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トヨタ・ランドクルーザー“250”VX(4WD/6AT)

理解と覚悟を 2024.10.26 試乗記 高平 高輝 「トヨタ・ランドクルーザー“250”」には、1グレードだけガソリンモデルが用意されている。これがなかなかマニアックなパワーユニットで、ランクルの本質をきちんと分かった人でないと使いこなすのは難しいだろう。300km余りをドライブした印象をリポートする。
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唯一のガソリンモデル

そろそろ街なかで見かけることも増えてきた新型ランドクルーザー“250”のガソリンモデルにようやく試乗することができた。“250”のパワートレインはともに4気筒の2.8リッターディーゼルターボと2.7リッターガソリン自然吸気の2種で、前者は「ZX」「VX」「GX」の3グレードが設定されているが、後者のガソリンモデルはVX(7人乗り)のみ。すでにご存じの方も多いと思うが、海外市場向けには他に2.4リッターガソリンターボ+ハイブリッドも存在するものの、今のところ国内導入は明らかにされていない。いずれ追加されるものと推測するが、もともとランクルの主戦場は海外市場なのでそちら向けの供給が落ち着いてからと思われる。

VXに搭載されるガソリンエンジンは2TR-FE型直列4気筒2.7リッターで、最高出力163PS/5200rpmと最大トルク246N・m/3900rpmを生み出す。センターディファレンシャルにトルセン式LSD(電磁式ロック機構付き)を備えたフルタイム4WDシステムはもちろん同じだが、変速機は6段ATとなる。2.8リッターディーゼルターボ(こちらは8AT)は、204PS/3000-3400rpmと500N・m/1600-2800rpmと格段に強力だ。

ガソリンのVXはラインナップのなかで最軽量とはいえ2240kg(同じVXでもディーゼルターボ車は2380kg)の車重に対してはやはりちょっと心もとない数字である。このガソリンユニットはこれまで「プラド」や「ハイラックス」のみならず、「ハイエース」や「ダイナ」などの商用車にも搭載されてきた“ワークホース”向けの実直なエンジンながら、もう20年選手であり、1GD型ディーゼルターボ(2015年投入)に比べるとやはり新しいとはいえないのが弱点だ。

今回の試乗車は「ランドクルーザー“250”」の「VX」グレードの2.7リッターガソリンモデル。車両本体価格は545万円で、同じVXでもディーゼルモデルより85万円も安い。
今回の試乗車は「ランドクルーザー“250”」の「VX」グレードの2.7リッターガソリンモデル。車両本体価格は545万円で、同じVXでもディーゼルモデルより85万円も安い。拡大
「VX」グレードはバンパーとグリルのプロテクターがシルバーに。ディーラーオプションによるヘッドランプの丸目化にも対応する。
「VX」グレードはバンパーとグリルのプロテクターがシルバーに。ディーラーオプションによるヘッドランプの丸目化にも対応する。拡大
リアセクションは道具感のあるシンプルなデザイン。前後とも中央に位置するのは「TOYOTA」ロゴで、オーバルを3つ組み合わせたエンブレムは備わらない。
リアセクションは道具感のあるシンプルなデザイン。前後とも中央に位置するのは「TOYOTA」ロゴで、オーバルを3つ組み合わせたエンブレムは備わらない。拡大
タイヤは265/65の18インチ。ホイールセンターにはトヨタエンブレムがある。
タイヤは265/65の18インチ。ホイールセンターにはトヨタエンブレムがある。拡大
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軽快だが燃費は悲観的

それが如実に表れているのが燃費である。ガソリンVXのWLTCモード燃費は7.5km/リッター(ディーゼルターボ車は11.0km/リッター)にとどまるから、はじめからあまり期待していなかったが、実際の燃費も今どきのクルマとしては芳しくない。街なかではせいぜい5km/リッター台、高速道路をおとなしく走っても8km/リッター台に乗せるのがやっとという感じである。

