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【スペック】全長×全幅×全高=4405×1795×1670mm/ホイールベース=2675mm/車重=1580kg/駆動方式=FF/1.4リッター直4DOHC16バルブターボ+スーパーチャージャー(140ps/5600rpm、22.4kgm/1250-4000rpm)/価格=339万円(テスト車=369万4500円/RNS510パッケージ(HDDナビゲーションシステム+MEDIA-IN+ETC車載器+リアビューカメラ+マルチファンクションインジケーター)=30万4500円)

フォルクスワーゲン・ゴルフトゥーラン TSI ハイライン(FF/7AT)【試乗記】

威張らず飾らずデキるやつ 2010.12.09 試乗記 下野 康史 フォルクスワーゲン・ゴルフトゥーラン TSI ハイライン(FF/7AT)
……369万4500円

ドイツ生まれの売れっ子ミニバン「ゴルフトゥーラン」が、世代交代。お化粧直しにとどまらないという進化のほどを、上級グレード「ハイライン」でチェックした。
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“ほどほど”でモテモテ

「2004年4月に国内導入されて以来、『トゥーラン』は6年半あまりで約2万6000台の販売を記録した。文句なしに輸入ミニバンのベストセラーである」というフォルクスワーゲン・グループ・ジャパンの説明を聞いて、「あれっ、トゥーランってミニバンなんだ!?」とあらためて思った。

しかし、まさにそのへんがトゥーランの価値であり、人気の秘密でもある。本国では登場時からトゥーランという独立したモデルだが、日本では今でも“ゴルフトゥーラン”として売られる。ミニバンというよりも「3列シート7人乗りのゴルフ」として認知されてきた。バス的なワンモーションフォルムではなく、ちゃんとノーズがある。「ゴルフ」より約20cm長いが、フルサイズのミニバンよりはずっとコンパクトだ。ミニバン王国の日本にあって、そんなほどほどさがこのクルマのよさだろう。

ドアパネル以外、すべての外板を一新したという新型トゥーランは、新しいフォルクスワーゲンの顔ともいえる水平基調のフロントマスクがなによりの識別点だ。試乗車の「ハイライン」にはヘッドライト内に特徴的なLEDのポジションランプが埋まる。全体にフェイスリフト前より少し若返った印象だ。

パワーユニットは、1.4リッターのツインチャージャーと乾式7段DSGの組み合わせ。140psのパワーもこれまでどおりだが、日本仕様には今回あらたにチップ・チューンが施され、エコカー減税をゲットしている。最大トルクの発生回転数が1500rpmから1250rpmに下がったことも細かな違いだ。

2010年11月22日に日本上陸、2011年1月11日に発売される新型「ゴルフトゥーラン」。テールランプの形状は縦型から横型に変更され、高速走行時に急ブレーキをかけるとブレーキランプが点滅して後続車に注意を促す機能(エマージェンシーストップシグナル)も備わる。
2010年11月22日に日本上陸、2011年1月11日に発売される新型「ゴルフトゥーラン」。テールランプの形状は縦型から横型に変更され、高速走行時に急ブレーキをかけるとブレーキランプが点滅して後続車に注意を促す機能(エマージェンシーストップシグナル)も備わる。 拡大
ターボとスーパーチャージャー、ふたつの過給機を備える1.4リッターユニットは、先代モデルから継承。10・15モードの燃費値は3%アップの14.6km/リッターになった。
ターボとスーパーチャージャー、ふたつの過給機を備える1.4リッターユニットは、先代モデルから継承。10・15モードの燃費値は3%アップの14.6km/リッターになった。 拡大
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「高級だなあ」

六本木のフォルクスワーゲン・グループ・ジャパンでクルマをピックアップして六本木通りを走り始める。

信号待ちから先頭でスタートするとき、ちょっと多めにアクセルを踏み込んだら、思いがけずキュッと前輪から音が出たので驚いた。車重1580kgに140psというと、活発な走りはそれほど期待できないカタログデータなのに、加速性能、とくに出足の力強さは相変わらずだ。
ゼロヨンといっても、0-400mではなく、0-40mの立ち上がり加速が素早い。フォルクスワーゲン系直噴過給ユニットの例にもれず、最初のひと踏みで流れをリードできるダッシュ力をこのクルマも備えている。

