超小型モビリティーはどうあるべきか?

2024.06.04 あの多田哲哉のクルマQ&A 多田 哲哉
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数年前、ラストワンマイルをカバーする便利な乗り物として、さまざまな超小型モビリティーが提案されたと記憶していますが、普及が進んでいるようにも見えません。こうした乗り物は、今後どうあるべきでしょうか? 輸送機器の開発者としての意見をお聞かせください。

確かに、いろんな超小型モビリティーが出てきましたが、なかなか「これだ!」という感じにはなっていませんね。

これまで提案されてきたモビリティーというのは結局、人間が乗って、人間を運ぶという“ヒトとは別体のモノ”じゃないですか。私は、そのカタチである限りは、本命といえるものは出てこない気がしています。

そういう用途であれば、既存の自動車でも満たせてはいる。駐車場がないからとか、使っていないときの置き場所に困るのでなるべく小さく……というニーズはあるでしょうが、そこにとどまっている限り、これ以上のものになることはないでしょう。

思うに、理想は、もっと直接的に人間自体の機能を上げるもの……つまり、介護用に使われる、体に装着して使うパワースーツのようなもの。人間そのものが何倍もパワーアップして楽に自由に移動できるようになる装具こそが、ラストワンマイルをサポートするアイテムになっていくんじゃないでしょうか。

「もっと速く動けるようになる」とか、「かなり重い物を持ったまま、1kmくらいなら楽に歩けます」みたいな。そういうことを可能にする道具の開発は、着実に進んでいるはずです。

これは移動の困難をどう補うかの話ですから、「なにかに乗って」じゃなくていい。そもそも若くて元気な人には、このラストワンマイルの話はさほど意識されないんですよ(笑)。

それに、“ラストワンマイル”なんていうけれど、自宅を含め、目的地に着いたら着いたで、階段その他、さらなるハードルもいろいろとあるのが現実ですからね!

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多田 哲哉

多田 哲哉

1957年生まれの自動車エンジニア。大学卒業後、コンピューターシステム開発のベンチャー企業を立ち上げた後、トヨタ自動車に入社(1987年)。ABSやWRカーのシャシー制御システム開発を経て、「bB」「パッソ」「ラクティス」の初代モデルなどを開発した。2011年には製品企画本部ZRチーフエンジニアに就任。富士重工業(現スバル)との共同開発でFRスポーツカー「86」を、BMWとの共同開発で「GRスープラ」を世に送り出した。トヨタ社内で最高ランクの運転資格を持つなど、ドライビングの腕前でも知られる。2021年1月に退職。