可変バルブタイミングと電動パワーステアリングぐらいしか燃費向上に効くメカニズムを持たない、しかも本格的なクロスカントリービークルなんだからそのぐらい当然だよ、とベテラン四駆乗りなら気にしないかもしれないが、今どきのSUVから乗り換えた人はびっくりするのではないか。レギュラーガソリン仕様なのがせめても(燃料タンク容量は全車80リッター)、ではあるが、これではやはりマニア以外の人には太鼓判を押すのは難しい。

いっぽうで、スムーズでキックバックがない電動パワーステアリングのおかげもあって、ディーゼルモデルよりも明らかに軽快感があり、扱いやすく感じるのも事実である。トップエンドまで回さなければ、静かで振動も少なく、従来型プラドとは比較にならないほど現代的に洗練されているのは間違いない。

2.7リッター4気筒ガソリンエンジンは最高出力163PS、最大トルク246N・mを発生。2.2tを超えるボディーを活発に動かすにはちょっと非力だ。
2.7リッター4気筒ガソリンエンジンは最高出力163PS、最大トルク246N・mを発生。2.2tを超えるボディーを活発に動かすにはちょっと非力だ。拡大
内装色はブラックのみの設定で、シルバーのアクセントがごく控えめに使われている。液晶メーターは最上級の「ZX」よりもひと回り小さい。
内装色はブラックのみの設定で、シルバーのアクセントがごく控えめに使われている。液晶メーターは最上級の「ZX」よりもひと回り小さい。拡大
シート表皮は本革で、前席にはヒーターもベンチレーションも搭載。着座位置は相当に高く、身長170cm台後半のスタッフでもAピラーのハンドルをつかんで乗り込んでいた。
シート表皮は本革で、前席にはヒーターもベンチレーションも搭載。着座位置は相当に高く、身長170cm台後半のスタッフでもAピラーのハンドルをつかんで乗り込んでいた。拡大

高速道路は苦手

ただし、オンロードでの加速についてはやはり予想どおりに緩慢だ。低速では、さすが道なき道を走るランクルだけあってピックアップも柔軟性も問題なし。オンロードでも60km/hぐらいまでは痛痒(つうよう)を感じることはないが、そこから先でやっぱりちょっと非力だなあと感じさせられる。ディーゼルの最上級グレードZXでも高速道路での合流などではもうちょっと中間加速が力強ければいいのにと感じたが、ガソリンVXはさらに伸びが鈍い。

あくまで参考だが、何度かスタートダッシュを手元計測してみたところ、0-100km/h加速は14秒程度と普通の軽自動車並みだった。10秒以下ならまあ不満を感じることはないが、全開加速してこのぐらいだと、あれっ? と不安になる人もいるかもしれない。また長い上りが続く高速道路区間では100km/hをキープするためにどんどんシフトダウンすることもあった。やはりこのずうたいには少し非力と言わざるをえない。

とはいえ、直進性や乗り心地に不満はない。無論、乗用車ベースのSUVと同じレベルの乗り心地を期待されても困るが、フレーム構造+後輪リジッドの本格派クロカンとしては優秀だといえる。兄貴分の“300”のデビュー直後に感じたピッチングも気にならなかった。気になるのは、このような本格派4WDに接したことのないユーザーがどう捉えるか、である。

写真のスピード感はカメラマンの腕によるもの。手動計測による0-100km/hのタイムは14秒ほどだった。
写真のスピード感はカメラマンの腕によるもの。手動計測による0-100km/hのタイムは14秒ほどだった。拡大
最上級の「ZX」とは異なり、2列目にはシートの温度調節機能がない。座面と背もたれは格納してタンブルアップが可能。
最上級の「ZX」とは異なり、2列目にはシートの温度調節機能がない。座面と背もたれは格納してタンブルアップが可能。拡大
3列目は背もたれを先に展開し、その下から座面が引き出しのように出てくる仕掛け。シートとしてはミニマムだが、格納時のフラットさは見事(写真は後で紹介)。
3列目は背もたれを先に展開し、その下から座面が引き出しのように出てくる仕掛け。シートとしてはミニマムだが、格納時のフラットさは見事(写真は後で紹介)。拡大

