ヒョンデ・コナ ラウンジ ツートン(FWD)
仕事きっちり 2023.11.27 試乗記 2022年に日本再進出を果たした韓国ヒョンデが、第3の矢として「KONA(コナ)」を送り込んできた。未来的なボディー形状が目を引くが、実はスタイリング優先にはあらず。細かなところにも配慮が行き届いた、人々の暮らしに寄り添う小型クロスオーバーだ。「BYDドルフィン」と競合
コナはヒョンデのコンパクトクロスオーバーで、初代は2017年に登場……と車種的な歴史は浅い。コスパに加えて攻めたデザインも好評だったのだろう、欧州ではブランドの台数的躍進に大きく寄与している。一方で、初代から設定されていた電気自動車(BEV)版はバッテリーの発火事故が重なり、LGケム製のセルに不良があることが判明。欧米市場向けを含めたリコールに至っている。
2代目となるコナはアーキテクチャーを一新し、現在のヒョンデの中核となる「K3」プラットフォームを採用。日本に導入されるのはBEVモデルのみだが、仕向け地によっては1.6~2リッターのコンベンショナルな内燃機を搭載したモデルも共存する。全長×全幅×全高が4355×1825×1590mmとサイズ的にはB~Cセグメント級に該当し、実は案外大きい「アイオニック5」に比べると全長で280mm、全幅で65mmも小さい。
と、B~Cセグメント級のBEVといえば直近で思い浮かぶのはBYDの「ドルフィン」だろう。そのサイズは4290×1770×1550mmと、コナに比べるとちょっぴりコンパクトだ。一方でホイールベースは2700mmと、内燃機兼用プラットフォームのコナよりも40mm長い。ただしコナの荷室容量はVDA値で466リッターとドルフィンを圧倒している。貨客の配分も含めたパッケージの妙は、積んできたクルマづくりのキャリアが表れるところだ。
選べる4グレード
搭載するバッテリーはグレードによる容量の違いはあれど、ドルフィンが44.9kWhまたは58.56kWhなのに対して、コナは48.6kWhまたは64.8kWh。至って単純に全幅×ホイールベースを有効搭載床面積とすれば、その密度は積み方を工夫したコナのほうが勝るが、リン酸鉄リチウムイオン電池(LFP)を採用するドルフィンの効率もかなりのものであることが分かる。ちなみにコナの日本仕様のバッテリーはCATL製となるもようだ。ともあれ、現状の最普及価格帯で中韓の2社がこれほど競ったBEVづくりを繰り広げているという点は、日本の完成車メーカー(OEM)もしっかり受け止めるべきことだと思う。
コナのグレード構成はトリムや搭載バッテリー容量、カラーリングに応じて4種類が用意される。うち、300万円台と最も安いのはモーターのアウトプットもバッテリー容量も小さい「カジュアル」だが、こちらは実質的に受注生産となっており、販売の主力は64.8kWhバッテリーを搭載した「ボヤージュ」、または「ラウンジ」「ラウンジ ツートン」(サンルーフ装備とツートンカラーの違い)となるだろう。
装備はカジュアルやボヤージュでも素晴らしく充実しているが、それでも実際に迷うことになるだろうボヤージュとラウンジの装備差は小さくはない。具体的には車線変更のアクティブアシストなどを含むADASやサンルーフ、前左右席パワーシートや後席シートヒーター、BOSE製オーディオにARナビゲーション、NFC認証キーなど、37万円余の価格差ぶんの増し盛りはなされているようにうかがえる。ケチな自分でも、本革シートよりむしろ合皮シートのボヤージュがいいんだけど……と引っかかりながらも選ぶとすればラウンジになるだろうか。試乗車はラウンジ ツートンだった。
個性的でありながら普遍的
側面の強いキャラクターラインやピクセルドットのモチーフなど、コナの要所からはアイオニックシリーズとの関連性がうかがえるが、デザイン的にはミニバンの「スターリア」などで見せた昨今のヒョンデのフォーマットにのっとっている。現在ヒョンデのデザインとクリエイティブのトップを務めるルク・ドンカーヴォルケ氏はランボルギーニ時代に「ムルシエラゴ」や「ガヤルド」を手がけた経歴の持ち主だが、有機的な面に無機的なディテールを貼り付けたようなデザインは氏の十八番だ。定規で引いたようなウエッジシェイプに見えて、織り込まれた曲面美こそがランボルギーニの伝統的な持ち味であるように、ロボコップのような能面に目を奪われるコナも、ちょっと鳥瞰(ちょうかん)してみれば落ち着いたSUVのシェイプを保っていることが分かる。実際、前後席に座ってみても、視界的に特異なところはなく後席の乗降性や居住性も平準的だ。前後席間は広々とはいかないが、普通のCセグメントくらいの感覚で日常的に使えるパッケージではある。
