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レクサスNX350“Fスポーツ”(4WD/8AT)

突きつけられた難問 2024.06.29 試乗記 サトータケシ 日本のみならず世界でも人気の「レクサスNX」のマイナーチェンジモデルが登場。走りと装備を進化させたいっぽうで、デザインの変更は最小限。最近のレクサスらしい質実剛健な進化を遂げたといえるだろう。2.4リッターターボの「NX350“Fスポーツ”」を試す。
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スポーティーなキャラの350

レクサスNX350“Fスポーツ”と対面して思うことはふたつ。

まず、大きすぎず、小さすぎず、日本で乗るにはほどよいサイズ感だ。全長は4660mmで、基本骨格を同じくするトヨタの「ハリアー」や「RAV4」と同等。コインパーキングにもすんなり止められるいっぽうで、後席と荷室のスペースには余裕があるから家族や仲間とアクティビティーを楽しむのに好適だ。

もうひとつ、オプションの「ソニックカッパー」というボディーカラーが目を引くことと合わせて、塗装の質がいい。クルマに興味があろうがなかろうが、誰が見てもいいものだと分かるぐらいのオーラを放っている。ちなみにボディーカラーの価格は税込み16万5000円なり。

すでに案内されているように、2021年に発表された2代目レクサスNXは、2024年春にマイナーチェンジが施されると同時に、アウトドア志向を強めた“オーバートレイル”という仕様が加わっている。ここでレクサスNXのパワートレインのラインナップをおさらいしておくと、「NX450h+」が2.5リッターのプラグインハイブリッド、「NX350h」が2.5リッターのハイブリッド、NX350が2.4リッターターボ、そして「NX250」が2.5リッター自然吸気という4種類になる。

それぞれのキャラクターをざっくりと説明すれば、450h+がプレミアムでラグジュアリー、350hが好バランス、350がスポーティー、250がベーシック、というあたりか。350hと250はFFと4WDの駆動方式が選べるけれど、450h+と350は4WDのみの設定となる。

ホワイトの内装は“Fスポーツ”専用で、サイドが張り出した形状でドライバーの体をホールドするスポーツシートと、グリップしやすいように形状が工夫されているステアリングホイールも“Fスポーツ”専用。外観だけでなく、インテリアからも特別な雰囲気が伝わってくる。

「レクサスNX」のマイナーチェンジモデルが発売されたのは2024年2月29日のこと。2024年6月末時点での納期は「NX350“Fスポーツ”」(今回の試乗車)の場合で2~2.5カ月とされている。
「レクサスNX」のマイナーチェンジモデルが発売されたのは2024年2月29日のこと。2024年6月末時点での納期は「NX350“Fスポーツ”」(今回の試乗車)の場合で2~2.5カ月とされている。拡大
「NX350“Fスポーツ”」の価格は630万6000円へと30万円ほど高くなったが、三眼フルLEDヘッドランプ+アダプティブハイビームなどの標準装備化が図られている。
「NX350“Fスポーツ”」の価格は630万6000円へと30万円ほど高くなったが、三眼フルLEDヘッドランプ+アダプティブハイビームなどの標準装備化が図られている。拡大
細かいことだがリアのドアオープナー内側に照明が付いた。以前はフロントのみの搭載だった。
細かいことだがリアのドアオープナー内側に照明が付いた。以前はフロントのみの搭載だった。拡大
ウインドシールドの基部にはVINコードを刻んだプレートを追加。盗難・不正売買を予防するための措置で、輸入車を中心に採用が広がっている。
ウインドシールドの基部にはVINコードを刻んだプレートを追加。盗難・不正売買を予防するための措置で、輸入車を中心に採用が広がっている。拡大
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感性に心地よいチューニング

走りだしてすぐに好ましく感じるのは、直列4気筒2.4リッターターボエンジンの気持ちよさ。正直、極低回転域をモーターでアシストする最新のハイブリッド車に比べると、ゼロ発進からのタイヤのひと転がり、ふた転がりの滑らかさは劣る。けれどもそこから先、エンジン回転が上がるにつれて力感がみなぎり、レスポンスもよくなるあたりに、「アクセルを踏んだかいがあった」と納得する。クルマが勝手にスピードを上げるのではなく、ドライバーが関わっているという実感がある。直4ターボだから快音とはいかないけれど、それでも健康的で抜けのよい音も耳に心地よい。

8段ATとの連携も含めて、アクセルをこれだけ踏むとこれくらい速度が上昇するといった相関関係が、人間の感性に心地よくなるようにチューニングされている。と、ここまで書いて、生まれて初めて乗ったクルマが電気自動車だったりハイブリッド車だったり、電流が流れた瞬間に最大の力を発揮できるモーターを搭載したクルマしか知らないという方は、このフィーリングをどう感じるのか、不安になる。