分かっている人向け

ガソリンVXは他のモデルに比べて搭載される走行支援機能がだいぶ簡略化されていることにも留意すべきだ。オフロードで砂地や岩場など路面状態に応じて選択できる「MTS(マルチテレインセレクト)」と電動リアデフロックは備わらず(これらはディーゼルZXのみ標準)、さらにドライブモードセレクト(エコ/ノーマル/スポーツ)やダウンヒルアシスト/クロールコントロールもガソリンVXのみ省略されており、センターコンソールまわりは拍子抜けするほど簡素だ。それでも日本では使いこなせないほどの悪路走破性を備えていることは疑いない。そもそも今どき545万円という本体価格でそこまで要求するほうが欲張りというものだろう。

現代的に進化しながらもワークホースとしてのポリシー(信頼性、耐久性、悪路走破性)を堅持しているのがランドクルーザー“250”である。その本物度がおしゃれで乗りたい人の心もガッチリつかんでしまうのだろうが、いやもちろんそれでも結構なのだが、ランクルはその辺のカッコだけのSUVとは土台からして違う。どうしてもディーゼルは嫌だという人でなければガソリン車は燃費などの点でおすすめしにくいのが正直なところだし、ディーゼルの場合も持て余さないかどうかだけは確認してほしい。大騒ぎして手に入れた揚げ句、何か思ってたのと違う、なんて言われてはランクル“250”が不憫(ふびん)である。

(文=高平高輝/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝)

WLTCモードの燃費は7.5km/リッターで、300km余りをドライブした今回のトータル燃費は7.2km/リッター。レギュラー仕様なのが救い。
WLTCモードの燃費は7.5km/リッターで、300km余りをドライブした今回のトータル燃費は7.2km/リッター。レギュラー仕様なのが救い。拡大
ドライブモードセレクターやマルチテレインセレクトなどは備わっておらず、センターコンソールまわりには空き地が多い。カッコよさや雰囲気で“250”を選ぶならこのほうが操作に迷わなくていいかもしれない。
ドライブモードセレクターやマルチテレインセレクトなどは備わっておらず、センターコンソールまわりには空き地が多い。カッコよさや雰囲気で“250”を選ぶならこのほうが操作に迷わなくていいかもしれない。拡大
3列目使用時の荷室の様子。リアゲートはガラス部分のみを開けられる。
3列目使用時の荷室の様子。リアゲートはガラス部分のみを開けられる。拡大
3列目を収納し、2列目をタンブルアップしてみる。3列目の跡地は見事にフラットになっているが、そのぶん少しだけ床が高くなっている。
3列目を収納し、2列目をタンブルアップしてみる。3列目の跡地は見事にフラットになっているが、そのぶん少しだけ床が高くなっている。拡大

テスト車のデータ

トヨタ・ランドクルーザー“250”VX

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4925×1980×1925mm
ホイールベース:2850mm
車重:2240kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.7リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:6段AT
最高出力:163PS(120kW)/5200rpm
最大トルク:246N・m(25.1kgf・m)/3900rpm
タイヤ:(前)265/65R18 114V M+S/(後)265/65R18 114V M+S(ダンロップ・グラントレックAT23)
燃費:7.5km/リッター(WLTCモード)
価格:545万円/テスト車=563万4800円
オプション装備:ボディーカラー<プラチナホワイトパールマイカ>(3万3000円)/トヨタチームメイトアドバンストドライブ<渋滞時支援>+緊急時操舵支援<アクティブ操舵機能付き>+フロントクロストラフィックアラート+レーンチェンジアシスト+ドライバーモニターカメラ(9万5700円)/デジタルキー(3万3000円)/ルーフレールレス(-1万9800円) ※以下、販売店オプション フロアマット<ラグジュアリー>(4万2900円)

テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:1703km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:302.3km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:7.2km/リッター(車載燃費計計測値)

トヨタ・ランドクルーザー“250”VX
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