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第419回:ビックリ“規格外”広州モーターショー
 もしやここが中国のデトロイトなのかも?

2010.12.27 小沢コージの勢いまかせ! 小沢 コージ
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第419回:ビックリ“規格外”広州モーターショー もしやここが中国のデトロイトなのかも?

怖いくらいにデカい!!

いやー、ビックラこきました。第8回広州モーターショー! 上海、北京にも負けないほどスケールデカいってウワサを聞きつけて、今回初めて行ってみたんだけど、ホントにデカい! いや、デカいっていうより“規格外”だわ。
前回より拡大したという会場のデカさやショーカーの数はもちろん、街のビルの大きさや雑多な雰囲気まで含め、つくづく「中国恐るべし!」って感じでしたね。

まず、プレスデイ初日の12月20日の朝7時にタクシーで現場入り。会場は市内にあって便利は便利なのだが、朝もやかすむなかにデカいロールケーキのような建物があって、これ一つで幕張メッセの展示ホールをすべてあわせた2倍を超える16万平方メートル。それに、まわりに同じ見た目の会場が3つあって、まだ全部使われてない。もしこれが今後10年もしないうちに全部使われるとしたら……!? と考えるとぞっとしましたね。

でもそれもあながち妄想ではない。2010年の中国自動車販売は史上最多の1800万台に達すると目され、これは現状日本の500万台弱はもちろん、全米過去最高の1700万台も凌駕(りょうが)。2011年には大台の年2000万台超えも確実とされ、保有台数はすでに8500万台と世界第2位の日本を超えており、1位の北米を抜くのも時間の問題と言われている。
実際2020年には保有2億台に達するとも言われ、そうなった暁には広州ショーで4会場全制覇! も夢ではない。

そのほか報道によると、ショーカー全890台、パーツ関係を含め出展メーカー数は600社。ワールドプレミアは5車種にのぼり、チャイナプレミア45車種、コンセプトカーだけで30車種も展示される。斜陽の東京モーターショーに比べ、まさに太陽が昇る勢いの広州ショーなのだ。

なぜにこんなに勢いあるのかって、土地柄もあるのだろう。首都の北京、大都市の上海に比べ、広州は「中国第三の都市」ということにはなってるものの工場の多さは有数で、日系三社のトヨタ、ホンダ、日産が大工場を備えるだけでなく、ヒュンダイはトラック工場を持ち、先日フォルクスワーゲンも同じ広東省に工場建設を決めた。
いわば“中国のデトロイト”であり、自動車に対するパワーは北京、上海を上回るのだ。

朝からいきなりおしくらまんじゅう!

それを肌で感じたのが朝のプレスパス申請時。8時前からカウンターで待っていたら俺のパスカードが届いておらず、一番前で待たされたオレは後ろからあおられ、おしくらまんじゅう状態。ついには「前に行きたい」と図々しくも後ろの中国人に言われ、断ると今度は腰をスキ間に差し込み、手を前に出される始末。もちろん対抗はしたが、現地語で係員とやられると太刀打ちできない。これはちょっと海外のショーではあり得ない状況で、「こっちも常に言い返せる状態でないと」と実感しました。

で、ようやく入ったショー会場で、頑張りが見られたのは日本メーカー。まず朝9時に広州ホンダのブースに行くと、2007年に発表した初の中国向けブランド「理念」から初の新型車が発表された。来年発売される「S1」がそれだ。ベースは「フィット」で、エンジンは1.3と1.5リッター直4の二本立てとなり、中身はフィットのようなものだが、デザインは完全に中国向け。サイズも中国で一番人気のあるCセグメントの大きさだ。

またその次の日産プレゼンでは、今度はCOOの志賀俊之さんが直々に、これまたキモ入りの中国向けCセグメントセダン「サニー」を発表。これはシャシーは新型「マーチ」と同じVプラットフォームで、新型1.5リッターエンジンと新型CVTを搭載、20km/リッター前後の燃費性能を誇る。中国向けオリジナルデザインというだけでなく、惜しげもなく最新技術を投入しており、中国向けに型落ちモデルを入れてたことなどは、すっかり昔の話になってしまった。
さらに、日産はホンダ同様、初の中国向け新ブランド「ヴェヌーシア」(啓辰)を発表。これは2012年から実車投入予定で、まだボディ前半分のプロポーザルのみだったが、盛んに「For Chinese」とアピールされていたのが印象的だった。

なによりもメンツを重んずると言われる中国人。外国向けの「おふる」ではなく、「中国向け」という事実に現地の人が満足することは想像に難くなく、中国市場で好調の日産の勢いはまだまだ続きそうだ。

ホンダの中国ブランド「理念」からデビューした「S1」。
ホンダの中国ブランド「理念」からデビューした「S1」。 拡大

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日産の志賀俊之COOと、中国で発売される「サニー」。
日産の志賀俊之COOと、中国で発売される「サニー」。 拡大

中国メーカーに勢い無し

一方、意外に目新しいものがなかったのが、民族系といわれるGEELYこと「吉利汽車」やGreat Wallこと「長城汽車」だ。
クルマは以前衝撃を受けた上海ショーの時とあまり変わらず、「フィアット・パンダ」そっくりの「M1」や、「トヨタbB」そっくりの「M2」などが並んでいた。微妙にSUV風アレンジが加えられていたものの、すでに古い。“本家”の新型車の発表についていけてなくて、もはや昔ほどの“コピーパワー”は感じられなかったなぁ。同じくリチウムイオン技術で有名なBYDも、例の世界初のプラグインハイブリッドカー「F3DM」が、ジミに並べられているぐらいだった。

聞けば今、中国の自動車産業はすでにある種の淘汰(とうた)が政府により行われつつあり、韓国式の「四強式」よろしく、ある程度の規模のメーカー以外は生き残れなくなっているという。まさに他国の10年を1年で消化するかのような中国のスピード。目に見えないところで、どんどん時間は流れているのだ。

それとショーとは関係ないけど、個人的にビックリしたのは夜の広州の街。平日夜、それも11時ぐらいだったにも関わらず、夜の街はまるで大みそかのアメ横のよう。人通りが切れず、この活気というかパワーには、とてもかなわない印象。人口13億人を肌で感じる……とまでは言わないが、本当に「黙ってるとやられてしまう」というプレッシャーがあった。

ただし、朝のおしくらまんじゅうのときもそうだったけど、直接後ろの中国人に「オレが先だ」というと、あっさりした反応。別にことさら怒っているというより、「多少の衝突は挨拶代わり」という感じだった。なんというか、コミュニケーションの距離の取り方、レベルが違うって気がしましたな。

ってなわけで広州。このパワーは、クルマ好きのみなさんも一度は行かねば! って感じですよ。

(文と写真=小沢コージ)

日産の中国向けブランド「ヴェヌーシア」のエンブレム。
日産の中国向けブランド「ヴェヌーシア」のエンブレム。 拡大
「ヴェヌーシア」のプレスカンファレンスでは、デザインの一部がお披露目された。
「ヴェヌーシア」のプレスカンファレンスでは、デザインの一部がお披露目された。 拡大
特に新しさを感じない……「長城汽車 Haval M1」。
特に新しさを感じない……「長城汽車 Haval M1」。 拡大
小沢 コージ

小沢 コージ

神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』

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