「人間の感性に心地よくなるようにチューニングされている」と書きましたが、「エンジン大好き人間の感性に心地よくなるようにチューニングされている」に改めたい。

8段ATは素早く、シームレスに変速するというだけでなく、「もうちょっと加速したい」というアクセル操作を敏感に察知して、ギアを落としてエンジン回転を高めてくれる。ステアリングホイールにはシフトパドルが備わっているけれど、街なかや高速道路を気持ちよく走るぐらいなら、パドルを操作せずとも、意中のギアを選択してくれる。トランスミッションの中で、先回り、先回りして仕事をこなす、有能な執事が仕事をしているようだ。

フロントに横置きで搭載される2.4リッター4気筒ターボエンジンは最高出力279PS、最大トルク430N・mを発生する。
フロントに横置きで搭載される2.4リッター4気筒ターボエンジンは最高出力279PS、最大トルク430N・mを発生する。拡大
チャコールグレーと塗り分けられたホワイトは“Fスポーツ”専用内装。シート表皮は本革で、前席にはヒーターもベンチレーションも備わっている。
チャコールグレーと塗り分けられたホワイトは“Fスポーツ”専用内装。シート表皮は本革で、前席にはヒーターもベンチレーションも備わっている。拡大
後席は足元にも頭上にも十分な広さが確保されている。リアピラーに三角の窓が設けられているのが開放感に効いている。
後席は足元にも頭上にも十分な広さが確保されている。リアピラーに三角の窓が設けられているのが開放感に効いている。拡大
ステアリングホイールは“Fスポーツ”専用デザイン。ディンプルレザーはリムの両サイドとともにシフトセレクターにも用いられる。
ステアリングホイールは“Fスポーツ”専用デザイン。ディンプルレザーはリムの両サイドとともにシフトセレクターにも用いられる。拡大

足並みがそろったコーナリング

タウンスピードでの乗り心地は、スポーティーだ。硬いというよりもドライという言葉で表現したくなる類いのもので、ボディーがしっかりしていてサスペンションもよく動くから不快ではないものの、路面からのショックはそれなりに伝えてくる。けれども、乗り心地をそれだけで評価しても意味はないだろう。伸びやかに回転を上げるエンジンをアクセルペダルで操り、乾いた排気音を耳にしながらステアリングホイールを操作すると、足まわりのスポーティーなセッティングがしっくりくる。乗り心地はドライだけれど、クルマのキャラに合っている。

ワインディングロードでは、「足並みがそろう」という感覚を味わう。例えばタイトなコーナーに進入する際、4本の足それぞれが独立して動きながら、結果としてフラットな姿勢を保つ。

“Fスポーツ”に標準装備の「AVS(アダプティブバリアブルサスペンション)」は、4輪のショックアブソーバーの減衰力をそれぞれ独立して制御する仕組みであるけれど、これと状況に応じて前後のトルク配分を75:25~50:50の間で可変する4駆システムの連携によって、足並みがそろった感覚を伝えるのだろう。

不思議なのは、コーナーに進入するターンインの状態では軽やかな動きのクルマだと感じるのに、コーナーを脱出する際にはどっしりとした安定感が得られることだ。4WDのトルク配分によるものなのか、AVSによるものなのか、もちろんすべての要素が関わっているのだろうけれど、新鮮なファントゥドライブを感じた。

マイナーチェンジでボディー後部の変形を抑制するブレースなどが追加され、ボディー剛性がアップ。足まわりのチューニングも見直され、実際に走りのステージが一段上がっている。
マイナーチェンジでボディー後部の変形を抑制するブレースなどが追加され、ボディー剛性がアップ。足まわりのチューニングも見直され、実際に走りのステージが一段上がっている。拡大
ドライブモードは「エコ」「ノーマル」「スポーツ」「スポーツ+」と「カスタム」の全5種類が選べる。
ドライブモードは「エコ」「ノーマル」「スポーツ」「スポーツ+」と「カスタム」の全5種類が選べる。拡大
「カスタム」モードではパワートレインとサスペンション、ステアリング、エアコンを個別にセッティングできる。
「カスタム」モードではパワートレインとサスペンション、ステアリング、エアコンを個別にセッティングできる。拡大
センタースクリーンに4WDの前後トルク配分を表示。かつては「いらすとや」のような簡素な図柄だったが、だいぶ立派に変わった。タイヤのツヤまで表現されている。
センタースクリーンに4WDの前後トルク配分を表示。かつては「いらすとや」のような簡素な図柄だったが、だいぶ立派に変わった。タイヤのツヤまで表現されている。拡大

