アストンマーティン・ヴァンキッシュ ヴォランテ(FR/8AT)
遠慮はいらない 2026.03.14 試乗記 英国の名門、アストンマーティンの旗艦車種「ヴァンキッシュ」に、待望の「ヴォランテ」が登場。5.2リッターV12エンジンを搭載した最上級コンバーチブルは、妥協のないパフォーマンスと爽快なオープンエアのドライブ体験を、完璧に両立した一台となっていた。オープントップでもパフォーマンスに妥協なし
2001年にアストンマーティン復活の象徴としてデビューした「V12ヴァンキッシュ」。アルミフレームとカーボンパーツを組み合わせた新開発のシャシーに、「DB7ヴァンテージ」で初出となった5.9リッターV12エンジンを強化して搭載する、フラッグシップにふさわしいモデルだった。その後、2007年に「DBS V12」にその座を託して舞台から降りるものの、2012年にはV12がとれた「ヴァンキッシュ」という名で復活。2018年登場の「DBSスーパーレッジェーラ」をはさみ、2024年よりふたたびヴァンキッシュの名を冠するモデルがフラッグシップを務めることとなった。つまり現行ヴァンキッシュは、モダンなアストンマーティンのフラッグシップとしては5世代目、ヴァンキッシュという名のモデルとしては3世代目となる。
今回試乗するのは、2025年3月に発表されたオープンモデルのヴァンキッシュ ヴォランテ。「Kフォールドルーフ」と呼ばれるソフトトップはクーペと変わらない美しいルーフラインを描きながら、驚異的な遮音性や断熱性を誇るという。またクーペと並行して開発したことで、重量増加を最小に抑えながら最大限のボディー剛性を確保。アンダーボディーの強化を図ったことで、従来のフラッグシップコンバーチブル「DBSスーパーレッジェーラ ヴォランテ」に対して横剛性は75%向上している。車両重量はクーペに対して95kg増加しているが、0-100km/h加速はわずか0.1秒差の3.4秒。最高出力835PS、最大トルク1000N・mを誇る5.2リッターV12ツインターボの威力で、重量増加の影響は、まさに最小に抑えられている。
比類のない5.2リッターV12エンジン
前日の夜半まで降っていた雨も朝には上がり、試乗当日は遠慮なくオープンエアドライビングを楽しめた。Kフォールドルーフは開くのに14秒、閉じるのに16秒。50km/h以下であれば走行中でも開閉が可能で、半径2m以内にいれば、スマートキーでの遠隔操作もできる。最高気温が10℃に満たない肌寒い日ではあったが、風の巻き込みは少なく、ヒーターの効いた車内は快適。ボディー剛性は驚くほど高く、高速道路のジョイントから大きな入力が入っても、ミシリとも言わない。本当にクーペとさほど変わらないフィーリングだ。
2500-5000rpmで最大トルクの1000N・mを発生するだけあって、市街地を流したり高速道路をクルージングしたりといったシーンでは、実に大きな余裕がある。5.2リッターV12ツインターボエンジンはほとんどの仕事を2000rpm前後で済ませてしまい、そのときの振る舞いは実にジェントルだ。
いっぽうで、追い越しをかけるためにアクセルを少し踏み込んでみると、グオッという低いうなりとともに大きなトルクが湧き上がり、隠されていた牙が見えてくる。雨は上がっているものの、路面は所々がウエットという状態だったため、アクセルを深く踏み込むには不安があった。だが意を決して右足に力を込めると、目の覚めるような強烈な加速を味わうとともに、専用チューニングのシャシーと最新の電子制御デバイスが、V12エンジンにしっかり対応していることが確認できた。これ以上ないほどのハイパフォーマンスを誇るFRだが、抜群の安定感があってドライバーをその気にさせるのだ。
今日では、電気モーターの力を借りたハイパフォーマンスなハイブリッド車や電気自動車なら、同等かそれ以上の加速が容易に得られる。が、ピュアエンジンでの突進にはやはり格別のフィーリングがある。速度の高まりとともに盛り上がっていくサウンドに駆り立てられ、さらにアクセルを踏み込んでいきたいという衝動が沸き立ってくる。最高出力発生回転数は6500rpm。そこまで回せばドライバーの興奮度もピークに達する。この時代にピュアなV12エンジンを堪能できることに、感謝したい。
重量および重量配分に合わせてシャシーは独自にチューニングされているが、これもクーペとの違いはほとんど感じられない。サスペンションは全体的に引き締まった印象はあるものの、しなやかでグランツーリスモとしても秀逸だ。
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妥協は一切見当たらない
ドライブモードは「Wet」「GT」「Sport」「Sport+」「Individual」と用意され、アダプティブダンパーの減衰力やパワートレインの制御、ステアリングの操作にかかる負荷などが変化していく。「GT」ならば快適で落ち着いているが、「Sport」や「Sport+」では野性味あふれる乗り味になる。それでも硬すぎて不快になるようなことがないのは、ボディー剛性の高さやトランスアクスルによる良好な重量配分など、基本的な資質に優れるからだろう。275mm幅の太いフロントタイヤはグリップ志向で、わだちにとられやすい傾向があるので、通常時はダンパー設定がソフトな「GT」や「Wet」がオススメ。任意の調律を呼び出せる「Individual」を選び、パワートレインを「Sport」、サスペンションを「GT」に設定すると、刺激的な走りと快適な操縦性とのバランスがとれた。
