スズキの新型コンパクトSUV「フロンクス」 その姿を海外情報から想像する
2024.07.12 デイリーコラム実は公開済みだった「フロンクス」の姿
2024年7月1日、スズキは新型コンパクトSUV「フロンクス」の先行情報を公開した。専用ウェブサイトでフロンクスのエクステリア(の一部)がお披露目されたのだ。あわせて「2024年の秋ごろの日本での発売を予定」していることも表明しており、今後も随時、専用サイトにおいて続報を発表するという。いわゆる正式販売を前にしたティザーがスタートしたことになる。
ではフロンクスとは、具体的にはどのようなクルマなのだろうか? すでに公開されている情報をまとめてみたい。
最初にフロンクスが世に出たのは、2023年1月のインドのモーターショー「Auto Expo(オートエキスポ)2023」でのことだ。ティザーではまだチラ見せの域を出ないが、なんと1年半も前に、その姿は明らかにされていたのだ。また資料によると、「力強さと流麗さを際立たせた新しいクーペスタイルと取りまわしのよさを備えた、新ジャンルのSUVです」と紹介され、「2023年度からインドでの発売と、アフリカ・中南米への輸出の予定」であることが発表されている。
そこで公開されたスペックは以下のようなものだった。
- ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3995×1765×1550mm
- ホイールベース:2520mm
- エンジン:1リッター直噴ターボ(マイルドハイブリッド)/1.2リッターガソリン(アイドリングストップシステム搭載)
- トランスミッション:5段MT&6段AT(1リッターターボ)/5段MT&AGS(1.2リッター)
加えて、上質感のある内装を備え、全方位モニターやヘッドアップディスプレイ、ワイヤレスチャージャーなどを装備するという。
スペックを見ればいわゆるBセグメント相当のコンパクトSUVとなるが、クーペ風のフォルムを特徴とし、また上質感や快適装備などがアピールされていることから、インドなどのマーケットで上級モデルの位置に据えられるクルマであることが察せられた。
インドではプレミアムモデルという扱い
実際、インドにおいてフロンクスは、スズキの上級車種販売チャンネルであるNEXA(ネクサ)で取り扱われている。価格は1.2リッターが75万1500ルピー(約145万円)~93万8000ルピー(約180万円)、1リッター直噴ターボが97万2500ルピー(約187万円)~128万7500ルピー(約248万円)だ。この価格は、同じネクサで取り扱われるコンパクトハッチバック「バレーノ」よりも上で、SUVの「グランドビターラ」「ジムニー5ドア」よりも下という位置づけだ。ネクサのラインナップのなかでは中位のポジションといえるだろう。
ちなみに、南アフリカのスズキの公式サイトを見ると、かの地で販売されるフロンクスには1.5リッターエンジンが搭載されている。トランスミッションは5段MTと4段ATとなる。こちらの価格は29万7900ランド(約262万円)~35万4900ランド(約312万円)だ。関税などもあるのだろう。それなりの価格になっている。
そんなフロンクスは、2023年の発売の後、いくつもの賞を得ている。先述のスズキの先行情報サイトを見ると、南アフリカでは「2024 The Best Car of the Year」、インドでは「2023 Design of the Year(Jagran HiTech)」「2024 Best Design and Styling(Autocar India)」「2024 Compact Car of the Year(car&bike)」「2024 Car of the Year(T3)」「2024 Design of the Year(ABP Auto)」を受賞しているというのだ。賞の半分がデザイン関連のものということで、インドでは特にデザインの評価が高いようだ。
では、そんなフロンクスが日本で販売されるとなれば、どのような仕様になるのだろうか?
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気になるのはパワートレインの設定と値段
まず言えるのは、AGS(オートギアシフト)は考えづらいということだ。AGSはいわゆるロボタイズドMTで、構造がシンプルで安価という魅力はあるものの、変速フィールが独特で、日本市場では肯定的に受け止められにくい。そういう意味で、マイルドハイブリッドの1リッター直噴ターボに6段ATという組み合わせが、最も受け入れられやすいのではないだろうか。
また、インドにも南アフリカにもフロンクスの4WDは存在していない。海も山も降雪地域もある日本市場では4WDは欲しいところだが、果たしてそれだけのために4WDを開発するのか? 「スイフト」用の4WDを流用するという手法もあるが、その場合は同じBセグメントに属するスイフトの1.2リッター+CVTのパワートレインとなる可能性もある。いずれにせよ、パワートレインの設定がどうなるかは要注目だろう。
装備に関していえば、インド仕様にある全方位モニター(いわゆるアラウンドビューモニター的なもの)とヘッドアップディスプレイ、ワイヤレスチャージャーは当然、日本仕様にも採用されるはず。また衝突被害軽減自動ブレーキ(AEB)はインド仕様にはないけれど、日本では法規的に必須となる。恐らくは現行スイフトに装備される「スズキセーフティーサポート」と同等の機能のものがフロンクスにも採用されるはずだ。アダプティブクルーズコントロール(ACC)や車線逸脱抑制機能なども備わることだろう。
最後に気になるのは価格だ。現行スイフトの日本での販売価格は、172万7000円~。そして「ジムニーシエラ」の価格が196万2400円~となっている。いっぽうライバルを見ると、同じインド生産のコンパクトSUV「ホンダWR-V」は209万8800円~であり、BセグメントのベストセラーSUV「トヨタ・ヤリス クロス」は190万7000円~、「トヨタ・ライズ」は171万7000円~となる。
車格を考えると、フロンクスは3ドアのジムニーシエラやスイフトよりも上になるため、スズキとしては200万円を超えた値づけにしたいはず。しかしながら、ライバルの存在を考えると、戦略的に190万円くらいとする可能性もある。どちらにせよ、BセグメントのコンパクトSUVとして、それほど高額にはならないだろう。コスパのよいSUVとして人気モノになることに期待したい。
(文=鈴木ケンイチ/写真=スズキ/編集=堀田剛資)

鈴木 ケンイチ
1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。
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