ハスクバーナ・ヴィットピレン401(6MT)/スヴァルトピレン401(6MT)
先駆者は進み続ける 2024.05.20 試乗記 独創的なデザインと刺激的な走りでファンをとりこにした、ハスクバーナのロードモデル「ヴィットピレン401」「スヴァルトピレン401」がフルモデルチェンジ。すべてが新しくなった400ccクラスのトレンドリーダーの実力を、スペイン・マラガで確かめた。今をときめく400ccクラスのトレンドリーダー
いま二輪市場の世界的トレンドである400ccカテゴリーに、新たなモデルが登場した。それがハスクバーナ・モーターサイクルズ(以下ハスクバーナMC)の新型ヴィットピレン401とスヴァルトピレン401だ。もっとも、この両モデルはトレンドのフォロワーではなく、トレンドをリードするモデルだった。
そもそもヴィットピレン/スヴァルトピレン401の誕生は、2018年のことで、当時からスタイルもパフォーマンスも突き抜けていた。ことスタイルについては、正確には2014年のEICMA(ミラノ国際モーターサイクルショー)でコンセプトモデルの「ヴィットピレン401」が登場したときから、そうだった。
当時はKTM傘下となったばかりのハスクバーナMCが、オフロードブランドから総合バイクブランドに変わることを印象づけるための“打ち上げ花火”的モデルだと考えられていた。バイクファンに限らず、デザインに一家言持つ層からも注目を集めるほど造形に優れ、かつそれが過去の二輪プロダクトとは異なるアプローチのものだったからだ。その意匠はKTMグループのデザインを一手に担うデザインカンパニー、KISKA(キスカ)が手がけ、プラットフォームはKTMのスポーツネイキッドモデルである「390デューク」と共有。高いパフォーマンスのエンジンとシャシー、そして最新のコンポーネンツを採用しながらも、目に見える機能パーツを減らし、ミニマルでクリーンなバイクをつくり上げるというコンセプトを、見事に体現していた。
そしてコンセプト発表から4年の月日を経て、ようやく市販モデルを発表。あまりにショーモデルがデザインコンシャスであったことから「やっぱり絵に描いたモチだったのね」と、市販化を待ち望んだバイクファンが諦めかけたときに、満を持しての市場投入だった。加えてファンを驚かせたのは、コンセプトモデルとほとんど変わらぬウルトラモダンなデザインのまま市販化されたこと、そしてカフェレーサースタイルのヴィットピレンに加え、プラットフォームを共有したスクランブラースタイルのスヴァルトピレン401もラインナップしてファミリーを形成したことであった。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
よりスムーズに、より力強く
今回試乗したヴィットピレン401とスヴァルトピレン401は、これが初となるフルモデルチェンジを受けた新型車である。エンジンは排気量を398.6ccに拡大。シリンダーヘッドやシフトまわりに大幅なアップデートを加え、フューエルインジェクションもソフトが新設計されている。そもそも単気筒エンジンのイメージを覆す高回転型だったエンジンは、これらのアップデートによって高回転域でのパンチと伸びやかさにさらに磨きがかかった。
特に5000rpmより上の領域では、カラダが後ろに置いていかれるような大排気量車の加速感とは異なり、重力がなくなり、ライダーを含め車重が軽くなったような、そんな加速感を味わえる。コーナーの出口でアクセルを開けると、車体がフワッと軽くなり、そこから強烈な加速を始め、その軽さが加速中ずっと続くのである。試乗ルートに含まれていた高速道路では160km/hからアクセルをひねればさらに加速していく。そんなパワフルなシングルエンジンこそが、ヴィットピレン/スヴァルトピレン401のパフォーマンスの中心にあるのだ。
またアップ/ダウンに対応したイージーシフト(クイックシフター)や、車体のバンク角を感知する3DセンサーからのデータをもとにしたMTC(トラクションコントロール)を装備。胸のすくような加速は、アップデートされたトランスミッションに加えて、これら電子制御技術の進化によっても実現している。試乗中、何度かMTCの作動を知らせるランプが5インチTFTカラーディスプレイのなかで点灯したが、その介入もスムーズであった。またPASC(パワー・アシスト・スリッパー・クラッチ)の採用による軽いクラッチの操作感と、減速時の車体挙動を抑え込んだ滑らかな加減速も印象的だった。このスムーズなフィーリングは、ハイペースを維持するワインディングロードはもちろん、頻繁にシフト操作を行う街なかでもしっかり感じることができた。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
