でも楽しめるだろう。想定以上だったのはブレーキである。プリウスは長らくブレーキング時の不自然さが指摘されてきたが、まったく違和感のないフィールを実現している。回生と制動という異なる役割を負わせる技術が、長年の積み重ねで熟成期を迎えたのだ。
乗り心地もプリウスの課題だったといえる。4代目は「TNGA」を初採用したモデルで、劇的に改善されていた。試乗会場には悪路コースが設置されていて、3代目モデルと乗り比べるとあまりの違いにがくぜんとした記憶がある。その時ほどの差はなかったが、新型はさらに洗練されていた。後席に乗っても、不快な振動にさらされることはほとんどない。シャシーは第2世代のTNGAプラットフォームで、さらなる低重心化を達成したという。
FFとE-Fourを乗り比べたが、乗り心地や走行性能に大きな違いはない。ただ、発進の力強さは明らかにE-Fourに軍配が上がる。後ろからしっかりと押される感覚があり、間髪を入れず加速が始まった。メーター内に示されるリアルタイムのトルク配分を見ても、細やかなコントロールがなされていることが分かる。滑りやすい路面では大きな効果を発揮するはずだ。
残してくれたことに感謝
新型プリウスの開発過程では、タクシー専用車にするという議論があったという。ハイブリッドが一般化し、プリウスの特別性が失われたことで存在価値について考え直さなければならなくなったからだ。「コモディティーか、愛車か」という対立軸のなかで、より愛されるクルマにするという方針が定められた。そのために掲げられたテーマが、「一目ぼれするデザイン」と「虜(とりこ)にさせる走り」である。ワールドプレミアで実車のフォルムが発表されると、低く構えたスポーツカー的なルックスが高く評価された。
試乗してみて、デザインの変化に通ずる走りのブラッシュアップを確認することができた。エコのために何かをガマンするのはあまり健全なことではない。新型プリウスは、クルマ好きが言い訳することなく選ぶことができる。ハイブリッドの普及でプリウスは存続の危機を迎えたが、そのことが進化を促した。タクシー専用車にしなくて本当によかったと思う。
プリウスという名前で呼ばれても、パワートレインによってキャラクターは大きく異なる。PHEVは上質な高級車とパワフルなスポーツカーという2つの顔を融合させており、日常ではほぼEVとして使える。電動化への流れが加速する現時点での最適な選択肢のひとつだと言っていい。2リッターHEVは、トヨタのハイブリッドシステムとして大きな進化を遂げた。エコカーということを考える必要はなく、普通にカッコいいクルマである。
KINTO専用のUは、正直に言うとこれまでのプリウスとの大きな違いは感じられなかった。ただ、それは走りに関してだけである。PHEVも含めて、形はすべて同一なのだ。デザインが購入動機なら、Uを選ぶのもいいだろう。PHEVや2リッターモデルは納期が遅くなることが予想されるが、KINTOなら比較的手に入れやすいらしい。
SUV全盛の時代に、低いフォルムの5ドアハッチバック車にパワートレインを3種類も用意したのは快挙である。何よりも、プリウスという誇るべきブランドを残してくれたことに感謝したい。
(文=鈴木真人/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)
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テスト車のデータ
トヨタ・プリウスZ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4600×1780×1430mm
ホイールベース:2750mm
車重:1440kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:152PS(112kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:188N・m(19.2kgf・m)/4400-5200rpm
モーター最高出力:113PS(83kW)
モーター最大トルク:206N・m(21.0kgf・m)
システム最高出力:196PS(144kW)
タイヤ:(前)195/50R19 88H/(後)195/50R19 88H(ヨコハマ・ブルーアースGT)
燃費:28.6km/リッター(WLTCモード)
価格:370万円/テスト車:404万4300円
オプション装備:パノラマルーフ<手動サンシェード付き>(13万2000円)/ITS Connect(2万7500円)/デジタルインナーミラー&デジタルインナーミラー用カメラ洗浄機能&周辺車両接近時サポート<録画機能>&ドライブレコーダー<前後>(8万9100円)/コネクティッドナビ対応ディスプレイオーディオPlus<車載ナビ、FM多重VICS、12.3インチHDディスプレイ、AM/FMチューナー、フルセグテレビ、USBタイプC、スマートフォン連携、マイカーサーチ、ヘルプネット、eケア、マイセッティング、BlueTooth対応>(6万1600円) ※以下、販売店オプション フロアマット<ラグジュアリータイプ>(3万4100円)
テスト車の年式:2023年型
テスト開始時の走行距離:852km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
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トヨタ・プリウスZ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4600×1780×1430mm
ホイールベース:2750mm
車重:1480kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:152PS(112kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:188N・m(19.2kgf・m)/4400-5200rpm
フロントモーター最高出力:113PS(83kW)
フロントモーター最大トルク:206N・m(21.0kgf・m)
リアモーター最高出力:41PS(30kW)
リアモーター最大トルク:84N・m(8.6kgf・m)
システム最高出力:199PS(146kW)
タイヤ:(前)195/50R19 88H/(後)195/50R19 88H(ヨコハマ・ブルーアースGT)
燃費:26.7km/リッター(WLTCモード)
価格:392万円/テスト車:413万2300円
オプション装備:ITS Connect(2万7500円)/デジタルインナーミラー&デジタルインナーミラー用カメラ洗浄機能&周辺車両接近時サポート<録画機能>&ドライブレコーダー<前後>(8万9100円)/コネクティッドナビ対応ディスプレイオーディオPlus<車載ナビ、FM多重VICS、12.3インチHDディスプレイ、AM/FMチューナー、フルセグテレビ、USBタイプC、スマートフォン連携、マイカーサーチ、ヘルプネット、eケア、マイセッティング、BlueTooth対応>(6万1600円) ※以下、販売店オプション フロアマット<ラグジュアリータイプ>(3万4100円)
テスト車の年式:2023年型
テスト開始時の走行距離:1425km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
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トヨタ・プリウスPHEVプロトタイプ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=--×--×--mm
ホイールベース:--mm
車重:--kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:--PS(--kW)/--rpm
エンジン最大トルク:--N・m(--kgf・m)/--rpm
モーター最高出力:--PS(--kW)
モーター最大トルク:--N・m(--kgf・m)
システム最高出力:223PS(164kW)
タイヤ:(前)195/50R19 88H/(後)195/50R19 88H(ヨコハマ・ブルーアースGT)
燃費:--km/リッター
価格:--万円
テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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