ホンダCL250(6MT)
いろんな人に薦めたい 2023.08.19 試乗記 ホンダから、街にも山にも映えるスクランブラースタイルの新型バイク「CL250」が登場。クラシックな趣を感じさせる250ccクラスのニューマシンは、快適なうえに走りも楽しく、しかもカスタム欲もかき立てるという、見どころの多い一台に仕上がっていた。これはカスタムしたくなる!
しょっぱなからテスターの個人的な感覚で恐縮だが、最近、250ccクラスに魅力的なバイクがなくなってしまったと思っていた。スポーツ性の高いモデルやオフロードバイク、スクーターなどはあるのだが、シックな落ち着いたデザインで走りも楽しめるようなモデルが見当たらない。そんななかで登場してきたのがCL250だった。ビギナーやリターンライダーにも気になっている人は多いと思うが、自分のようなベテランライダーにとっても非常に魅力的なマシンに見える。というわけで、今回のリポートではテスターの主観なども交じえながらCL250がどんなマシンなのかを説明していきたいと思う。
250ccクラスで大人気の「レブル250」の車体とエンジンを使用し、スクランブラースタイルに仕立て上げたのがCL250だ。マットなカラーリングやタンクラバーなどによって、レトロかつシックなイメージを醸し出している。
60年代、70年代のスクランブラーといえば、ロードバイクをベースにしてマフラーとハンドル、タイヤを交換したくらいのマシンだったが、CL250の場合は前後サスペンションが伸ばされ、ホイール径もレブル250の前後16インチからフロント:19インチ、リア:17インチへ変更。シートまで変わっているから、ほぼ別なバイクだと考えていいだろう。
高級感があるというほどではないが、カスタムのベースとして見るととても面白そう。オプションパーツも豊富に準備されているし、それらに加えてフェンダーやタイヤ、マフラーなどを交換したら、ずいぶん個性的なカスタムマシンをつくることもできそうだ。
シート高は790mmと、この手のモデルとしては低く抑えられており、例えばオンロードモデルの「GB350」あたりと同等。ホイールを大きくしてサスペンションまで伸ばしているのにこのシート高を実現できたのは、スポンジを薄くしたシートのおかげだ。加えてバイクにまたがると、柔らかめのサスが沈むので足つきは良好。ただ座り心地は悪くないものの、長距離の移動でこのシートがどれくらいの快適性を確保しているのかは気になるところだ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
街なかでも高速でも存外に快適
単気筒エンジンは下からトルクがあって扱いやすく、昔の「CL72」をほうふつさせる排気音も心地よい。ストリート系の単気筒250ccの場合、扱いやすいだけで高回転での楽しさに欠けるようなイメージを持っている人もいるかもしれないが、CL250は実に快活で高回転を常用してもストレスがない。
乗り心地がいいのもストリートを走るうえで見逃せない点。前後サスストロークが十分に確保されているので、大きなギャップを通過しても突き上げを感じることはほとんどない。ハンドリングは軽快で街なかをキビキビ走ることができる。ストリートを走るのにベストなセットアップが施されている感じだ。
これが高速道路ではどうか。一般に、カウルのないバイクは高速巡航に向かないというイメージがあることだろう。CL250のように幅広のハンドルを装着していればなおさらだ。ただ、確かに全身で風圧を受けることにはなるが、法定速度で数時間走る程度であれば、風による疲れはほとんど感じないものである。パワーも高速道路を法定速度で走るだけなら不足はない。もっとも、余力があるわけでもないのでエンジン回転は上がり気味。登り坂や追い越しでは、もう少しパワーが欲しいと感じることもある。CL250の高速巡航性能は250ccシングルのなかでは高いほうだから、この排気量帯のシングルにこれ以上を望むのは難しいということである。
懸案のシートについてだが、高速道路を長時間走ってみると、やはり少しお尻が痛くなってきた。純正オプションでスポンジの厚いフラットシートが準備されているから、長距離ツーリングなどでの快適性を重視するのであれば、そちらを装着するのがいいだろう。
ちなみに、タンデムライダーのポジションは窮屈で、ステップ位置が高いので膝が大きく曲がってしまう。長時間のタンデムライディングは厳しいかもしれない。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
“オフ車”ならではの走りの楽しさ
CL250がとても楽しいのはワインディングロードだ。低中速からトルクのあるエンジンは登り坂も苦にせず加速していく。パワーバンドが広いので、タイトで先が曲がりこんだコーナーでエンジン回転を落としてしまっても、スロットルを開けるだけでリアタイヤにトラクションがかかり安定する。
そして素晴らしいのがハンドリング。オフロードバイクに乗ったことがある人なら、オンロードでもロードバイクにはない軽快さと自由自在感があるということはご存じのことと思う。オフでの走りを考えたマシンでは重心が高すぎるし、サスペンションの動きが大きすぎて無駄な動きが出てしまうというデメリットもあるのだが、CL250の場合は19インチフロントタイヤと適度なストロークを確保した前後サスペンションなどによって、オフロードバイクの美点がロードバイクと融合している。加減速で前後サスがよく動いてくれるので、姿勢変化を利用しながらコーナリングする楽しさがある。17インチラジアルタイヤを履いたバイクだと、どうしてもグリップに頼る感じになってしまうが、CL250は、低い速度で走っていてもバイクを自分で操っているという感覚が強く得られるのである。
CL250はクラシカルなイメージでまとめられたマシンだが、魅力はそのスタイルではなく走りにある。ビギナーにも乗りやすく、エキスパートの要求にも応えてくれる。そんな懐の深いバイクだ。個人的にも非常に気に入っている。
