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“モーターショー”じゃなくなったジャパンモビリティショーを私たちはどう楽しむべきか?

2023.10.27 デイリーコラム 森口 将之
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“クルマ好き”としても見ごたえがある

4年ぶりに東京モーターショーが復活! と思ったらジャパンモビリティショーに看板を掛け替えて開催されることになった。クルマ好きの読者のなかには、モヤモヤした気持ちを抱いている人がいるかもしれない。

僕は2011年からモビリティージャーナリストという肩書でも活動しているので、個人的にはおおむね歓迎ムードなのだが、モビリティー=移動可能性という意味を理解した展示になっているかは気になった。

でも、10月28日からの一般公開を前に、2日連続でプレスデーに足を運んだ結論を言えば、おおむね満足できる内容だったし、会場となる東京ビッグサイトも展示棟ごとにカテゴリーが分けてあって、予想以上に見やすかった。

具体的には、公共交通でのアクセスがしやすい西展示棟は、主催者展示のほかにスタートアップやサプライヤーが入り、隣接した南展示棟はイベントスペースと子供およびマニア向けゾーン。一方、駐車場から近い東展示棟は、1~6ホールが私たちのよく知る自動車メーカーのゾーン、新しい7ホールはベンチャーとモータースポーツ、8ホールはキャンピングカー……という具合だ。

この区分けを見ればわかるとおり、かつてのモーターショーの雰囲気を色濃く残すのは、東1~6ホールになる。その様子は、たしかに電動化の流れは感じるものの、予想以上にスポーティーなデザインや走りを身上とするモデルが目立っていた。「モーターショーはやっぱり華やかなスポーツカーでしょう!」という人には、4年前より期待に応える内容になっていると思う。

東京モーターショーの後を継ぐかたちでスタートした、ジャパンモビリティショー。その名のとおり、自動車に限らずさまざまなモビリティーに触れられるイベントとなっている。
東京モーターショーの後を継ぐかたちでスタートした、ジャパンモビリティショー。その名のとおり、自動車に限らずさまざまなモビリティーに触れられるイベントとなっている。拡大
会場となる東京ビッグサイトのなかで、私たちのよく知る自動車メーカーは東展示棟の1~6ホールにブースを並べている。写真はトヨタ自動車のブース。
会場となる東京ビッグサイトのなかで、私たちのよく知る自動車メーカーは東展示棟の1~6ホールにブースを並べている。写真はトヨタ自動車のブース。拡大
マツダが出展したコンセプトモデル「アイコニックSP」。各メーカーの展示は、4年前の最後の東京モーターショーのときよりむしろ、クルマ好きの期待に応えるものになっていたように思う。
マツダが出展したコンセプトモデル「アイコニックSP」。各メーカーの展示は、4年前の最後の東京モーターショーのときよりむしろ、クルマ好きの期待に応えるものになっていたように思う。拡大

館内の移動で感じた新モビリティーの有用性

一方で、四輪車や二輪車以外の展示も多かった。ベンチャーやスタートアップに対抗するようなパーソナルモビリティーやエアモビリティーなどからは、新しいプレイヤーを迎え入れるだけでなく、既存のメーカーも変わろうとしていることが伝わってきた。働くクルマに対してのアプローチも印象的で、電動化の恩恵を生かしたモダンでクリーンなトラック/バスは、いわゆる2024年問題で顕在化しているドライバー不足の解消にも貢献するはずだ。

こうした出展車両のうちのいくつかは、実際に乗ったり操ったりできる。パーソナルモビリティーには既存のクルマとは違う操る喜びがあると理解してもらえそうだし、ふだんは接する機会がない「ホンダジェット」の機内などは、一般公開日にも人気になりそうだ。

駐車場に近い東7・8ホールは、自動運転あり、ドローンありとバラエティーに富んでいて、ジャパンモビリティショーという名前を象徴する場のひとつ。既存の自動車メーカーとは一味違う、元気や勇気をもらえるような空気感が心地よかった。

ちなみに、ここでブースを構える電動パーソナルモビリティーのWHILLは、会場にレンタルステーションを複数設け、車両の貸し出しを行っていた。この種の展示会の取材・見学では、歩数が一日2万歩レベルに達することもあり、足腰の弱い人は負担に感じるはず。僕も無理はせず、WHILLのモビリティーをありがたく利用させてもらった。

