実は人を選ぶクルマかも? 話題の新型車「トヨタ・ランドクルーザー“250”」の実像に迫る
2023.08.25 デイリーコラムランクルファミリーの新たな中核モデル
「ランドクルーザー」シリーズの新たなコアモデル……と称される「トヨタ・ランドクルーザー“250”」が世界初公開されたのは、2023年8月2日のこと。粗忽(そこつ)な記者は当時の記事を振り返り、まだ3週間しかたっていないのに驚いた。なにせちまたは“250”の話題であふれ、そのあまりの接触頻度と情報量に、もう2カ月は過ぎたような気分になっていたのだ。
編集部きってのランクルウオッチャーを自負するワタシにとり、新型車の“250”は、けっこう驚きのクルマだった。ランクルを含むトヨタのクロカン系モデルは、メーカーもファンも、昔からヒエラルキーや看板の扱いに厳しかったからだ。「FJクルーザー」がランクルを名乗れなかったのは最たる例。“250”に連なるライトデューティー系……すなわち「ランドクルーザープラド」についても、ファミリーのなかでの扱いはちょっと軽くて、技術説明会で「地球最後の日まで生き残るのが“70”と“200”(“300”の前任モデル)。その前日まで残っているのがプラド」なんて言われたりもしていた。少なくともここ日本では、そういう序列が分かりやすくあった。
それが冒頭で述べたとおり、トヨタはプラドの後継にあたる“250”を、「ランクルの新たなコアモデル」と表したのだ。ワークホースに徹する“70”とプレミアムな“300”の間、ファミリーのど真ん中に位置するモデルということだ。関係者いわく、プラドというサブネームが廃されたのも、派生モデルのイメージを払しょくするのが主な理由だったという(海外ではサブネームが残される市場もあるが)。いやはや、時代よのう。
もっとも海外をみると、それも別段新しい潮流ではなかった様子である。日本でランクルといって想起される“300”が導入されているのは、主に中東、オーストラリア、南アフリカなど(ロシアについては、トヨタは戦争を機に事業を終了している)。欧州等のその他の地域では、既存のプラドこそが“ザ・ランクル”だった。発表会でにぎにぎしく「ランクル復活!」が宣言された米国も、今後は同様だ。“200”の販売終了とともにランクルが消滅していたかの地では、これからは“250”こそがランクルとなる。ランクルとランクルプラドの間の垣根は、海の向こうではずいぶん曖昧になっていた。
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既存の「プラド」とは趣がずいぶん違う
そうした印象は、“250”というクルマ自体を見ても変わらない。エンジンの設定は異なるが、ボディーサイズは兄貴分(……とこれからも言い続けていいのかしら?)の“300”と同等だし、車両骨格も同じ「GA-Fプラットフォーム」だし。
発表会場にあったパネルの技術解説を見ても、ドライブモードセレクターの「マルチテレインセレクト」は「『AUTO』モードあり+ハイレンジ対応」の最新のもので、もちろん足まわりには可変ダンパーの「AVS」が設定される。前後のスタビライザーを電子制御する「E-KDSS」は解説がなかった(=設定がなさそう?)けど、代わってトヨタ車初採用の、フロントスタビライザーのロック/フリー機構「SDM(Stabilizer with Disconnection Mechanism)」が投入されるとのことだった。おのおのの技術や装備に違いはあれど、こうした解説を読む&聞く限り、“300”との差異化のために、わざわざスペックダウンがなされたような印象はなかった。
一方、両車の間で明確に違いを感じたのが、内外装にみるクルマのイメージだ。威厳というか、独自の高級感をただよわせる“300”に対し、“250”はかなり装飾や抑揚を抑えた印象。例えばインテリアなどは、造作そのものやインターフェイスの考え方は違うけど、「スズキ・ジムニー」や「ジープ・ラングラー」に近いベクトルを感じた。
こうした車両イメージのあんばいについては、「ランドローバー・ディフェンダー」や「フォード・ブロンコ」(……は、ちょっと毛色が違うか?)などから広がりつつある新しい大型SUVのトレンド、豪華さよりも機能性やオフ車らしさを主張したモデルの台頭を意識した印象だ。満艦飾なモデルについては、ランクル“300”に「レクサスGX/LX」、北米では「セコイア」なんかもあるわけで、こちらでまで色気を出す必要はないということだろう。
いずれにしろ“250”のキャラクターは、プチ・ランクル的だった既存のプラドとはいささか趣が異なる。“新型プラド”を求めるつもりで手を伸ばすと、「あれれ?」となるかもしれない。気になる人は、『webCG』のギャラリーや動画をぜひ何度も見返して……アクセスカウンターをガンガン回しておいてください(笑)。
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これまでの“ランクル”とは違うクルマなだけに
さて。そんな“250”について個人的に興味深く感じているのが、このクルマをトヨタが「原点回帰」と表している点だ。ということは、彼らは今日のランドクルーザーのキャラクターや扱いに、少なからず“原点”からの変節を感じていたのだろう。
このあたり、古参のクロカン好きの皆さまも、昨今のランクルの在り方には思うところがあったのではないか? 納車待ちは年単位。今やちょっとしたお出かけにも気を使う高級車で、マーケットでは投機目的の売買が横行。ドロボーが怖くて、おちおち旅行にも行けやしない……。いやいや、クロカンってそういうクルマでしたっけ?
これらはもちろん、ランクルのなかでも“300”の話なわけだが、世間一般ではその“300”や“200”こそが、ランクルのイメージリーダーだったのだ。トヨタの原点回帰という言葉には、すっかり高級車となったランクルのブランドイメージを、ちょっと引き戻そうという意図があったのだと思う。そうしてできたモデルが“250”で、彼らはそれをファミリーの新しいコアモデルとしたわけだ。ランクルの本来の姿は、移動の自由を究極的に担保し、ユーザーの生活に寄り添う実用車だったはず。皆さんも、どうぞガシガシ乗り倒してくださいよ……という、つくり手の声を(勝手に)聞いた気がした。
ただ、今日の超然たるランドクルーザーのイメージもまた、ユーザーの希望に応え、長い時間をかけて育まれてきたもの。ファンが求めたランクルのあるべき姿だ。それを具現した陸の王者“300”とも、ハードコアな信者を抱える“70”とも“250”は違うクルマで、だから記者は興味津々(しんしん)なのである。この新しいランクルを、既存のファンは受け入れるのか? あるいは、これまでにない新しい顧客を呼び込むことになるのか? ランクルのいち追っかけとしては、それがとても楽しみで、気になって夜も眠れないのである。
(文=webCGほった<webCG”Happy”Hotta>/写真=トヨタ自動車、webCG/編集=堀田剛資)
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堀田 剛資
猫とバイクと文庫本、そして東京多摩地区をこよなく愛するwebCG編集者。好きな言葉は反骨、嫌いな言葉は権威主義。今日もダッジとトライアンフで、奥多摩かいわいをお散歩する。
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