動力性能か燃費か

プリクラッシュセーフティーや追従型のクルーズコントロールなどは最新のものが備わるけれど、感心したのが「アドバンストパーク」という駐車支援機能だった。縦列駐車も車庫入れもスムーズで、レクサスに限らずこれまでの駐車支援機能は「自分でやるほうが早いよ!」になったけれど、これなら積極的に使いたいと思う。駐車スペースを発見・確認する一連の流れがスムーズで、そこからはクルマにお任せ。専用のアプリをダウンロードすればリモートでも操作可能とのことで、これくらい正確に作動するならリモート駐車も現実的かも、と思わされた。

ひとつ残念だったのが、そんなにエンジンをブン回したわけでもないのに、車載計による燃費がふたケタに届かなかったこと。ちなみにレクサスによると、プラグインハイブリッドとハイブリッドを足したNXの電動化率はグローバルで56%を超えているという。レクサスNXの2台に一台以上がモーターを積んでいるのだ。

WLTCモードの燃費を比較すると、NX450h+が19.6km/リッター、NX350hが19.9km/リッター、NX350が11.7km/リッター(“Fスポーツ”の4WDで比較)。プラグインハイブリッドのNX450h+はオプションなしでも749万5000円~と価格帯が異なるけれど、NX350hとNX350は価格が接近している。

直4ターボのパンチの効いた爽快な加速を選ぶのか、優秀なハイブリッドシステムによる燃費を選ぶのか。お金の話が続きますが、税込み24万4200円なりのオプションの“マークレビンソン”プレミアムサラウンドサウンドシステムの素晴らしい音質で音楽を聴きながら、自分ならハイブリッドと純エンジンのどちらを選ぶかを考える。けれど、結局、答えは出なかった。これは相当に難しい選択で、クルマや運転が好きな人ほど頭を悩ませるのではないか。

(文=サトータケシ/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)

WLTCモードの燃費は11.7km/リッターで、今回のテストを通しての燃費は9.9km/リッター。モード燃費との差は小さかったが、最新のトヨタ/レクサス車としてはちょっと物足りない。
WLTCモードの燃費は11.7km/リッターで、今回のテストを通しての燃費は9.9km/リッター。モード燃費との差は小さかったが、最新のトヨタ/レクサス車としてはちょっと物足りない。拡大
荷室の容量は520~1411リッター。後席背もたれの電動操作機能は後席用シートヒーターとセットのオプション(7万7000円)。
荷室の容量は520~1411リッター。後席背もたれの電動操作機能は後席用シートヒーターとセットのオプション(7万7000円)。拡大
荷室床下には大容量の収納ボックスが備わる。折りたたんだトノカバーをしまっておけるのも素晴らしい。
荷室床下には大容量の収納ボックスが備わる。折りたたんだトノカバーをしまっておけるのも素晴らしい。拡大
タイヤはランフラットが標準ながら、この試乗車はオプションのノーマルタイヤとパンク修理キットの組み合わせをチョイスしていた。オレンジのブレーキキャリパーもオプション。
タイヤはランフラットが標準ながら、この試乗車はオプションのノーマルタイヤとパンク修理キットの組み合わせをチョイスしていた。オレンジのブレーキキャリパーもオプション。拡大

テスト車のデータ

レクサスNX350“Fスポーツ”

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4660×1865×1660mm
ホイールベース:2690mm
車重:1780kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.4リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:279PS(205kW)/6000rpm
最大トルク:430N・m(43.8kgf・m)/1700-3600rpm
タイヤ:(前)235/50R20 104V/(後)235/50R20 104V(ブリヂストン・アレンザ001)
燃費:11.7km/リッター(WLTCモード)
価格:630万6000円/テスト車=721万0200円
オプション装備:ボディーカラー<カッパーソニック>(16万5000円)/“Fスポーツ”専用オレンジブレーキキャリパー<フロント「LEXUS」ロゴ>(4万4000円)/235/50R20 104Vタイヤ&20×7 1/2“Fスポーツ”専用アルミホイール<ブラック塗装>+パンク修理キット(-2万2000円)/ドライブレコーダー<前後>(4万2900円)/ITSコネクト(2万7500円)/デジタルインナーミラー(4万4000円)/デジタルキー(3万3000円)/おくだけ充電(1万3200円)/ルーフレール+パノラマルーフ<IR・UVカット機能付き/チルト&アウタースライド式>(20万9000円)/後席6:4分割可倒式シート<電動格納機能付き>+後席シートヒーター(7万7000円)/“マークレビンソン”プレミアムサラウンドサウンドシステム(24万4200円)/寒冷地仕様<LEDフォグランプ・ウインドシールドデアイサー等>(2万6400円)

テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:724km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:284.7km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:9.9km/リッター(車載燃費計計測値)

レクサスNX350“Fスポーツ”
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サトータケシ

サトータケシ

ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。

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