センターディスプレイは必要か?

2023.06.06 あの多田哲哉のクルマQ&A 多田 哲哉

クルマのインテリアでは、ほぼ例外なくセンターコンソールの一等地にディスプレイがあり、そのサイズも大型化の一途をたどっています。もちろんそれはユーザーニーズもあってのことと思いますが、車両開発者としては、その存在をどう思われますか? ほかに理想的かつ有効なスペースの使い方など考えられたことはありますか?

クルマの電動化にも関連して、インストゥルメントパネルを広く液晶画面として使うようになってきていますね。必要な車両情報を伝えるだけでなく、エンタメのために活用するという流れも、もはや必然です。

単に液晶パネルを大きくするだけなら、自動車メーカーは大きくて高精細なパネルを調達すればいいわけで、それ自体は大したことではないのですが、問題は「そこになにを映すか」です。

例えばiPhoneでは、たびたびアプリが更新され、OSもアップデートされますよね。クルマも大画面にさまざまな情報を映すとなると、もう自分専用のスマートフォンのようなもので、その開発を担うサプライヤーにとっても大変な負担になります。

画面の表示バリエーションは、もはや昔のように車種ごとに分けてはいられません。せいぜいラインナップをいくつか決めて、シリーズごとに表示内容はほぼ同じにし、あとはユーザー側で設定メニューからカスタマイズしていただく、という対応の仕方しかありません。

「日ごろ使っているスマートフォンは常に最新バージョンなのに、はるかに高価なクルマではそうなっていない」というのは、お客さまの不安・不満につながります。その点、機能を割り切った(スマホをつなげてセンターディスプレイにミラーリングする)「ディスプレイオーディオ」もありますが、ある程度高級なクルマとなると、それだけでは満足いただけないでしょう。

センターコンソールに画面があり、それを介して人とクルマがやりとりするということ自体は、視認性も含めて今後ますます重要になると思います。EVの時代ともなれば、このエリアは商品性の生命線になるといえるでしょう。

多田 哲哉

多田 哲哉

1957年生まれの自動車エンジニア。大学卒業後、コンピューターシステム開発のベンチャー企業を立ち上げた後、トヨタ自動車に入社(1987年)。ABSやWRカーのシャシー制御システム開発を経て、「bB」「パッソ」「ラクティス」の初代モデルなどを開発した。2011年には製品企画本部ZRチーフエンジニアに就任。富士重工業(現スバル)との共同開発でFRスポーツカー「86」を、BMWとの共同開発で「GRスープラ」を世に送り出した。トヨタ社内で最高ランクの運転資格を持つなど、ドライビングの腕前でも知られる。2021年1月に退職。