洗車の水が原因でクルマがおかしくなることは?
2023.12.19 あの多田哲哉のクルマQ&A先日、洗車のあとにクルマの調子が悪くなったような気がして、「まさか水が悪影響を……?」と心配になりました。水のかけ方に問題があったのでしょうか? クルマのつくりをよく知る方の意見を聞いてみたいです。
たしかに、水の侵入を防ぐというのが設計・開発のうえで大事だった時代もありました。30年以上前のことでしょうか。
しかし、最近のクルマにおいて「洗車で調子が悪くなる」などということは、絶対にないと思います。自動車メーカーは、世界中から寄せられた「水による不具合の情報」をもとに「シャワートンネル」(あらゆる方向から車体に放水し、水の浸入をチェックする施設)をつくり、徹底的にテストしているからです。
トヨタでは「特異環境」と呼んでいるのですが、これら水関係のことを含む特別な状況を再現しトラブルを未然に防ぐ専門部署があります。例えば、クルマを灼熱(しゃくねつ)・極寒の環境に繰り返し出し入れするとか、チンチンに熱したエンジンに氷水をかけるとか……。「真夏の洗車」もなかなか厳しい状況かと思いますが、そうしたテストは他社でも同様に何度となく繰り返されているはず。そのうえで新車は世に出るものですから、高圧洗車を含め、通常の洗車でどうにかなってしまう、なんてことはないのです。
ドアやエンジンフード、トランクルームなどに取り付けられているウェザーストリップの防水技術というのは、今や材質から形状まで、大変に発達しています。実にすごい技術なんです。興味を持たれた方は、洗車の際にでも、ぜひマイカーのこの部分をじっくりと観察してみてください。

多田 哲哉
1957年生まれの自動車エンジニア。大学卒業後、コンピューターシステム開発のベンチャー企業を立ち上げた後、トヨタ自動車に入社(1987年)。ABSやWRカーのシャシー制御システム開発を経て、「bB」「パッソ」「ラクティス」の初代モデルなどを開発した。2011年には製品企画本部ZRチーフエンジニアに就任。富士重工業(現スバル)との共同開発でFRスポーツカー「86」を、BMWとの共同開発で「GRスープラ」を世に送り出した。トヨタ社内で最高ランクの運転資格を持つなど、ドライビングの腕前でも知られる。2021年1月に退職。