ただし、高速域になると、タウンスピードで感じたほどのパンチはない。100km/hからDレンジのままアクセルを床まで踏めば、7段DSGは3速まで落ちるが、そこからの加速は1.6tの車重を思い知らされる。たかだか1.4リッターのエンジンで賄うミニバンなのだからしかたない。

“走り”の質感の高さはこれまでどおりだ。ボディの遮音性が向上したのか、エンジン音やロードノイズは旧型よりさらに静かになった。
速度域を問わず、しっとり落ち着いた乗り心地もいい。「神は細部に宿る」というけれど、ちょっと湿気を帯びたような肌触りのレザーステアリングを握っているだけで、「高級だなあ」と感じる。きらびやかなところはまったくないのに、お金はちゃんとかかっていると思わせる。それを“プレミアム”と呼ぶなら、最近のフォルクスワーゲンはその点でBMWに肩を並べたか、ひょっとしたら追い抜いてしまったようにも思える。

高速道路をゆく。LEDのポジションランプとシルバーのルーフレールが上級グレード「ハイライン」の証。
高速道路をゆく。LEDのポジションランプとシルバーのルーフレールが上級グレード「ハイライン」の証。 拡大
運転席まわりの様子。パドルシフトは、エントリーグレードとなるもう1車種「コンフォートライン」には無い装備だ。
運転席まわりの様子。パドルシフトは、エントリーグレードとなるもう1車種「コンフォートライン」には無い装備だ。 拡大
「ハイライン」のシートは、ファブリックとアルカンターラのコンビ柄スポーツシートとなる。
「ハイライン」のシートは、ファブリックとアルカンターラのコンビ柄スポーツシートとなる。 拡大

しつけにもいい空間

ピープル・ムーバーとしての使い勝手は変わりない。全長4.4mだから、3列シートによる「7人乗り」は“限界性能”である。2列目席には独立した3つのシートが“律儀”という感じで隙間なくぎっしり並んでいる。3席すべてに前後スライド機構が備わる。横3人がけをしても、イスの前後位置をちょっと動かせば、肩が互い違いになって邪魔にならない。

2人分のサードシートは、見たところ快適そうだが、座ってみると大人には補助イスの域を出ない。セカンドシートをグンと前に出してもらわないと、レッグルームは狭すぎるし、床に対してクッション位置が低いので、着座姿勢も体育座りをしいられる。子供用と割り切るべきだろう。
貨物車として使うとき、そのサードシートは荷室床下に跡形もなくしまっておける。ドイツ車は往々にしてこうした機構の操作力が重くて、指をくじいたり、ツメを剥がしたりする恐怖にかられることがままあるが、トゥーランは日本車並みに親切にできている。

家族構成は30〜40代の夫婦と小学生までの子どもがふたり。たまに実家に遊びに行ったとき、おじいちゃんおばあちゃんを2列目で厚遇し、子どもたちは荷室床から掘り起こしたサードシートに収まる。そんなところが、最も理想的な使われ方だろうか。

試乗車のハイラインはシリーズの上級モデルだが、ウエストラインから下の内装は黒一色。ポップに飾ったところはまったくない。「乗ったとたん日曜日感覚」には浸らせてくれないが、そこがトゥーランの真価だ。車内カラオケは似合わない。この中なら、しつけのいい子どもが育つかもしれない。

(文=下野康史/写真=高橋信宏)

セカンドシート。運転席と助手席の背面に見える小テーブルは、標準で備わる。
セカンドシート。運転席と助手席の背面に見える小テーブルは、標準で備わる。 拡大
サードシートは2脚。折り畳み収納することができる。
サードシートは2脚。折り畳み収納することができる。 拡大
荷室の容量は、7名乗車時で121リッター。セカンドシートを完全に取り外せば、最大1913リッターにまで拡大できる。
(写真をクリックするとシートの倒れるさまが見られます)
荷室の容量は、7名乗車時で121リッター。セカンドシートを完全に取り外せば、最大1913リッターにまで拡大できる。
(写真をクリックするとシートの倒れるさまが見られます) 拡大
フォルクスワーゲン・ゴルフトゥーラン TSI ハイライン(FF/7AT)【試乗記】の画像 拡大
下野 康史

下野 康史

自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。

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