“走り”にも寄与するデザインの進化
そしてスタイリングだ。燃料タンク容量の増大やエルゴノミクスの再構築によって、車体は旧401シリーズに比べて20%ほど拡大。しかし大きくなったことは、ライダーと車体の関係性をよりよい方向に進化させた。
新設計のリアフレームと車体右側にリアサスペンションを配するレイアウトによってシート下にスペースをねん出し、それにより低シート高を実現。ライダー乗車時の車体のバランスを再構築している。旧401シリーズでは、ライダーは重心よりもやや高い位置に座っていて、それはそれでダイナミックな操作感につながっていたのだが、シート高のダウンとマスの集中化が図られた新型401では、より車体との一体感を覚えさせる高いコントロール性を実現している。優れたデザイン性は維持したまま走りの質も高めるこの車体づくりは、さすがである。
加えて、燃料タンクまわりではシュモクザメの頭のような左右の張り出しを広げると同時に、それをより車体前方に移動。旧401シリーズのあとに登場した701シリーズにデザインが近づいた。また新型401の直後に発表されたスヴァルトピレン801も、その701シリーズのデザインを踏襲。401シリーズと801シリーズは意匠が統一されつつある。今後はハスクバーナMC内のデザインイメージがより強固なものとなり、同時にモデルの再編が行われるものと考えられる。
独創のデザインと高いパフォーマンスにより、ツウ好みのモデルとして知られていたヴィットピレン/スヴァルトピレン401は、新型では扱いやすさも手に入れ、よりマルチなマシンに進化した。これなら個性豊かなモデルが存在する400ccカテゴリーにおいても、高い存在感を発揮することだろう。
(文=河野正士/写真=ハスクバーナ・モーターサイクルズ/編集=堀田剛資)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
ハスクバーナ・ヴィットピレン401
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=--×--×--mm
ホイールベース:1368mm
シート高:820mm
重量:154.5kg(燃料を除く)
エンジン:398.6cc 水冷4ストローク単気筒DOHC 4バルブ
最高出力:45PS(33kW)/8500rpm
最大トルク:39N・m(4.0kgf・m)/7000rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:3.4リッター/100km(約29.4km/リッター)
価格:79万9000円
拡大 |
ハスクバーナ・スヴァルトピレン401
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=--×--×--mm
ホイールベース:1368mm
シート高:820mm
重量:159kg(燃料を除く)
エンジン:398.6cc 水冷4ストローク単気筒DOHC 4バルブ
最高出力:45PS(33kW)/8500rpm
最大トルク:39N・m(4.0kgf・m)/7000rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:3.4リッター/100km(約29.4km/リッター)
価格:79万9000円

河野 正士
フリーランスライター。二輪専門誌の編集部において編集スタッフとして従事した後、フリーランスに。ファッション誌や情報誌などで編集者およびライターとして記事製作を行いながら、さまざまな二輪専門誌にも記事製作および契約編集スタッフとして携わる。海外モーターサイクルショーやカスタムバイク取材にも出掛け、世界の二輪市場もウオッチしている。
-
シトロエンC3ハイブリッド マックス(FF/6AT)【試乗記】 2025.10.31 フルモデルチェンジで第4世代に進化したシトロエンのエントリーモデル「C3」が上陸。最新のシトロエンデザインにSUV風味が加わったエクステリアデザインと、マイルドハイブリッドパワートレインの採用がトピックである。その仕上がりやいかに。
