スズキVストローム800DE(6MT)
スズキの本気を見よ 2023.03.13 試乗記 注目の新型アドベンチャーバイク「スズキVストローム800DE」に、イタリア・サルデーニャで試乗。盛り上がりを見せるセグメントの“ど真ん中”にスズキが投じた一台は、市街地でストレスなく、峠道やオフロードでは爽快に楽しめる、まさに万能マシンに仕上がっていた。盛り上がりを見せるミドルクラスの“冒険マシン”
2000年代の中盤以降、今日に至るまでバイク界で高い人気を保っているアドベンチャーセグメント。大排気量のプレミアムクラスにそのモデルを据えるメーカーも多く、まさに“ドル箱”である。と同時に、ここ数年は排気量650~1000ccのミドルクラスにも注目が集まっており、車種によっては上級モデルより100万円も安い価格設定や、燃料満タンで230㎏ほどにおさめた車重によって、手ごろ感を出している。
もちろん、装備ではプレミアムクラスから引かれるものもあるが、現状、このクラスを彩るキーワードは豪華さではなくスポーティーさだ。長距離の移動や未舗装路もルートに入れられる“冒険性”に加え、多くのモデルが「ダカールラリー」を起源に持つことから、そのヘリテージを取り入れたスポーティーなキャラクターづくりが、このクラスの特徴になりつつある。
ヤマハの「テネレ700」、ドゥカティの「デザートX」、KTMの「890アドベンチャーR」などはその傾向が強く、特にヤマハは、ダカールラリー(今は中東で開催される)のファクトリーチームを引っ込めてまで、モナコからダカールまでを走る往年の“ダカールルート”に近いアドベンチャーラリー「アフリカエコレース」に、テネレを擁したオフィシャルチームを出しているほどだ。
このほどスズキがリリースしたVストローム800DEも、まさにそのゾーンに差し込まれた一台である。スタイルアイコンに選んだのは、かつてのダカールマシン「スズキDR-Z」。ノーズ(というよりクチバシ)付きスタイルの元祖で、マニアには“怪鳥”の異名で知られている。
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コンパクトなエンジンがもたらす恩恵
ネーミングにある“DE”とは“デュアル・エクスプローラー”を意味し、スズキでは「舗装路も未舗装路も選択肢にある」という表現をしている。市街地走行からツーリング、そしてダート路でもコントロールを楽しめるようパッケージされた新しいエンジンとシャシーを使い、トラッドなアドベンチャーバイクとしてつくり込んでいる。
キモとなるのは、やはり直列2気筒の新エンジンだ。270度位相クランクを備え、不等間隔爆発によるトラクション特性のよさを持ちつつ、90度V型2気筒エンジンと同様の排気音を奏でる。なにより、エンジンサイズの小型化を図るためにバランサーシャフトの1本をエンジンの前側、もう1本をクランクの下側に置いているのが興味深い。これは270度クランクでないとできないレイアウトだったそうで、エンジンの前後長短縮に大きく貢献したという。800DEに採用される21インチの前輪は、大径かつ220mmという長いホイールトラベルで大きく動くため、パッケージデザインにおけるエンジンサイズの小型化は、前後重量バランスを理想的な位置にするために欠かせない要素だったのだ。
また、フレームにはスチールチューブを使用しているのだが、これはチューブの外径を細くでき、ライダーエリアのコンパクト化を実現したうえで、走りに寄与する剛性バランスをつくりやすいとの理由から選ばれた。縦剛性はしっかり、横剛性は少し控えめにすることで、オン/オフにおけるチューニングのバランスをとると同時に、限られたホイールベース内で後輪を懸架するスイングアーム長を延ばし、挙動変化を穏やかにすることでコントロール性を上げているのも特徴だ。ここでも、前後長の短いエンジンは大切な役割を果たしている。
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どんなシーンでも走りを楽しめる
目の前にしたVストローム800DEは、意外とボリューミー。しかしまたがると、20リッター入るガソリンタンクはライダーの足と干渉する部分は細身だし、シート高が855mmもありながら座面形状などの妙で足つき性も悪く感じない。サイドスタンドから車体を起こす瞬間に、最低地上高が220mmと高めなことから230㎏の車重を感じることもあるが、重量物の配置バランスの恩恵か、それもことさらデメリットには感じなかった。
新エンジンを始動すると、ドロロロンという回り方で低回転から太いトルク特性をライダーに伝えてくる。発進しても、ひとことで言ってエンストしそうな気がしない。実は低回転域では、スロットルバルブを自動調整してエンストしない回転数を保つ電制アシストが入るので、ことさら神経を使わずに済むのだが、同時にその介入が自然なので、ライダーの心には「充実のトルク感だ!」と響くのだ。スズキ、ナイス!
先導車に従って走る試乗コース、そこに含まれる市街地ルートはほんの一部だったのだが、その数少ない場面でも、800DEは21インチの前輪を履いた大柄なバイクとは思えないほど軽快なハンドリングを見せた。ヨーロッパの街角では、多くのスクーターとともに走るVストロームを見かけるコトが多いが、これなら日常使いでもモタモタしないはずだ。
程なく、サルデーニャの海岸線沿いを90km/hほどのペースで走る山岳路に入る。そこでは舗装路での一体感と正確性の高いハンドリングが、すぐに伝わってきた。4000~6000rpmの間にエンジン回転を保つようシフトを繰り返せば、あとは右手のひねり具合でスピードを合わせる、大排気量バイクのような走りを楽しめる。クイックシフトのタッチも上々。9500rpmから始まるレッドゾーンに向けて回転上昇を試みても、800ccクラスの排気量らしい伸びを楽しめる。プレミアムクラスともなれば、その領域では前輪が宙に浮くほどの加速にひるむことになる。むしろ安心して全開を楽しめるのがうれしい。
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オンでもオフでも楽しめる
ブレーキの特性もこのバイクにとても合っており、強烈さこそないがノーマルタイヤのポテンシャルを十分に引き出しており、ツイスティーな道を楽しめる。前後のサスペンション設定も秀逸で、ストロークを大きくとったフロントサスペンションによりブレーキング時はピッチングするものの、その動きはストロークスピード、姿勢変化とも予測の範囲内だ。だから、気がつけばこんなずうたいのバイクで、狭いワインディングを喜々として走っている自分がいる。
ダート路に入ってもそのフィーリングは同様で、限られたグリップ力をキレイに引き出すサスペンションと、トレッドパターンにまでこだわった専用のタイヤ、そしてトルクたっぷりながら急激なトラクション変化は起こさせないエンジンのパワー特性などにより、煮つめられた走りを披露する。ライバルが“ラリー色”を強めるなか、コンサバな800DEもオフ系の走りが侮れないコトを示した。
総じて“DE”の名が示すとおり、このバイクはどこを走っても楽しめる。誕生から20年を超すVストロームシリーズへのスズキの本気が、しっかり見てとれたのである。
(文=松井 勉/写真=スズキ/編集=堀田剛資)
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2345×975×1310mm
ホイールベース:1570mm
シート高:855mm
重量:230kg
エンジン:776cc 水冷4ストローク直列2気筒 DOHC 4バルブ
最高出力:84PS(62kW)/8500rpm
最大トルク:78N・m(7.95kgm)/6800rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:22.7km/リッター(WMTCモード)
価格:--円

松井 勉
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