ただ、もしも自分が購入の候補として考えるのであれば、同じ車体サイズで大きなエンジンを搭載した「CL500」になるだろう。動力性能が高くなるだけでなく、パワーによってマシンをコントロールする楽しさも増えるからだ。CL500の魅力に関しては、機会があったらぜひお伝えしたいと思っている。
(文=後藤 武/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2175×830×1135mm
ホイールベース:1485mm
シート高:790mm
重量:172kg
エンジン:249cc 水冷4ストローク単気筒DOHC 4バルブ
最高出力:24PS(18kW)/8500rpm
最大トルク:23N・m(2.3kgf・m)/6250rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:34.9km/リッター(WMTCモード)
価格:62万1500円
◇◆こちらの記事も読まれています◆◇
◆スクランブラースタイルの新型バイク「ホンダCL250」がデビュー
◆ホンダから500ccクラスの新型スクランブラー「CL500」が登場

後藤 武
ライター/エディター。航空誌『シュナイダー』や二輪専門誌『CLUBMAN』『2ストマガジン』などの編集長を経てフリーランスに。エアロバティックスパイロットだった経験を生かしてエアレースの解説なども担当。二輪旧車、V8、複葉機をこよなく愛す。
-
ホンダN-ONE e:G(FWD)【試乗記】 2025.12.17 「ホンダN-ONE e:」の一充電走行距離(WLTCモード)は295kmとされている。額面どおりに走れないのは当然ながら、電気自動車にとっては過酷な時期である真冬のロングドライブではどれくらいが目安になるのだろうか。「e:G」グレードの仕上がりとともにリポートする。
-
スバル・クロストレック ツーリング ウィルダネスエディション(4WD/CVT)【試乗記】 2025.12.16 これは、“本気仕様”の日本導入を前にした、観測気球なのか? スバルが数量限定・期間限定で販売した「クロストレック ウィルダネスエディション」に試乗。その強烈なアピアランスと、存外にスマートな走りをリポートする。
-
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション/ルークスX【試乗記】 2025.12.15 フルモデルチェンジで4代目に進化した日産の軽自動車「ルークス」に試乗。「かどまる四角」をモチーフとしたエクステリアデザインや、リビングルームのような心地よさをうたうインテリアの仕上がり、そして姉妹車「三菱デリカミニ」との違いを確かめた。
-
アストンマーティン・ヴァンテージ ロードスター(FR/8AT)【試乗記】 2025.12.13 「アストンマーティン・ヴァンテージ ロードスター」はマイナーチェンジで4リッターV8エンジンのパワーとトルクが大幅に引き上げられた。これをリア2輪で操るある種の危うさこそが、人々を引き付けてやまないのだろう。初冬のワインディングロードでの印象を報告する。
-
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(4WD)【海外試乗記】 2025.12.12 「ノイエクラッセ」とはBMWの変革を示す旗印である。その第1弾である新型「iX3」からは、内外装の新しさとともに、乗り味やドライバビリティーさえも刷新しようとしていることが伝わってくる。スペインでドライブした第一報をお届けする。
-
NEW
フォルクスワーゲンTロックTDI 4MOTION Rライン ブラックスタイル(4WD/7AT)【試乗記】
2025.12.20試乗記冬の九州・宮崎で、アップデートされた最新世代のディーゼルターボエンジン「2.0 TDI」を積む「フォルクスワーゲンTロック」に試乗。混雑する市街地やアップダウンの激しい海沿いのワインディングロード、そして高速道路まで、南国の地を巡った走りの印象と燃費を報告する。 -
NEW
失敗できない新型「CX-5」 勝手な心配を全部聞き尽くす!(後編)
2025.12.20小沢コージの勢いまかせ!! リターンズ小沢コージによる新型「マツダCX-5」の開発主査へのインタビュー(後編)。賛否両論のタッチ操作主体のインストゥルメントパネルや気になる価格、「CX-60」との微妙な関係について鋭く切り込みました。 -
NEW
フェラーリ・アマルフィ(FR/8AT)【海外試乗記】
2025.12.19試乗記フェラーリが「グランドツアラーを進化させたスポーツカー」とアピールする、新型FRモデル「アマルフィ」。見た目は先代にあたる「ローマ」とよく似ているが、肝心の中身はどうか? ポルトガルでの初乗りの印象を報告する。 -
NEW
谷口信輝の新車試乗――ポルシェ911カレラT編
2025.12.19webCG Movies「ピュアなドライビングプレジャーが味わえる」とうたわれる「ポルシェ911カレラT」。ワインディングロードで試乗したレーシングドライバー谷口信輝さんは、その走りに何を感じたのか? 動画でリポートします。 -
NEW
ディーゼルは本当になくすんですか? 「CX-60」とかぶりませんか? 新型「CX-5」にまつわる疑問を全部聞く!(前編)
2025.12.19小沢コージの勢いまかせ!! リターンズ「CX-60」に後を任せてフェードアウトが既定路線だったのかは分からないが、ともかく「マツダCX-5」の新型が登場した。ディーゼルなしで大丈夫? CX-60とかぶらない? などの疑問を、小沢コージが開発スタッフにズケズケとぶつけてきました。 -
EUが2035年のエンジン車禁止を撤回 聞こえてくる「これまでの苦労はいったい何?」
2025.12.19デイリーコラム欧州連合(EU)欧州委員会が、2035年からのEU域内におけるエンジン車の原則販売禁止計画を撤回。EUの完全BEVシフト崩壊の背景には、何があったのか。欧州自動車メーカーの動きや市場の反応を交えて、イタリアから大矢アキオが報告する。

















