-
メルセデス・マイバッハSL680モノグラムシリーズ(4WD/9AT)【海外試乗記】 2025.10.29 メルセデス・ベンツが擁するラグジュアリーブランド、メルセデス・マイバッハのラインナップに、オープン2シーターの「SLモノグラムシリーズ」が登場。ラグジュアリーブランドのドライバーズカーならではの走りと特別感を、イタリアよりリポートする。
-
ルノー・ルーテシア エスプリ アルピーヌ フルハイブリッドE-TECH(FF/4AT+2AT)【試乗記】 2025.10.28 マイナーチェンジでフロントフェイスが大きく変わった「ルーテシア」が上陸。ルノーを代表する欧州Bセグメントの本格フルハイブリッド車は、いかなる進化を遂げたのか。新グレードにして唯一のラインナップとなる「エスプリ アルピーヌ」の仕上がりを報告する。
-
メルセデスAMG S63 Eパフォーマンス(4WD/9AT)【試乗記】 2025.10.27 この妖しいグリーンに包まれた「メルセデスAMG S63 Eパフォーマンス」をご覧いただきたい。実は最新のSクラスではカラーラインナップが一気に拡大。内装でも外装でも赤や青、黄色などが選べるようになっているのだ。浮世離れした世界の居心地を味わってみた。
-
アウディA6スポーツバックe-tronパフォーマンス(RWD)【試乗記】 2025.10.25 アウディの新しい電気自動車(BEV)「A6 e-tron」に試乗。新世代のBEV用プラットフォーム「PPE」を用いたサルーンは、いかなる走りを備えているのか? ハッチバックのRWDモデル「A6スポーツバックe-tronパフォーマンス」で確かめた。
-
NEW
これがおすすめ! 東4ホールの展示:ここが日本の最前線だ【ジャパンモビリティショー2025】
2025.11.1これがおすすめ!「ジャパンモビリティショー2025」でwebCGほったの心を奪ったのは、東4ホールの展示である。ずいぶんおおざっぱな“おすすめ”だが、そこにはホンダとスズキとカワサキという、身近なモビリティーメーカーが切り開く日本の未来が広がっているのだ。 -
NEW
第850回:10年後の未来を見に行こう! 「Tokyo Future Tour 2035」体験記
2025.11.1エディターから一言「ジャパンモビリティショー2025」の会場のなかでも、ひときわ異彩を放っているエリアといえば「Tokyo Future Tour 2035」だ。「2035年の未来を体験できる」という企画展示のなかでもおすすめのコーナーを、技術ジャーナリストの林 愛子氏がリポートする。 -
NEW
2025ワークスチューニンググループ合同試乗会(前編:STI/NISMO編)【試乗記】
2025.11.1試乗記メーカー系チューナーのNISMO、STI、TRD、無限が、合同で試乗会を開催! まずはSTIの用意した「スバルWRX S4」「S210」、次いでNISMOの「ノート オーラNISMO」と2013年型「日産GT-R」に試乗。ベクトルの大きく異なる、両ブランドの最新の取り組みに触れた。 -
小粒でも元気! 排気量の小さな名車特集
2025.11.1日刊!名車列伝自動車の環境性能を高めるべく、パワーユニットの電動化やダウンサイジングが進められています。では、過去にはどんな小排気量モデルがあったでしょうか? 往年の名車をチェックしてみましょう。 -
これがおすすめ! マツダ・ビジョンXコンパクト:未来の「マツダ2」に期待が高まる【ジャパンモビリティショー2025】
2025.10.31これがおすすめ!ジャパンモビリティショー2025でwebCG編集部の櫻井が注目したのは「マツダ・ビジョンXコンパクト」である。単なるコンセプトカーとしてみるのではなく、次期「マツダ2」のプレビューかも? と考えると、大いに期待したくなるのだ。 -
これがおすすめ! ツナグルマ:未来の山車はモーターアシスト付き【ジャパンモビリティショー2025】
2025.10.31これがおすすめ!フリーランサー河村康彦がジャパンモビリティショー2025で注目したのは、6輪車でもはたまたパーソナルモビリティーでもない未来の山車(だし)。なんと、少人数でも引けるモーターアシスト付きの「TSUNAGURUMA(ツナグルマ)」だ。