ワインディングロードでの振る舞いは見事だった。コーナーへ向けてステアリングを切り込んでいくと、機敏すぎず、落ち着いたフィーリングでノーズがインへ向いていく。835PSものパワーを誇るFRでクイックにノーズが反応するようだと、不安になってしまうものだが、ヴァンキッシュ ヴォランテはいかにもロングホイールベースらしい優雅な動きで、安心してコーナーへ進入していける。コーナー途中でアクセルを踏み始めると姿勢が安定するとともに、確かなトラクションを感じながら出口に向けて加速できる。電子制御LSDは、コーナー入り口では安定志向、出口ではトラクション重視と、これも絶妙な調律だ。あきれるほどのハイパワーを見事にしつけ、ドライバーにFRならではの軽快なコーナリングを堪能させるのだった。
ワインディングロードを存分に走った後は、ルーフを閉じて穏やかな気分で帰路に就く。ファブリック素材のルーフであるにもかかわらず、確かに静粛性の高さはクーペとさほど変わらない。ハイパフォーマンスカーとしてはロードノイズなどもきちんと抑えられていて、動的な質感も高い。接合アルミニウム構造の進化によってクーペとコンバーチブルとの差は限りなく小さくなり、パフォーマンス重視のユーザーも遠慮なくコンバーチブルを選択できる時代になった。ヴァンキッシュ ヴォランテはクーペと同様に、一切の妥協なくドライビングが楽しめるモデルなのだ。
(文=石井昌道/写真=向後一宏/編集=堀田剛資/車両協力=アストンマーティン ジャパン)
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テスト車のデータ
アストンマーティン・ヴァンキッシュ ヴォランテ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4855×2120(ドアミラーを含む)×1295mm
ホイールベース:2885mm
車重:2005kg(EU認証空車重量)
駆動方式:FR
エンジン:5.2リッターV12 DOHC 48バルブ ツインターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:835PS(614kW)/6500rpm
最大トルク:1000N・m(102.0kgf・m)/2500-5000rpm
タイヤ:(前)275/35ZR21 103Y XL/(後)325/30ZR21 108Y XL(ピレリPゼロPZ4)
燃費:14.1リッター/100km(約7.1km/リッター、WLTPモード)
価格:非公開/テスト車=--円
オプション装備:ボディーカラー<Qサテンアルミナイトシルバー>/上部ボディーパッケージ<グロス2×2ツイルカーボンファイバー>/下部ボディーパッケージ<グロス2×2ツイルカーボンファイバー>/サイドストレーキ<カーボンファイバー>/シールド<四つあや織りグロスカーボンファイバー>/ブラックとシルバーのヴォランテルーフ/グリルフィニッシュ<ブライト>/21インチマルチスポークホイール<グロスブラック、ダイヤモンド旋削>/ブレーキキャリパー<ブラック>/テールパイプフィニッシャー<マットブラック>/ペイント保護フィルム/シート仕様<2シーター>/エンパイロンメント インスパイア<モノトーン>/プライマリーカラー<Qセンティナリーサドルタン>/セカンダリーカラー<Qセンティナリーサドルタン>/スポーツプラスシート/インテリアパック<カーボン&メタルファイバー>/トリムインレー<アルジェント>/センタートリムインレー<アルジェント>/ドアトリムインレー<グロスCFアルジェントファイバー>/インテリアジュエリー<サテンダーククロム>/ステッチ<コントラストウェルト>/ステッチ&ウェルト<アイボリー>/シートロゴ<ディテール -刺しゅう- アストンマーティンウイング、刺しゅうステッチカラー[アイボリー]>/ステアリングホイール<スポーツホイール[ヒーター付き]、カラー[オニキスブラック]>/ギアパドル<インテリアカーボンと同色>/シートベルト<ブラック>/カーペット<オブシディアンブラック720gsm>/アストンマーティン・エナメルウイング&スクリプト/チタン製エキゾーストシステム/ヘビーパイルフロアマット
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:4479km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(6)/山岳路(1)
テスト距離:222.6km
使用燃料:41.7リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:5.3km/リッター(満タン法)/5.5km/リッター(車載燃費計計測値)
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石井 昌道
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