ヒョンデ・コナNライン(FWD)【試乗記】
自然体の極意 2024.09.06 試乗記 ヒョンデのコンパクトSUV「コナ」にスポーティーな新グレード「Nライン」が登場。その最大の特徴はスポーツ系サブブランド「N」のテイストを注入した専用の内外装である。デザインとともに走りの質感をチェックした。MとMスポーツ=NとNライン
ヒョンデにおいて「N」の称号は、クローズドコース走行も想定したスポーツ系モデルに与えられるという。日本では2024年春、「アイオニック5」にそれが用意されたのはご存じのとおりだが、世界ではハッチバックの「i20」や「i30」、Cセグメントセダンの「エラントラ」といった内燃機モデルにも設定されている。
対する「Nライン」は、パフォーマンスはベースモデルと同等ながら、Nで培った空力改善技術や加飾演出などを加えたコスメティック系のスポーティーモデルという位置づけだ。BMWでいえばMとMスポーツ、レクサスでいえばFとFスポーツ……と、プレミアム系ブランドの序列をトレースしたものとみれば分かりやすい。ちなみにNはヒョンデのR&Dがある韓国の南陽、そしてモータースポーツ部門の開発拠点があるドイツ・ニュルブルクリンクのイニシャルを元にしている。
と、日本では電気自動車(BEV)オンリーの展開となるコナに、新たに追加されたグレードがNライン。ちなみにコナNラインは韓国でも展開されているが、かの地ではむしろベーシック系のグレードのほうが人気が高いそうだ。対して日本市場はスポーティー系のトリムラインが販売の主役となるモデルが多いこともあって、「アイオニック5 N」の導入と並行して展開することになったという。
専用内外装で存在感アップ
Nラインの機能装備はトップグレードの「ラウンジ」に準じており、フルスペックのADASやヒーター&ベンチレーション付きシート、ビルトイン型ドラレコやBOSE製オーディオなど、ほかに付けるものが思い浮かばないほど充実している。そこに加わるのが専用の加飾類だ。
外装まわりではベースモデルのつるんとした印象に対して、Nラインはエアロダイナミクスを意識したフロント&リアバンパーや左右分割型のリアウイングが用意される。また、19インチのホイールにもNライン専用の意匠が与えられる。要所をブラックアウトすることで引き締まった印象をもたらしつつ、ウィンドウ下端のベルトラインやドアミラーなどにも同様の処理が施されており、エンブレムを見ずともひと目で違いが分かるだろう。
内装まわりはアイオニック5 Nがテーマカラーのパフォーマンスブルーを思い起こさせる薄い水色を用いるのに対して、コナNラインはNモデルの差し色ともいえるレッドをオーナメントやトリム、ステッチなどに用いてベースモデルとの差異化を図っている。
ファミリーカーとしての資質も十分
コナは内燃機仕様とプラットフォームを共有している関係もあり、BEVだからといってパッケージ面での優位を築くのが難しい。社内的には厳密なセグメンテーションは意識していないというが、外寸からすればB~Cセグメント級のSUVというかたちになるだろうか。その床下に容量64.8kWhのバッテリーを搭載しているわけだが、前席はもちろん、後席の着座感にも違和感はない。レッグスペースも必要にして十分だし、466リッターの荷室容量はファミリーカーとしてのニーズにも応えてくれる。ちなみにV2Lにも対応しており、1500WのACアウトレットも車内に配されている。
WLTCモードで541kmの一充電走行距離は、季節や積載量によっては300km程度でみておくべきかもしれないが、1回の急速充電を挟めばミニマムでも日に400km程度の走行距離は賄えるはずだ。これもまた、普通の人が普通に使うファミリーカーのカバレッジとしては適切だと思う。逆にいえば、それ以上の距離を1日で走ろうという向きには、BEVそのものが現状はお薦めできない。充電器の性能や空き状況を逐一見極めながらバッファなしで攻め切るような乗り方は、高速巡航で黙々と数百kmを走り込める、クルマと積極的に戯れたい人向けの話だ。
サスペンションの仕様はラウンジと同じということで、乗り味に違いはないはずだったが、2023年のラウンジの試乗時に見てとれたリアサスの追従性の甘さからくる高速域での乗り心地の悪化が、心なしか収まっているようでフラット感が増したように感じられる。前述のとおり、メーカー側としてはハードウエアの変更はないということなので、これは生産面のこなれ、もしくは個体差ということだろうか。そのくらいのフィーリングの違いは往々にしてあり得る、という程度のものでもある。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
経験を積んだからこそのこなれ感
コナNラインはFF系プラットフォームということもあって、動力性能をことさらに欲張ってはいない。ラウンジと同じ最高出力204PS/最大トルク255N・mというスペックは、1.5リッターターボ級といったところだろうか。ゆえにパワートレインのマナーはデイリーカーとしてきれいに整っている。ラフな操作でもトルクステアの類いは最小限にとどめられ、ウエットでも気づかうことなくスムーズに扱えるだろう。いざ踏み込めばBEVならではのトルクのずぶとさを感じることはできるが、むやみにそれをひけらかすようなことはない。普通に乗れば限りなく今までのクルマと同じように応答し、そのうえで普通のクルマよりも上質なフィーリングで振る舞ってくれる。
ちょっと前ならオートノマス、今だとSDV(ソフトウエアディファインドビークル)だろうか。100年に一度の変革期とやらにおいて、クルマまわりでは次から次へとキラキラしたビジネスワードがささやかれる。が、大勢においてはそんなのはどうでもいい話だろう。ともあれアフォーダブルで日々ストレスなく使えることこそが、クルマに求める第一義ではないだろうか。
コナはデザインこそかなりクセ強だが、中身は肩肘張らない普通に徹している。日本の自動車メーカーはとかくBEVの出遅れを指摘されるわけだが、心配すべきは技術的なうんぬんよりむしろ、BEVで普通をさらっとやってのける、経験値に基づいたこなれ感のほうではないかと思う。
