スバル・フォレスター2.0XSプラチナセレクション(4WD/4AT)【ブリーフテスト】
スバル・フォレスター2.0XSプラチナセレクション(4WD/4AT) 2011.01.17 試乗記 ……289万2750円総合評価……★★★★
期待の新エンジンを積む「スバル・フォレスター」をロングドライブに連れ出した。気になる走りは? トータルの燃費は?
今後の熟成に期待
なんと21年ぶりに全面刷新されたスバルの水平対向4気筒エンジンは、まずは「フォレスター」に搭載されて世に出た。このFB型と呼ばれる新エンジンは、従来のEJ型と比較してロングストローク化、燃焼室のコンパクト化という具合に基本設計を全面刷新しているのに加えて、吸気側だけだった可変バルブタイミング機構を吸排気双方に採用したり、タンブルジェネレーションバルブの採用やフリクションを低減したりするなど、細部にまでこだわった開発がなされている。狙いはドライバビリティと燃費、双方の向上。実際、10・15モード燃費の15.0km/リッターは、EJ型より約9%良好な数値となっている。
この新エンジンを手に入れ、それにともなっていくつかの改良を行ったフォレスターは、確実にその魅力を高めてきた。スペック上の数値にそれほどの違いはないが、実際にはトルク特性が改善されたことで日常域の扱いやすさは間違いなく向上している。扱いやすいエンジンは余計なアクセル操作が不要になる分、燃費への貢献度も大きいという点は無視できない。
ただし、詳細は後ほどあらためて触れるが、感情に訴える部分の性能に関しては今後さらなる熟成が必要という印象も持った。ありていに言って、音や振動などエンジン全体のフィーリングは、これまでのボクサーから期待するだけのレベルには至っていない。
燃費についても、15.0km/リッターは将来まで見据えた場合、まだ満足すべき数値とは言えないだろう。今回の実際の燃費は満タン法で10.6km/リッター。高速移動が中心だったことを考えればなおのこと、期待には今一歩届いていない。新エンジンとはいってもテクノロジーはコンサバなだけに、今後考えられる直噴化、なんと4段ATを使うギアボックスの刷新そのほかの進化を待ちたいところだ。
マイナーチェンジとは思えないほどの変更も平気でやってくるのがスバルというメーカーだけに、今後急速に熟成されていくのは間違いない。少なくとも、いい素材がそろったのはたしか。前向きに評価したいという意味を込めて、本来なら★3つ半と言いたいところ、4つをあげておく。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
「フォレスター」は、1997年に初代がデビュー。以来、乗用車の動力性能とSUVとしての走破性を兼ね備えるというコンセプトは、2007年12月発表の3代目となる現行モデルにも受け継がれている。ラインナップは全てが4WDで、搭載エンジンは2リッターNA/ターボと2.5リッターターボ。もちろんいずれもボクサーユニットである。
2010年10月のマイナーチェンジにより、2リッターエンジンは21年ぶりにリニューアルした新型に換装された。同時にフロントグリルやルーフスポイラー、ドアミラーなどの意匠変更も行われている。
(グレード概要)
試乗車は、新型2リッター水平対向エンジンを搭載。燃費向上とフリクション低減が図られた新ユニットは、148psと20.0kgmというパフォーマンスと、15.0km/リッター(10・15モード)という燃費性能を発揮する。
「2.0XSプラチナセレクション」はプラチナカラーのファブリックシートが採用されるほか、17インチアルミホイール、HIDロービームランプ、ECOゲージ付きのスポーツルミネセントメーターなどの上級装備が与えられる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
インプレッサとほぼ共通のダッシュボードを使ったインストゥルメントパネルは、デザインもクオリティも情緒的な意味では特に見るべきところはない。しかしながら大きく操作しやすいダイヤル式の空調パネル、視線移動の少ない高い位置にセットされたナビゲーションシステム、外気温や燃費、時計などの表示をシンプルにまとめたインフォメーションメーター等々、機能にかかわる部分のしつらえはまじめで秀逸。乗るほどに居心地の良さを感じさせてくれた。
(前席)……★★★★
運転姿勢は自然で好感触。シートバックレストを立て気味にしても頭上に十分以上の空間が残されるのもありがたい。さらに、心地良く感じられるポジションに固定するとボンネットはよく見えるし、Aピラーも視界を邪魔することはなく、良好な視界を得ることができるのは、さすがスバル車といった感じだ。視界といえば、サイドアンダーミラーは左前フェンダー前方にキノコが生えたようなかたちで、お世辞にもスタイリッシュとは言えない。機能自体は要求を満たしているとはいえ、やはりオプションでもカメラなどで機能を補う方法を選択できるようにしてほしいところだ。
