特別仕様車って本当に得ですか?
2023.08.08 あの多田哲哉のクルマQ&Aクルマのモデルライフのなかでたびたび発売される特別仕様車。特別な仕様ということで、買う側に得なクルマになっているのでしょうか? また、その仕様はどのようなプロセスで決められるのでしょうか? 教えてください。
特別仕様車は、「お得です!」ということをメーカーがアピールしつつ、実際にお客さまにもそう思っていただけるように仕立てたモデルです。
とはいえ、よくよく見れば、余計なものが必ず付いています(笑)。それを多くの方が「こんなの付いているけれどいいのかな、でもまぁ全体でみると得だからいいかな」みたいなご判断で購入されるわけです。なので、「冷静になって考えると得ではないこともあります」と回答しなければなりませんね。
どちらかというと、売る側にとって都合のよい商品かもしれません。メーカーにはどうしても「売れないオプション」が生じてしまうものですから、装備品の在庫処分と言ったら言い方が悪いですけれども、そのように、お値打ち感のある手法で在庫を掃く必要が出てくるわけです。
もっとも、新たに認証の取得が必要になるような装備の追加はしません。せいぜい上位グレードの外装色・内装色であるとかシートの表皮であるとか、そういうものを追加するというくらいにとどまりますし、それが定石です。
社内的には、営業サイドから「こういう特別仕様車を販売したい」と提案されますが、開発サイドがどうこう口出しすることはありません。つまりこれは、販売のプロの企画に基づく仕事なのです。市場の評判がよければ、定番の特別仕様車としてシリーズ化することもあります。
私自身はどうかといえば、一度だけ、「カローラ」の特別仕様車を買ったことがあります。当時高価だったカーナビがほとんどタダで付いてくるという内容で……それに釣られてフラフラと(笑)。
かような次第で、特別仕様車については、皆さまも冷静に「自分にとって必要な装備、欲しい装備は何か」を見極めたうえで買われるとよろしいかと思います。

多田 哲哉
1957年生まれの自動車エンジニア。大学卒業後、コンピューターシステム開発のベンチャー企業を立ち上げた後、トヨタ自動車に入社(1987年)。ABSやWRカーのシャシー制御システム開発を経て、「bB」「パッソ」「ラクティス」の初代モデルなどを開発した。2011年には製品企画本部ZRチーフエンジニアに就任。富士重工業(現スバル)との共同開発でFRスポーツカー「86」を、BMWとの共同開発で「GRスープラ」を世に送り出した。トヨタ社内で最高ランクの運転資格を持つなど、ドライビングの腕前でも知られる。2021年1月に退職。