ポルシェ・カイエンターボ (4WD/8AT)【ブリーフテスト】
ポルシェ・カイエンターボ (4WD/8AT) 2010.12.03 試乗記 ……1906万5000円総合評価……★★★★★
内外装のデザインを一新し、よりスポーティになった新型「カイエン」は、燃費向上が最大のウリ。500psのパワーを誇る上級グレード「カイエンターボ」で500kmの道のりをテストした。
価格満足度は5つ星
満点の総合評価は、後にふれる項目別評価の平均ではない。特にこの「カイエン」のような、高性能SUVという特殊で高価格なクルマともなれば、その魅力はもっと別のところにあると考えるのが普通だろう。そこで価格満足度のような評価をしなければならないとしたら、星5つは問題なく与えられる。
ポルシェのSUVという特殊性ゆえ、価格の割にはかなりスポーティな偏った性格。しかし良くも悪くもポルシェという名前の下に許されてしまう。
例えば乗り心地などはまさにスポーツカーのレベルで、“SUVのスーパーカー”であった「ランボルギーニLM002」のような、超高性能車でありながら異次元の乗り心地を備えているわけではない。そこはやはり量産車としての妥協もみられる。
とはいえ、刹那的な加速や高速性能に酔いしれたいと願うユーザーの要求はほとんど満たすことから、顧客満足度の高さは理解できる。
今回は、午後にクルマを受け取ってから一度自宅へもどり、「ちょっと温泉へでも行ってみようか……」と草津まで往復した。その日のうちに帰宅することもできた。半日あれば500kmくらいのドライブもいとわない、そんな気にさせるのが「カイエンターボ」だろう。ちなみに草津往復だけにかぎれば燃費は7.5km/リッター“もの”数値を記録した。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2002年のパリサロンで発表され、日本では同年12月に導入。4.5リッターV8ターボエンジン(450ps)搭載の「カイエンターボ」と、同NAエンジン(340ps)の「カイエンS」をラインナップ。2003年9月に、3.2リッターV6エンジンを搭載したエントリーモデル「カイエン」を追加した。
2006年12月にマイナーチェンジされ、排気量の拡大にともなって出力が大幅に向上し、外観も手直しされた。加えて、「ポルシェ・ダイナミックシャシーコントロールシステム」などの新機能も選べるようになった。
2010年3月のジュネーブショーで発表された最新モデルは、内外装のデザインが一新され、よりスポーティな印象となった。先代より全長で48mm延長するなどボディを拡大したが、素材や部品などを見直し、先代比で180kgの減量を達成(カイエンS)。さらに、アイドリングストップ機構やエネルギー回生システムなどの採用により、燃費性能向上が図られ、先代モデル比で最大23%の向上(カイエンターボ、カイエンS)を果たしたという。
ラインナップは4.8リッターV8ツインターボ(500ps)の「カイエンターボ」、同NA(400ps)の「カイエンS」、3.6リッターV6(300ps)の「カイエン」の3種。いずれのモデルにも、軽量アクティブ4WDシステム「ポルシェ・トラクション・マネージメントシステム(PTM)」が搭載され、「カイエンS」「カイエンターボ」には、ワイドレシオ化された8段のティプトロニックSが、「カイエン」には、6段MTが組み合される。なお、同時に発表された「カイエンSハイブリッド」の日本導入は、2011年中頃の予定。
(グレード概要)
「カイエンターボ」は、500psを発生する4.8リッターV8ツインターボエンジンを搭載。0-100km/h加速は4.7秒、最高速度は278km/hに達する。
ライドハイトコントロール機能と「ポルシェ・アクティブサスペンション・マネージメントシステム(PASM)」を組み込んだエアサスペンションシステムが標準装備されるほか、ダイナミックライトシステムや全席シートヒーター、ステアリングホイールヒーターなどの快適装備も標準で備わる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
スポーツカー流儀のインストゥルメントパネルは、デザインが明快で、見やすい。ウッドパネルなどで高級に見せる手法を用いないところがポルシェ的で好感がもてる。ただし価格相応の要求には応えていないが、ポルシェが造るSUVということで許されてしまう、得な部分だ。ソナーが備わりリアビュー映像も見られるので不便さはないが、やはりこの手のクルマの死角である右サイドの確認ができないのは不安。
(前席)……★★★
高めに座り、ボンネットの端がちょっと見える。視界良好のポジション。シートは見た目には快適そうだが、ポルシェの想定する主なユーザーはかなり大柄なのか、標準的な日本人にとっては腰周辺のホールドが不足する。長距離旅行者は腰痛に注意。コーナーを攻めないことが肝要か。オプションでもいいからレカロシートなどの設定が親切と思われる。
(後席)……★★★
こちらも座面は高く視界良好。ルーフも高いし、足元のスペースも十分だ。シートのクッションは硬めながら折り畳めるシートとしては居住性は悪くない。しかしそれも停止している時はいいとして、このクルマは硬派のドライバーズカーであるから、運転手の好き勝手に走られると、ここに座るのはつらいだろう。ベルトで体は固定されていても横Gや縦Gに苛まれることを思えば、家族用としては地獄に変わる。もっと穏やかで快適な高級SUVは存在する。
(荷室)……★★★★
十分に広く、大きい荷物を飲み込める。もちろんリアシートを倒せばさらに広大なスペースが出現する。内張り内装の処理や作りもしっかりしている。フロアはフラットで、その下にスペアタイヤは無く、パンク修理剤とエアーポンプが備わる。外したタイヤを収納するのはちょっと重そうだ。バックドアの開閉装置はオプション。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
強固なボディや遮音材、さらにドライバーとエンジンの間には距離があるため、最初は「静かだなぁ〜」と思っていたが、アイドリングストップするとホッとする。裏返せばそれだけ微振動も騒音もあるということで、価格を考えれば不満ではあるが、そこがポルシェの造るSUVという名前が有利に作用する点だ。動力性能に関しては、500psと71.4kgmのスペックから期待できるとおり。8段のティプトロニックSはやや反応が緩慢。今回の試乗では、トータルで570.3km走って、燃費は6.8km/リッターと予想を上回った。アイドリングストップが効いている。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
