メルセデス・ベンツCLE200カブリオレ スポーツ(FR/9AT)
大切にしよう 2024.08.06 試乗記 「メルセデス・ベンツCLE」のオープントップバージョン、その名も「CLEカブリオレ」が日本に上陸。ご覧のとおりあいにくの空模様ながら、雨雲の隙間を縫って幌(ほろ)を開け、つかの間のオープンエアモータリングを味わってみた。メルセデス・ベンツ唯一のオープン
「CLEクーペ」に続いて2024年6月に導入されたCLEカブリオレは、メルセデス・ベンツブランドとしては現在唯一のオープントップモデルであるという。セダンやクーペの凋落(ちょうらく)ぶりは今に始まったことではないけれど、陽光大好きであんなにオープンモデルに執着していたドイツ勢も背に腹は代えられないというわけか。いつの間にそんなことになったのかと驚くばかりだ。
ちょっと前までは「Cクラス」や「Eクラス」だけでなく、「Sクラス」にも豪勢極まりないカブリオレがあったのに(「SL」などはメルセデスAMGブランドなので別扱い)、おしゃれでカッコいいクルマはもう求められていないのか、あるいはおしゃれやカッコいいという言葉の意味が以前とは違ってしまっているのか。超高価格帯ラグジュアリーセグメントでは豪勢なオープンカーはまだいくつも存在するが、実用性も考慮するならいっそSUV、が世界の常識ということなのだろうけれど、何とも寂しい限りである。
「Cクラス クーペ」と「Eクラス クーペ」を統合してCLEとしたクーペモデルが先に登場しているが、CLEカブリオレはそのカブリオレバージョンである。本国ではディーゼルも6気筒ガソリンエンジンも用意されており、近い将来にはプラグインハイブリッドの追加も予定されているが、今のところ日本仕様は2リッターガソリン4気筒ターボ搭載の「CLE200カブリオレ スポーツ」のみのモノグレードである。
Cクラス寄りのCLE
「カブリオレは幌を上げた姿がカッコよくなくてはダメだ」とかつて徳大寺さんは口癖のように言っていたが、このCLEカブリオレは巨匠からも及第点をもらえるはずだ。ボディー全体に対してキャビン部分が薄くコンパクトで、いかにもだてでエレガントなプロポーションを持つ。CとEを統合したといわれているが、CLEカブリオレの全長×全幅×全高は4850×1860×1425mm、ホイールベース2865mmという基本寸法はCクラス寄りで、全長が10cmほど長いほかはCクラスに近く(「C200アバンギャルド」は4755×1820×1435mm)、ホイールベースは同一である。
エンジンはCクラス同様、48V駆動のISG(インテグレーテッドスタータージェネレーター)付きの2リッター4気筒ターボで、204PS/5800rpmと320N・m/1600-4000rpmを発生。トランスミッションは9段ATの後輪駆動である。電動ソフトトップを備えるために車重はクーペより100kgほど重い1900kgもあるが、48Vマイルドハイブリッドシステムのサポートのおかげで実用域ではなかなか軽快であり、エンジンそのものもトップエンドまで健康的にスムーズに吹け上がる。取り立ててパワフルではないし、おそらくディーゼルや6気筒モデルのほうが余裕たっぷりに走れるとは思うが、このパワーユニットでも不足は感じないはずだ。エンジン停止/再始動の際にショックを感じさせないこともISG付きの美点だ。
実用性を諦めないカブリオレ
室内の眺めは当たり前だがCクラスと大差ない。外光の反射で見にくい場合にSLのようにセンターディスプレイの角度を変えられる(2段階)ことを除けばもはやおなじみの眺めといっていい。もちろん「MBUX(メルセデス・ベンツ ユーザーエクスペリエンス)」は最新型で、「ハイ、メルセデス」と起動しなくても音声操作できる「ジャストトーク」機能や「ルーティーン」機能(登録エリアに入ったらカメラ起動など)を装備、さらにサードパーティー製アプリも利用可能な「MBUXエンターテインメントパッケージプラス」も用意されている。
おしゃれ優先のクルマであっても実用性をおろそかにしないのがドイツ流だが、一本化されたCLEのカブリオレも同様だ。2人掛けの後席も小柄な人ならば大人でもエマージェンシー用以上の広さを持つ。ただし、レッグルームはまずまずながら、身長180cmぐらいだと頭が天井につかえてしまうことは留意されたい。
それに加えて荷室の広さも実用に足る。ソフトトップを閉じた場合の荷室容量は385リッター(開けた場合は格納した幌にトランク上部がけられるために295リッターと小さくなる)で、しかもリアシートバックレストは60:40の分割可倒式でトランクとつなげることができる。とはいえ、幌のメカニズムが加わるせいで開口部はクーペに比べて小さく変則的な形状だ。それでも積載性を簡単に諦めないのはさすがである。
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もうちょっとエレガントに
まなじりを決して飛ばすようなクルマではないから、快適性についても抜かりはない。ちょっと見た目は奇妙だがウインドシールド上端から立ち上がるディフレクターと、リアシート背後から飛び出すディフレクターがオープン時の風の巻き込みを抑え、また首のあたりに温風を吹き出すエアスカーフももちろん装備されている。
ただし、乗り心地については優雅に走りたいカブリオレとしてはもう一歩という印象だった。このクルマにはAMGホイールに20インチタイヤ(標準装着は19インチ)と、「ダイナミックボディーコントロール」と称する可変ダンパー付きサスペンションからなるオプションの「ドライバーズパッケージ」を装着していたが(標準でもスポーツサスペンション付き)、そのせいか、あるいはやはりオープンボディーのせいか、大きめの不整を越えた際にはタイヤの上下動が抑え切れていないようで、場合によっては揺れ残りも感じられた。スポーツ志向ではなく、ラグジュアリー寄りの仕様のほうがCLEカブリオレにはふさわしいのではないか。
酸いも甘いもかみ分けたクルマ好きのベテランにおすすめするには今ひとつ物足りないのが正直なところだが、今のところメルセデスにはこれしかないのです、と言われると致し方ない。さらにエレガントな仕様の追加をぜひ検討していただきたいと思う。
(文=高平高輝/写真=山本佳吾/編集=藤沢 勝)
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テスト車のデータ
メルセデス・ベンツCLE200カブリオレ スポーツ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4850×1860×1425mm
ホイールベース:2865mm
車重:1900kg
駆動方式:FR
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:9段AT
エンジン最高出力:204PS(150kW)/5800rpm
エンジン最大トルク:320N・m(32.6kgf・m)/1600-4000rpm
モーター最高出力:23PS(17kW)/1500-3000rpm
モーター最大トルク:205N・m(20.9kgf・m)/0-750rpm
タイヤ:(前)245/35R20 95Y XL/(後)275/30R20 97Y XL(グッドイヤー・イーグルF1アシメトリック5)
燃費:14.0km/リッター(WLTCモード)
価格:936万円/テスト車=1074万円
オプション装備:メタリックカラー<オパリスホワイト>(18万円)/ソフトトップ<レッド>(5万円)/ドライバーズパッケージ(25万円)/レザーエクスクルーシブパッケージ(90万円)
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:745km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:388.3km
使用燃料:33.2リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:11.7km/リッター(満タン法)/11.7km/リッター(車載燃費計計測値)
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高平 高輝
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