長い渡り廊下を通り、西棟/南棟へと向かう。西棟1階の主催者展示「TOKYO FUTURE TOUR」は、「ライフ」「エマージェンシー」「プレイ」「フード」の4テーマで、近未来の生活シーンを表現していた。“水素推し”のライフゾーンには鉄道車両、エマージェンシーゾーンにはドローンも置かれ、フードゾーンではロボットによるデリバリーもあった。日本自動車工業会としては、かなり踏み込んだ空間ではないかと思う。

ホンダブースに展示されていた「ホンダジェット」の胴体。予約制で、キャビンに乗り込むことができた。
ホンダブースに展示されていた「ホンダジェット」の胴体。予約制で、キャビンに乗り込むことができた。拡大
「ホンダジェット」は客室だけでなくコックピットも見学可能。これが、ホンダが誇る「世界で一番売れている小型ジェット機」のコックピットだ。
「ホンダジェット」は客室だけでなくコックピットも見学可能。これが、ホンダが誇る「世界で一番売れている小型ジェット機」のコックピットだ。拡大
会場に設けられていたWHILLの電動パーソナルモビリティーのレンタルステーション。WHILLは羽田空港などでも、利用者に同様のモビリティーを提供している。
会場に設けられていたWHILLの電動パーソナルモビリティーのレンタルステーション。WHILLは羽田空港などでも、利用者に同様のモビリティーを提供している。拡大
「TOKYO FUTURE TOUR」の「フード」ゾーンの様子。ロボットがチャーハンをつくったり、食べ物や飲み物を運んだりするさまは、普通のモーターショーでは見られない光景だろう。
「TOKYO FUTURE TOUR」の「フード」ゾーンの様子。ロボットがチャーハンをつくったり、食べ物や飲み物を運んだりするさまは、普通のモーターショーでは見られない光景だろう。拡大

さまざまな“移動の喜び”を知ることができる

その先にあるスタートアップのコーナーは、米国ラスベガスで毎年初めに開催されるCESを意識したものかもしれない。つまり商談の場でもあるので、プレスデーはがらんとしていた。そういえば、1階中央の吹き抜けも一般公開日にはトークセッションが開催されるようだが、プレスデーでは広場のまま。南展示棟1階の水素エネルギーを使ったライブステージは、まだ工事中だった。CESのようにプレス向けのセッションなどがちゃんと用意されていれば、メディアを通してショーのコンセプトをより多くの人に伝えられたのではないだろうか。

西棟4階のサプライヤーゾーンは、既存の自動車以外のモビリティーの提案にも積極的に取り組んでおり、これまで以上に面白かった。電動化の影響をダイレクトに受けるのは彼らであり、新しい道を開拓したいという切実な気持ちも伝わってくる。

南展示棟4階のキッザニアやトミカ、スーパーカーの展示は、2019年のショーで好評だったこともあり、従来どおりという印象。家族連れで来た人は、子供を飽きさせないための場として重宝しそうだ。

たしかにイベントスペースに不確定要素はあったものの、個人的には“クルマの楽しさ”とは違う、いろいろな種類の移動の喜びを、見て、触れて、味わえる場になっていた。たしかにこれは、“モーターショー”より“モビリティショー”のほうがふさわしい。

だからこそ、来場者にはできるだけクルマ以外の乗り物に接してほしいと思う。僕自身、多くのモビリティーを体験したことで、逆にクルマはこういう部分が魅力で、こういうシーンで乗るとよさが堪能できると認識がクリアになったからだ。

クルマ好きがもっとクルマ好きになるために、ジャパンモビリティショーを役立ててもらえればと思う。

(文=森口将之/写真=webCG、森口将之/編集=堀田剛資)

スタートアップの出店エリアは、すなわち商談の場だ。来場者が報道関係者に限られるプレスデーの人通りはまばらだった。
スタートアップの出店エリアは、すなわち商談の場だ。来場者が報道関係者に限られるプレスデーの人通りはまばらだった。拡大
西棟4階のサプライヤーゾーンの様子。自動車産業が100年に一度という変革期を迎えるなか、サプライヤーも生き残りをかけて新しい取り組みを進めている。
西棟4階のサプライヤーゾーンの様子。自動車産業が100年に一度という変革期を迎えるなか、サプライヤーも生き残りをかけて新しい取り組みを進めている。拡大
日本の企業が手がける小型電動モビリティー。フランスの「シトロエン・アミ」と同じ、ヴァレオ製のモーターを搭載している。
日本の企業が手がける小型電動モビリティー。フランスの「シトロエン・アミ」と同じ、ヴァレオ製のモーターを搭載している。拡大
森口 将之

森口 将之

モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。

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