この巨体からは想像できないかもしれないが、ハンドリングは軽快でグリップの限界も高い。要因は高性能タイヤと2トンを超える車重がもたらす、その接地荷重にある。そしてもちろんハイパワーも、駆動力=安定性という図式を裏切らない。問題はシートだ。腰周辺が固定されずブカブカ。クルマ自体はかなりの横Gにたえてしまうから、乗員がこのまま耐えていると確実に腰をやられる。微振動や突き上げ感はまさに高性能車のそれで、快適な乗り心地を欲するならば、なにもカイエンでなくともいい、という当然の帰結となる。我慢の範囲内か。
(写真=峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:笹目二朗
テスト日:2010年10月18〜19日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2010年型
テスト車の走行距離:8540km
タイヤ:(前)295/35R21(後)同じ(いずれも、ミシュランLATITUDE Sport)
オプション装備:オートマチックテールゲート(11万6000円)/プライバシーガラス(8万3000円)/ポルシェ・トルク・ベクトリングプラス(PTVプラス/26万3000円)/ポルシェ・セラミックコンポジット・ブレーキ(PCCB/153万8000円)/サーボトロニック(4万7000円)/ポルシェ・ダイナミックシャシー・コントロール(PDCC/56万8000円)/21インチ911ターボIIホイール(64万2000円)/4ゾーンエアコンディショナーシステム(15万4000円)/3スポーク・スポーツステアリングホイール(7万4000円)/シートベンチレーション(フロント/20万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4):高速道路(4):山岳路(2)
テスト距離:570.3km
使用燃料:83.72リッター
参考燃費6.8km/リッター

笹目 二朗
-
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】 2026.1.17 BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。
-
マツダCX-60 XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ(4WD/8AT)【試乗記】 2026.1.14 「マツダCX-60」に新グレードの「XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ」が登場。スポーティーさと力強さ、上質さを追求したというその中身を精査するとともに、国内デビューから3年を経た“ラージ商品群第1弾”の成熟度をチェックした。
-
カワサキKLX230シェルパS(6MT)【レビュー】 2026.1.13 その出来には“セロー乗り”も太鼓判!? カワサキのトレイルバイク「KLX230シェルパ」に、ローダウン仕様の「シェルパS」が登場。安心の足つき性で間口を広げた一台だが、実際に走らせてみると、ストリートでも楽しめるオールラウンダーに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツC220dラグジュアリー(FR/9AT)【試乗記】 2026.1.12 輸入車における定番の人気モデル「メルセデス・ベンツCクラス」。モデルライフ中にも年次改良で進化し続けるこのクルマの、現在の実力はいかほどか? ディーゼルエンジンと充実装備が魅力のグレード「C220dラグジュアリー」で確かめた。
-
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション(FF/CVT)【試乗記】 2026.1.10 日産の軽スーパーハイトワゴン「ルークス」がフルモデルチェンジ。「見えない危険が……」のテレビCMでお茶の間をにぎわせているが、走る、曲がる、止まるをはじめとしたクルマ全体としての仕上がりはどうか。最上級グレードをテストした。
-
NEW
クルマの乗り味の“味”って何だ?
2026.1.20あの多田哲哉のクルマQ&A「乗り味」という言葉があるように、クルマの運転感覚は“味”で表現されることがある。では、車両開発者はその味をどう解釈して、どんなプロセスで理想を実現しているのか? 元トヨタのエンジニア、多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
プジョー208 GTハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】
2026.1.20試乗記「プジョー208」にマイルドハイブリッド車の「GTハイブリッド」が登場。仕組みとしては先に上陸を果たしたステランティス グループの各車と同じだが、小さなボディーに合わせてパワーが絞られているのが興味深いところだ。果たしてその乗り味は? -
ベントレー・コンチネンタルGTアズール(4WD/8AT)【試乗記】
2026.1.19試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」のなかでも、ウェルビーイングにこだわったという「アズール」に試乗。控えめ(?)な680PSのハイブリッドがかなえる走りは、快適で満ち足りていて、ラグジュアリーカーの本分を感じさせるものだった。 -
第327回:髪もクルマもナイスファイト!
2026.1.19カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。日産の新型「ルークス」で夜の首都高に出撃した。しっかりしたシャシーとターボエンジンのパワフルな走りに感心していると、前方にスーパーカーの姿を発見。今夜の獲物は「フェラーリ・ローマ」だ! -
日本で売れるクルマはあるのか!? 最新の“アメリカ産ニホンシャ”を清水草一が検証する!
2026.1.19デイリーコラムアメリカからの外圧による制度変更で、北米生産モデルの国内導入を決めたトヨタ。同様に、今後日本での販売が期待できる「海外生産の日本車」には、どんなものがあるだろうか? 清水草一が検証してみた。 -
フェラーリ12チリンドリ(後編)
2026.1.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「フェラーリ12チリンドリ」に試乗。前編では伝家の宝刀であるV12エンジンを絶賛した山野。後編ではコンビを組むシャシーの印象を余すところなく聞いてみた。






