12.3インチの液晶パネルが2面並ぶコックピットも、デザイン的な印象の割にはオーソドックスな環境で総じて扱いやすさに不満はない。コラムに据えられたロータリー式のシフトセレクターはDとRの選択に慣れを要するが、空調操作系を物理スイッチとして独立で配するなどの設計は大いに支持したくなる。ステアリングにはパドルが据えられるが、これは当然回生制動力をコントロールするもので、前車との車間を測りながら最適な回生効果を得るモードも含めて、ドライバーの任意で直感的な選択が可能だ。テスラのように車内環境が一画面で全完結する地味を装う派手さはないが、あらゆる人が惑わず扱えるコナのような普遍性もまた、しっかりと評価されるべきものだと思う。
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街乗りでは至ってスムーズ
パワートレインの洗練度も上々だ。パワー&トルクは204PS/255N・mとこのクラスのBEVとしては十分な余力があるが、発進~低速域でのアクセルワークでもスムーズに必要な力を引き出せて、無用なトルク変動で乗員に気遣うこともない。ちなみにドライブモードは日本専用にチューニングされており、「エコ」モードはよりスローに、「スポーツ」モードはよりハイゲインにしつけてあるという。「スノー」モードは氷結路での扱いやすさなどにも配慮し、冬の北海道でチューニングを重ねたという。一方、回生制動の減速度はコースティングから強い回生までパドルで4段階にコントロールできるが、デフォルト設定となる最弱回生の状態でもバランスよくまとめられており、街乗りから高速まで不満を抱く場面は少ないだろう。そして低速時や急制動時のメカニカルブレーキとの強調も段つき感なくスムーズに仕上げられている。
足まわりのセットアップはソフトめで、タウンスピードでの乗り味は至って穏やかだ。120km/h前後の高速巡航域になるとリアサスの路面追従性が粗くなり路面によってはややバタつきが表れるのはアーキテクチャーの異なるアイオニック5でも見られた動きだ。また、操舵フィールは全般に平板で、タイトなワインディングではトルクステア的なキックバックも表れる。いずれも高い負荷域での挙動ではあるが、他の完成度からみれば、コナの課題はシャシーセッティングということになりそうだ。
それにしても、だ。BYDにしてもヒョンデにしても、商品を通じて見る限り、本体の完成度もさることながらローカライズのきめ細かさにも感心させられる。個人的には日本におけるBEVの数的普及は地方のニーズ発掘が契機だと思っているが、両社の供するBEVはコストでも仕様でもそれに応えるものになっているのがお見事だ。BEVの世界的普及は現在逆風下にあり、逆にハイブリッド車が再びクローズアップされているような論調が世をにぎわせているが、日本のOEMにはこの隙にぜひうまいこと立ち回っていただきたく思う。
(文=渡辺敏史/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)
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テスト車のデータ
ヒョンデ・コナ ラウンジ ツートン
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4355×1825×1590mm
ホイールベース:2660mm
車重:1770kg
駆動方式:FWD
モーター:交流同期電動機
最高出力:204PS(150kW)/5800-9000rpm
最大トルク:255N・m(26.0kgf・m)/0-5600rpm
タイヤ:(前)235/45R19 99V/(後)235/45R19 99V(クムホ・エクスタPS71)
一充電走行距離:541km(WLTCモード)
交流電力量消費率:137Wh/km(WLTCモード)
価格:489万5000円/テスト車=489万5000円
オプション装備:なし
テスト車の年式:2023年型
テスト開始時の走行距離:1236km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:--km/kWh

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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