(後席)……★★★★★
リクライニング可能な後席は、着座位置が高く視界が開けているのみならず、頭上や膝まわりのスペースも十分に取られており快適性は非常に良い。ドアポケットも500ml入りペットボトルを余裕で飲み込むほど大きく、さらに中央席の座面を前に起こせばセンターテーブルとドリンクホルダーを備えたリトラクタブルリアテーブルまで現れる。それでいて中央席は犠牲にされているわけではなく、ヘッドレストもしっかり用意されているのがうれしい。
(荷室)……★★★
大人3人の1泊分の荷物とカメラ機材を飲み込むのはさすがに荷室だけでは無理で、後席の半分を使うことになった。とはいえ、容量自体は十分以上。9インチのゴルフバッグなら4個を積むことができる。リモコンでも操作できる電動開閉式リアゲートの装備、天井に備え付けられた照明などのおかげで、基本的な使い勝手も悪くない。
不満はトノカバーがディーラーオプションとされ、標準では装備されないこと。貴重品、あるいはそう見えそうなものを積んだまま止めておくのはやめた方がいいだろう。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
期待の新型ボクサーエンジンは、なるほど実用域の扱いやすさが増しているのが嬉しいポイントだ。2500rpmあたりから力がわき出してくるこのエンジンを味わうと、自然吸気の水平対向エンジンといえば低速トルクが物足りないという先入観が、良い方向に覆されることになる。
ただし、トータルで見たエンジンの印象は決して良くはない。アイドリング〜低回転域で顕著な、まるで昔の直噴エンジンのようなカチカチ音や、回していった時のボクサーらしい滑らかさの薄さ、金属質のノイズなど主に感覚に訴える面の問題だ。いくら効率が良くて実用性が高くても、これではボクサーの意味がないじゃないか! と感じてしまった。
せっかくの新エンジンなのになぜ? と誰もが驚く4段ATは、そんなエンジン特性ゆえに決定的なネガにはなっていない。キックダウン時に回転が急激に高まることで走りのクオリティ感を下げている部分はいまだにあるものの、こちらも実用上はマッチングは良好と言っていい。ちなみにCVTが搭載できなかったのはフロア形状の問題だというが、個人的にはドライブフィールがナマクラになるCVTになるぐらいなら4段ATで十分だと感じた。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
主にリアのダンパーやサブフレームブッシュなどに手を入れたというサスペンションは、フォレスターの美点のひとつと言ってもいいほどの、上々の感触を実現していた。乗り心地は柔らかいというよりはしなやかな印象で、車体はユラユラしたりせず姿勢を常にフラットに保つ。900km近くを運転席、助手席、後席で過ごしたが、疲れはとても少なかった。
肝心のフットワークも、ステアリングのセンタリングにやや甘さがあるものの、そこから切っていった時の反応は正確性に富んでいて、総じて安心感高く、走りを楽しめた。日本での日常的な速度域の範囲でだったら、快適性と操縦安定性のバランスという意味では、この手のオンロード向けSUVの中でもベストに近い、いい案配に仕上がっているとすら感じられたほどだ。
速度域が更に上がってくると、ちょっと落ち着きを欠いてきて、やはり欧州のライバルの方が……と思う場面もあったのは事実。しかしながら全体的に見て、とりわけ日本の日常域では非常に満足度の高い走りっぷりを実現していると言っていいのではないだろうか。
(写真=高橋信宏)
【テストデータ】
報告者:島下泰久
テスト日:2010年11月12-13日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2010年型
テスト車の走行距離:3062km
タイヤ:(前)225/55R17(後)同じ(いずれも、ヨコハマ GEOLANDER G95)
オプション装備:リアビューカメラ付き音声認識HDDナビゲーションシステム+キーレスアクセス&プッシュスタート(36万7500円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(7):山岳路(1)
テスト距離:871.1km
使用燃料:82.22リッター
参考燃費:10.60km/リッター

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
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