(文=渡辺敏史/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
ヒョンデ・コナNライン
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4385×1825×1590mm
ホイールベース:2660mm
車重:1790kg
駆動方式:FWD
モーター:交流同期電動機
最高出力:204PS(150kW)/5800-9000rpm
最大トルク:255N・m(26.0kgf・m)/0-5600rpm
タイヤ:(前)235/45R19 99V/(後)235/45R19 99V(クムホ・エクスタPS71)
一充電走行距離:541km(WLTCモード)
交流電力量消費率:137Wh/km(WLTCモード)
価格:506万円/テスト車=506万円
オプション装備:なし
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:319km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:--km/kWh

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
-
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】 2026.1.17 BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。
-
マツダCX-60 XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ(4WD/8AT)【試乗記】 2026.1.14 「マツダCX-60」に新グレードの「XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ」が登場。スポーティーさと力強さ、上質さを追求したというその中身を精査するとともに、国内デビューから3年を経た“ラージ商品群第1弾”の成熟度をチェックした。
-
カワサキKLX230シェルパS(6MT)【レビュー】 2026.1.13 その出来には“セロー乗り”も太鼓判!? カワサキのトレイルバイク「KLX230シェルパ」に、ローダウン仕様の「シェルパS」が登場。安心の足つき性で間口を広げた一台だが、実際に走らせてみると、ストリートでも楽しめるオールラウンダーに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツC220dラグジュアリー(FR/9AT)【試乗記】 2026.1.12 輸入車における定番の人気モデル「メルセデス・ベンツCクラス」。モデルライフ中にも年次改良で進化し続けるこのクルマの、現在の実力はいかほどか? ディーゼルエンジンと充実装備が魅力のグレード「C220dラグジュアリー」で確かめた。
-
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション(FF/CVT)【試乗記】 2026.1.10 日産の軽スーパーハイトワゴン「ルークス」がフルモデルチェンジ。「見えない危険が……」のテレビCMでお茶の間をにぎわせているが、走る、曲がる、止まるをはじめとしたクルマ全体としての仕上がりはどうか。最上級グレードをテストした。
-
NEW
クルマの乗り味の“味”って何だ?
2026.1.20あの多田哲哉のクルマQ&A「乗り味」という言葉があるように、クルマの運転感覚は“味”で表現されることがある。では、車両開発者はその味をどう解釈して、どんなプロセスで理想を実現しているのか? 元トヨタのエンジニア、多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
プジョー208 GTハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】
2026.1.20試乗記「プジョー208」にマイルドハイブリッド車の「GTハイブリッド」が登場。仕組みとしては先に上陸を果たしたステランティス グループの各車と同じだが、小さなボディーに合わせてパワーが絞られているのが興味深いところだ。果たしてその乗り味は? -
ベントレー・コンチネンタルGTアズール(4WD/8AT)【試乗記】
2026.1.19試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」のなかでも、ウェルビーイングにこだわったという「アズール」に試乗。控えめ(?)な680PSのハイブリッドがかなえる走りは、快適で満ち足りていて、ラグジュアリーカーの本分を感じさせるものだった。 -
第327回:髪もクルマもナイスファイト!
2026.1.19カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。日産の新型「ルークス」で夜の首都高に出撃した。しっかりしたシャシーとターボエンジンのパワフルな走りに感心していると、前方にスーパーカーの姿を発見。今夜の獲物は「フェラーリ・ローマ」だ! -
日本で売れるクルマはあるのか!? 最新の“アメリカ産ニホンシャ”を清水草一が検証する!
2026.1.19デイリーコラムアメリカからの外圧による制度変更で、北米生産モデルの国内導入を決めたトヨタ。同様に、今後日本での販売が期待できる「海外生産の日本車」には、どんなものがあるだろうか? 清水草一が検証してみた。 -
フェラーリ12チリンドリ(後編)
2026.1.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「フェラーリ12チリンドリ」に試乗。前編では伝家の宝刀であるV12エンジンを絶賛した山野。後編ではコンビを組むシャシーの印象を余すところなく聞いてみた。










































