クルマの燃費を向上させるワザはある?
2024.01.30 あの多田哲哉のクルマQ&A私がクルマのスペックで一番気になっているのは「燃費」です。世の中では、燃費アップのためのノウハウをさまざま耳にしますが、多田さんのご意見は……? 開発者が考える燃費向上策を、ぜひお聞かせください。
現実的に燃費向上につながる最も大きな要素は「ドライバーの運転の仕方」です。
クルマの側でできることというのは、言ってしまえば「たかが知れている」のです。例えば、走行モードに「エコモード」があれば積極的に選んでいただくのはひとつの手として、それでドライバーがアクセルをガバガバ踏んでしまったら良い燃費は期待できませんよね。
では、具体的にドライバーはどのように運転したらいいのか? これは、「とにかく気をつけて、先を見て運転する」に尽きます。
つまり、走行している道のずっと先でなにが起こっているのかを早く知る、ということです。早く信号の変わり目がわかるとか、先々の混雑状況に気づくとか。その結果、アクセルワークが変わり、“ゆるく”“長く”減速できるようになる。それだけで燃費は大いに変わります。
その点、今どきのクルマは、車両から比較的近い領域をセンシングしてくれる運転支援システムが充実していますので、そのぶんドライバーは道路のはるか前方に注意を払うことができるようになります。
アクセルをじわっと踏んで、遠くを見て走り、早めに減速する。ぜひ実践してみてください。それは、安全にもつながりますから。

多田 哲哉
1957年生まれの自動車エンジニア。大学卒業後、コンピューターシステム開発のベンチャー企業を立ち上げた後、トヨタ自動車に入社(1987年)。ABSやWRカーのシャシー制御システム開発を経て、「bB」「パッソ」「ラクティス」の初代モデルなどを開発した。2011年には製品企画本部ZRチーフエンジニアに就任。富士重工業(現スバル)との共同開発でFRスポーツカー「86」を、BMWとの共同開発で「GRスープラ」を世に送り出した。トヨタ社内で最高ランクの運転資格を持つなど、ドライビングの腕前でも知られる。2021年1月に退職。