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「RAV4」も「ハリアー」も「クラウン」も トヨタの売れ筋モデルを生み出す「GA-K」プラットフォームの持つすごみ

2025.06.04 デイリーコラム 世良 耕太
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新型「RAV4」の走りのよさを予感させるGA-K

トヨタは2015年12月に発表した4代目「プリウス」から、「TNGA」と呼ぶクルマづくりのための新しい設計思想を導入した。TNGAとは「Toyota New Global Architecture(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)」の頭文字をつなげたものだ。このうち、プラットフォームを小さなほうから「GA-B」「GA-C」「GA-K」「GA-L」「GA-F」として設定している。GAは「Global Architecture」の頭文字をつなげたものだ。

GA-B(「ヤリス」など)とGA-C(プリウスなど)はエンジン横置きプラットフォーム。GA-Kはエンジン横置きで最も大きなプラットフォームである。GA-Lは「レクサスLS」や「クラウン セダン」などエンジン縦置きパワートレイン用。GA-Fは「ランドクルーザー」などフレーム車のプラットフォームだ。

GA-Kは2017年の「カムリ」を手始めに展開が拡大している。直近ではクラウン、「アルファード/ヴェルファイア」、そして、発表になったばかりの新型「RAV4」がGA-Kだ(現行も)。ちょっとさかのぼれば「ハリアー」がそうだし、レクサスでは「NX」や「RX」がGA-Kである。最近のトヨタ車はおしなべて走りがいいが、GA-Kも例外ではない。新型RAV4の走りを確かめるのは当分先になりそうだが、きっといいに違いないと思わせるだけの実績をトヨタは築いている。

2025年5月21日に世界初公開された6代目「トヨタRAV4」。シャシーは先代に続いて「GA-K」を使うが、ねじり剛性の強化などが図られている。
2025年5月21日に世界初公開された6代目「トヨタRAV4」。シャシーは先代に続いて「GA-K」を使うが、ねじり剛性の強化などが図られている。拡大
ヒットモデルが立て続けに輩出する「GA-K」プラットフォームは2017年の10代目「カムリ」が初出だ。
ヒットモデルが立て続けに輩出する「GA-K」プラットフォームは2017年の10代目「カムリ」が初出だ。拡大
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時代の要求に応じる柔軟性

GA-Kには3つのバリエーションがある。すなわち、低床(セダン)、中床(ミニバン)、高床(SUV)だ。カムリやクラウン(セダンを除く)は低床、アルヴェルは中床、ハリアーやRAV4は高床のGA-Kというわけだ。

TNGAは増え続けて手に負えなくなりつつあったプラットフォームを整理し、開発と生産の効率を引き上げるために生まれた。開発と生産の効率が上がれば、商品力も上がるというわけである(最初の機種であるプリウスが発表されてからほぼ10年、実際、そうなっているように感じられる)。成功の秘訣(ひけつ)は、TNGAを設定した当時に将来を見通す確かな目があったこと。そして、あれはだめ、これはだめと厳しい制約を設けず、柔軟性を持たせて進化させたことである(と筆者は考える)。

例えば、将来的にはボンネットフードを下げたい、下げたクルマの商品力が高くなると考えたとする。その場合、車体骨格で対応するだけでは不十分で、背の低いエンジンを開発する必要がある。将来、どんなクルマをつくるのか、そのとき、どんなパワートレインを搭載するのか、視界はどうするのか、ドライビングポジションはどうするのか、タイヤのサイズはどうするのか、後席の広さはどうか、操縦安定性や乗り心地はどこを狙うのか、NVH(音・振動・ハーシュネス)はどうするのか、安全性能はどこまで担保するのか……。

将来のあるべき姿から狙いとする性能や機能を検討し、それを実現するための技術や諸元に落とし込んでいく。性能は高めるし、さらに進化させる余地を残しておきながら、同一プラットフォーム内だけでなく、プラットフォームをまたいで部品を共用できるように考えておく。コストだけを考えるなら部品の共用化率を高めればいいが、走りを重視した「もっといいクルマ」を提供するためには、共用化は必ずしも最適解とはなりえない。

今やライバル不在の地位にまで上り詰めた「アルファード/ヴェルファイア」は中床タイプの「GA-K」を使う。ドライバビリティーも後席の乗り心地も先代モデルから飛躍的に進化している。
今やライバル不在の地位にまで上り詰めた「アルファード/ヴェルファイア」は中床タイプの「GA-K」を使う。ドライバビリティーも後席の乗り心地も先代モデルから飛躍的に進化している。拡大
オート上海2025(上海モーターショー2025)で世界初公開された新型「レクサスES」も「GA-K」を継続採用。各部のブラッシュアップに加えて、電気自動車化にも対応したのがトピックだ。
オート上海2025(上海モーターショー2025)で世界初公開された新型「レクサスES」も「GA-K」を継続採用。各部のブラッシュアップに加えて、電気自動車化にも対応したのがトピックだ。拡大

「もっといいクルマ」への執念

GA-Kのリアサスペンションはトレーリングウイッシュボーンと呼ぶダブルウイッシュボーン式で前後方向に配したトレーリングアームを持つのが基本。このトレーリングアームで横方向の剛性を確保できるので、アッパーアームの負担が減り、剛性確保面では不利な形状で成立させることができている。低床フロアが実現できているのは、この形式のおかげでもある。アルヴェルはこの恩恵を最も受けているクチだ。

一方で、クラウンシリーズ(セダンを除く)はトレーリングアームを持たない、横方向のリンクだけで構成するマルチリンク式のリアサスペンションを新たに開発し、採用した。シリーズで共通して採用するリアモーターの大きな駆動力を受け止めるためである。サスペンション形式と合わせて変更したサブフレームは、剛性の確保と上質な乗り心地を実現するため、前後間の距離を大きくとっている。

アルヴェルにしても既存のGA-Kでは室内長が確保できないため、1mm単位の調整を積み重ねてステアリング位置を約70mm前に出した。また、最小回転半径を目標値に到達させるため、サスペンションや操舵系の組付工程にまで踏み込んで調整し、目標を達成した。「もっといいクルマ」にするための執念である。

大っぴらにアナウンスはしていないが、クラウンシリーズの最初に登場した「クロスオーバー」にはボディー剛性を向上する狙いの構造用接着材は適用されておらず、商品改良時にしれっと入れた。クロスオーバーの後で市場投入した「スポーツ」と「エステート」には最初から入っている。クラウンの開発陣はモデルライフを通じて熟成していくこのような開発を「スパイラルアップ活動」と呼んでいる。

GA-Kプラットフォームはもはや初期のGA-Kではなく、スパイラルアップによって相当に熟成が進み、技術進化によって質が高まっているに違いない。そして新型RAV4にも、「もっといいクルマ」にするための、こだわりの技術が投入されているはずである。

(文=世良耕太<Kota Sera>/写真=トヨタ自動車/編集=藤沢 勝)

「セダン」以外の新型「クラウン」シリーズは全モデルが「GA-K」を使った4WDモデルだ。
「セダン」以外の新型「クラウン」シリーズは全モデルが「GA-K」を使った4WDモデルだ。拡大
トヨタブランドの最上級ショーファーカー「センチュリー」も前輪駆動ベースの「GA-K」を使っている(セダンは別)。
トヨタブランドの最上級ショーファーカー「センチュリー」も前輪駆動ベースの「GA-K」を使っている(セダンは別)。拡大
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