「乗車」よりも「参入」がいい!? クルマのライドシェアは、われわれに何をもたらすか?
2024.04.22 デイリーコラム海外とでは事情が違う
昨年、ロスに観光に行った友人が「市内の移動は全部、ウーバーを使ったよ」と言っていた。スマホで呼んですぐ来てくれるウーバー(一般のドライバーが自家用車を使って有料で人を運ぶライドシェアサービス)があまりにも便利なので、ロスでは正規のタクシーはかなり追い詰められているらしく、ぜんぜん見なかったそうだ。
アメリカではクルマがないとどこにも行けないので(ニューヨークを除く)、常にレンタカーだった。特にロスみたいな広大な都市ではレンタカーは必須だったんだけど、今は安くて便利なウーバーがあるから、レンタカーを借りなくても大丈夫になっているんだね。やっぱりアメリカって新しいシステム(といってもウーバー誕生からすでに14年!)がどんどん生まれる国だなぁ。
翻ってわが国では、タクシー運転手が深刻な人手不足だというのに、ウーバーに代表されるライドシェアサービスは、ようやく始まったばかりだ。2024年4月8日から先頭を切って都内でスタートしたけれど、日本ではドライバーはタクシー会社に雇用されるかたちで、タクシー会社の安全管理下での運行となる。
タクシー会社側にすれば、アメリカみたいにライドシェアが広まったら大変なことになる。そこで「運転の素人が自家用車で営業するライドシェアは危険」と主張し、国もそれを認めるかたちで、決してタクシー会社の利益を侵さないシステムでのスタートとなった。あらゆるイノベーションが創出される国・アメリカに対して、あらゆる既得権益が強固に守られる国・日本の縮図のように見える。
ところで私は、タクシーに乗ることはめったにないので、ライドシェアを使う予定もない。逆にライドシェアの運転手をやってみたい気持ちはある。なにしろクルマの運転が好きで自動車ライターになったんだし、自家用車で副業ができればラッキーだ。ただし、タクシー会社の下請けとして雇われるのは真っ平ごめん。もっと気楽に働きたい。
日本の制度は慎重すぎる!
そう考えているのだが、すでに都内のタクシー会社には、ライドシェアの応募者が殺到しているという。東京ハイヤー・タクシー協会によれば、4月のサービススタートの段階で、応募が1万人を超えていたそうだ。
日本でのライドシェアはあくまで副業としての認可で、前述のようにタクシー会社の管理下に置かれ、しかも営業できるのはタクシーが不足する時間帯のみ。ものすごく規制がキツイ。それでもこれだけ応募者がいるってことは、今後規制を緩めていけば、運転手不足解消の有効打にはなるんじゃないか? 「地方じゃムリ」という説もあるけれど、やってみないとわからない。
ライドシェアに関して日本で心配されているのは、未熟な運転手による事故の増加や顧客とのトラブルだ。アメリカではどうしているかというと、応募段階で事故歴や犯罪歴を調査し、営業開始後は客によるドライバーの評価が最大の指標となっている。『食べログ』の点数みたいなものですね。これが絶大な威力を発揮しており、タクシーよりむしろ安心でサービスもいいという意見もある。
タクシー事情は国ごと、地域ごとに異なるものだ。アメリカをはじめとしてカナダ、ブラジル、メキシコ、インドなどは、ウーバーのようなプラットフォームへの許可制で、プラットフォーム側がドライバーを選別するユルめのシステム(≒いわゆるライドシェア)だが、欧州はもっと規制が厳しく、個人タクシーの派生形(プライベートハイヤー)のみ許可されている。
日本には日本独自のシステムがあっていいと思うが、現在のシステムはあまりにも慎重すぎやしないだろうか? 世界一の高齢化と人口減少が進むなか、いずれは何らかのかたちで規制緩和すべきだろう。
ある程度規制が緩くなれば、自分も参入を考えたい。運転で人の役に立ってみたいし、感謝されてみたいんですよ! できればヨボヨボにならないうちに……。
(文=清水草一/写真=清水草一、webCG/編集=関 顕也)
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清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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