テスラ・モデルYプレミアム ロングレンジAWD(4WD)
独自の道を突き進む 2026.03.13 JAIA輸入車試乗会2026 電気自動車(BEV)「テスラ・モデルY」の最新モデルは、これまで以上に無駄を省いた潔いまでのシンプルさが特徴だ。JAIA輸入車試乗会に参加し、マイナーチェンジによってより軽くより上質に進化したアメリカンBEVの走りを確かめた。「走る・曲がる・止まる」はハイレベル
2020年3月に発表されたモデルYは、テスラのエントリーモデルとして2018年に登場したBEV「モデル3」によく似たフロントマスクとクーペライクなフォルムが目を引く電動SUVであった。2025年1月のマイナーチェンジでは、外装をよりシンプルにリフレッシュ。「サイバーデザイン」とテスラが呼ぶ、細長い一本バーのランプ形状(ヘッドランプはバンパー内に埋め込まれている)を採用し、より未来的にアップデートされた。
インテリアは従来型のデザインを踏襲しているものの、ステアリングコラムから生えていたシフトセレクターが見当たらない。何も知らされずにコックピットに収まったのならば、「コレ、どうやって発進するのよ」と絶望的な気分になるだろう。初見殺しもここまで極まったか。攻めに攻めた操作系である。
肝心の前進・後退は、タッチスクリーンの端に表示されるドライブモードストリップを指でスワイプしてセレクトする。「オートシフト・アウトオブパーク」が有効な場合は、クルマに乗り込み、シートベルトを締めてブレーキペダルを踏めば、後はアクセルペダルを操作するだけで(勝手に)走りだす。車両が周りの状況を認識し前進するのか後退するのかを判断しているというが、高額車両に囲まれた駐車スペースから、いきなりすべてをオートシフト・アウトオブパーク任せにして未来を味わう勇気はなかった。
今回試乗した「モデルYプレミアム ロングレンジAWD」は、フロントに最高出力215PS、リアに同299PSのモーターを積んだ4WD車だ。ステアリングはしっかりとした操舵感が印象的。もちろんこれは調整が可能で、「軽い」「標準」「重い」の3段階から選択できる。個人的には標準でちょうどいいタッチとフィーリングである。
自動車専用道路の流れに合わせるべく合流レーンで少し強めにアクセルペダルを踏めば、モデルYは音もなく(本当はヒュイーンといった感じの低周波音とタイヤの発するロードノイズは聞こえる)走行車線に滑り込む。この加速感は、何度味わってもいい。最新モデルの0-100km/h加速は4.3秒。従来モデルよりも0.7秒速い。内燃機関のような抑揚やエモーショナルさはないが、踏んだぶんだけ速度が乗るBEVならではの感覚は刺激的。病みつきになる。
スタッドレスタイヤ「ノキアン・ハッカペリッタR5 EV」を履いた足まわりは、どちらかといえば硬め。しかし、路面のつなぎ目も軽くいなすフレキシブルさも持ち合わせている。ボディーは相変わらずしっかりとしていて、軽く硬質な鎧(よろい)にもでも包み込まれているかのようだ。そうした印象には部品点数を70点から1点へと大幅に削減し、一体感と静粛性の向上を実現したとアナウンスされる新設計のダイカスト製リアボディーパネルや、見直されたサスセッティングが大きな役割を果たしていそうだ。「走る・曲がる・止まる」の基本は、客観的にみてもかなりハイレベルだと思う。
サイズを拡大し座り心地を改善したという電動調整機能付きリアシートの採用と、エアコンや各種メディアをコントロールできるリアのタッチパネル式8インチディスプレイの搭載も改良モデルのトピックに挙げられる。実は、1年ぶりにモデルYのステアリングを握ったのだが(参照)、着実な進化に感心しきり。ハードの熟成も手を抜かず地道にしっかりと行われているように思える。
BYDや国内メーカーの最新BEVに触れる機会も増えてきた昨今、しかし良くも悪くも未来的なテスラの世界観は、いまだ他ブランドとは一線を画すものだ。好きな人はぞっこんで、ダメな人は歯牙にもかけない。そんな独自路線を行く孤高な感じが「昔のいすゞの乗用車や1980年代前半のカワサキっぽいよね」と知人に何気なく話したら、「それは違うでしょ」と一蹴。そうですか、いやそうですかね?
(文=櫻井健一/写真=田村 弥/編集=櫻井健一)
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4800×1920×1625mm/ホイールベース:2890mm/車重:1990kg/駆動方式:4WD/フロントモーター:交流誘導電動機/リアモーター:交流同期電動機/フロントモーター最高出力:215PS(158kW)/6625rpm/フロントモーター最大トルク:240N・m(24.5kgf・m)/0-6200rpm/リアモーター最高出力:299PS(220kW)/8000rpm/リアモーター最大トルク:350N・m(35.7kgf・m)/400-6000rpm/タイヤ:(前)255/45R19 104T XL/(後)255/45R19 104T XL(ノキアン・ハッカペリッタR5 EV)/一充電走行距離:682km(WLTCモード)/交流電力量消費率:138Wh/km(WLTCモード)/価格:647万6000円

櫻井 健一
webCG編集。漫画『サーキットの狼』が巻き起こしたスーパーカーブームをリアルタイムで体験。『湾岸ミッドナイト』で愛車のカスタマイズにのめり込み、『頭文字D』で走りに目覚める。当時愛読していたチューニングカー雑誌の編集者を志すが、なぜか輸入車専門誌の編集者を経て、2018年よりwebCG編集部に在籍。
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