スズキGSX-8S(6MT)
やっぱりスズキはこうじゃなきゃ! 2023.05.23 試乗記 スズキから800ccクラスの新型ネイキッドモデル「GSX-8S」が登場。エンジンも車体も新しい次世代の旗手は、どんなスズキの未来像を見せてくれるのか? 私たちが愛したスズキらしさは健在か? エッジの効いたスタイルが目を引く、ニューモデルの走りを試す。新しいパラレルツインエンジンの見どころ
スズキGSX-8Sは、新開発の775cc並列2気筒エンジンを搭載した完全ブランニューのスポーツバイクである。
注目の新型エンジンは270°クランクのパラレルツイン。バランサーを2軸で配置し、ツインの振動に対処しているというのが特徴だ。バランサーNo.1が1番シリンダーの1次振動を打ち消し、バランサーNo.2が2番シリンダーの1次振動を打ち消す。さらに270°クランクとすることで二次振動を打ち消すという仕組み。それぞれのバランサーをクランクに対して90°の位置に配置することで、1次偶力振動(エンジンをねじるような振動)も抑えることができる。このバランサーのおかげで振動を低減するだけでなく、バランサーを適正な位置に配置することなどによって、エンジンの前後長も短くコンパクトにまとめることができた。
最高出力が80PS/8500rpm、最大トルクが7.7kgf・m/6800rpmというスペックからは、いたずらにパワーを追求するのではなく、中速域でのトルクを重視していることがうかがえる。加えてGSX-8Sには、各部を統合して制御する「スズキインテリジェントライドシステム」が搭載されており、3段階で出力特性を切り替えることが可能だ。
ただこの新型エンジンも、基本的な構成はよくある並列ツインだし、車体構成にしても、特に革新的というわけではない。試乗前にバイクを眺めてみて「フツーのスポーツネイキッドかな」と、特に大きな期待をすることもなく走らせてみることになった。
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スムーズかつブン回して楽しめる
3段階で切り替えができるドライブモードセレクターは「A」モードにセット。最も元気のよい出力特性になるが、これくらいの排気量であれば特に過敏な感じではなく、ストリートでも乗りにくさはほとんど感じない。
ストリートを流して走ってみると2000rpmも回っていればかなり力強く、市街地から幹線道路まで、まったくストレスなく走ることができる。スロットルを開ければ、270°クランクのリズミカルな排気音、鼓動感とともに、車体が力強く押し出される。個性的な外観とは裏腹にとても乗りやすい。車体がコンパクトだから、250ccクラスのマシンからステップアップしても違和感なく走らせられる。
ところが、広い道で加速しようと全開にしてみると、4000rpmを超えたあたりから様相が変わった。パワーが盛り上がり、猛然と加速していく。「おお、速いじゃないか」とヘルメットのなかで叫んでしまったくらいである。そのまま引っ張ると9750rpmのレッドゾーンまで気持ちよく回っていく。非常に快活で楽しいエンジンだ。
比較的低回転からパワーが盛り上がってくれるので、ストリートでもこの元気な回転域を常用できるというのが最大のポイント。「おいしい部分をなかなか使い切れない」というビッグバイクのようなストレスは皆無だ。
2軸バランサーのおかげで、ツインとしては振動も少ない。5500rpmから6000rpmくらいでステップのヒールプレートとハンドルにわずかに微振動が出るが、全域でほとんど気にならないレベルである。「排気量が800cc近いツインエンジンを、よくぞここまでスムーズにしたな」という感じだ。
また駆動系にはクイックシフターを装備。ギア比がそれほどクロスしていないこともあって、スーパースポーツのようにスコン、スコンと気持ちよく変速していく感じではないのだが、クラッチを使わないズボラ運転もできるし、スポーツライディングでも便利だ。
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ストリートで存分に楽しめる
車体が軽量、コンパクトにまとめられているのもこのバイクの特徴だ。全長は2115mmで車重は202kgと、ミドルクラスのバイクよりもわずかに大きい程度。シートも低めである。
スタイルからすると、ハンドリングもストリートファイターのように過激な味つけになっていると思われそうだが、実はストリートを走ることを重視した設定になっていて、過敏さがない。
これは、同時に開発されたアドベンチャーモデル「Vストローム800DE」とフレームやエンジンを共用していることに関係しているのだろう。ダイヤモンドタイプのフレームは、通常のスポーツバイクよりもハンドルのヘッドパイプの位置が高めにあり、このことがオフロードバイク的な軽快さと、いい意味でのおうようさと安定感をつくり出しているのである。
だからといってダルなわけではない。乗りやすさとスポーツ性が両立されているのだ。高いスポーツ性だけを追求してしまうと、性能を発揮する場所も限定されるし、ライダーも相応の技術が必要になってしまう。GSX-8Sはこのあたりのバランスが絶妙だからビギナーでも乗りやすいし、エキスパートでも十分に楽しめるのである。
ワインディングロードも思い切って攻めることができる。ブレーキはタッチが鋭く、非常によく利く。ABSの制御は緻密という感じではないが、意図的に作動させるテストを何度か繰り返しても安定していた。このブレーキも、ストリートで安心して減速できることが優先された性格だ。
完成度が高く、乗りやすいことに加え、適度なスポーツ性とヤンチャ感もある。エンジン、車体ともにいき過ぎていないからこそ、ストリートでのライディングをとても楽しくしてくれる。
装備は決して豪華というわけではないが、スポーツバイクには必要十分。余計なところにお金をかけず、税抜き価格で100万円を切るコスパでありながらここまでファンな味つけをとなっているのが、いかにもスズキらしいバイクだと思う。
(文=後藤 武/写真=山本佳吾/編集=堀田剛資)
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【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2115×775×1105mm
ホイールベース:1465mm
シート高:810mm
重量:202kg
エンジン:775cc 水冷4ストローク直列2気筒DOHC 4バルブ(1気筒あたり)
最高出力:80PS(59kW)/8500rpm
最大トルク:76N・m(7.7kgf・m)/6800rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:23.4km/リッター(WMTCモード)
価格:106万7000円
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後藤 武
ライター/エディター。航空誌『シュナイダー』や二輪専門誌『CLUBMAN』『2ストマガジン』などの編集長を経てフリーランスに。エアロバティックスパイロットだった経験を生かしてエアレースの解説なども担当。二輪旧車、V8、複葉機をこよなく愛す。
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