メルセデスAMG CLE53 4MATIC+カブリオレ(4WD/9AT)
あくまでもジェントル 2025.02.03 試乗記 「メルセデスAMG CLE53 4MATIC+カブリオレ」が日本に上陸。これでもかと詰め込まれたテクノロジーによって手にしたのは、屋根を開けても閉めても快適なキャビンと、飛ばしても流しても楽しめるドライバビリティーだ。真冬のワインディングロードで仕上がりを試した。待っていた人は少ないだろうけれど
2ドアクーペやカブリオレが思ったほど売れないというのはどうやら日本に限ったことではないらしい。メルセデス・ベンツは過去に「Sクラス」「Eクラス」「Cクラス」のそれぞれに「クーペ」と「コンバーチブル」を用意していた。ところが、現行Sクラスにはいまだにクーペもカブリオレも追加されず、EクラスとCクラスのクーペは「CLE」という新しい名前とともに、ひとつのモデルに統合されてしまった。「SL」はAMG名義なので、メルセデス名義の2ドアクーペとカブリオレはもはやCLEだけである。
クーペやカブリオレは「かっこいい」「きれい」など人さまからの評判は決して悪くない。ところが、オーナーにしてみるとドアが重いとか後席へのアクセスが悪いとか利便性に関する看過できないネガが少なくない。そのうえセダンベースのモデルだと、たいていのクーペやカブリオレはセダンよりも高めの価格設定がされており、「だったらセダンでいいじゃん」となるケースが多いという。逆に言えば、クーペやカブリオレはとてもぜいたくな選択であり、それをあえて選ぶオーナーは精神的にも経済的にも余裕のある粋な暮らしをしているのだろうと勝手に想像してしまう。けれど、実際にはそういう方は世の中に多くは存在していないようだ。
そう考えると、CLEカブリオレのAMGは極めてニッチな商品ではあるまいか。CLEカブリオレを選ぶこと自体がかなりのレアケースであるにもかかわらず、そこへさらにAMG(と約500万円)をトッピングしたモデルである。このクルマの導入を「待ってました!」とばかりに小躍りする方はとてもとても少ないかもしれない。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テクノロジー満載の直6エンジン
CLEのカブリオレは「CLE200カブリオレ スポーツ」がすでに日本へ導入されているので、メルセデスAMG CLE53 4MATIC+カブリオレは追加導入ということになる。
フロントノーズに収まっているのは「M256M」と呼ばれる3リッターの直列6気筒エンジンで、これがなかなか凝ったユニットなのである。ベースとなる「M256」はメルセデスにとって久しぶりに復活した直列6気筒エンジンだった。衝突安全の基準を満たすべく、エンジンルーム内に衝撃を吸収するスペースが必要となり、直列よりも全長の短いV型への置換が進んだ。ところがボディー設計の進歩などにより、直列でも衝突案件をクリアできるようになり、メルセデスのみならず各社が直列6気筒エンジンを復活させたのである。M256は電動化にも対応するユニットでもあり、エンジンとトランスミッションの間に電気モーターを組み込んだマイルドハイブリッドの「ISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)」仕様だが、さらに48Vの電動スーパーチャージャーとターボの2つの過給機が備わっている。M256Mは、M256からインレット/アウトレットの空気の流れを改善し、燃料噴射やスーパーチャージャー、ターボにも改良を施したAMG用のユニットとなる。
直列6気筒エンジンはトルクが線形に立ち上がる特性がある。これが「6気筒ならではのスムーズな吹け上がり」などと評価される。この6気筒をパワーアップしようと過給機などの助けを借りると、エンジン特性が線形から非線形に変わってしまい、6気筒のおいしさが低減してしまう。そこで、モーターとスーパーチャージャーをさらに追加することで、走りだしはモーター、低回転域はスーパーチャージャー、中高回転域になるとターボと次々にバトンタッチすることで、線形の特性を生み出すという理屈である。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
真冬のオープン走行でも快適
CLE200カブリオレ スポーツとボディーサイズを比較してみると、全長で5mm、全幅で75mm、全高で10mmそれぞれ大きくなっている。注目すべきは全幅で、トレッドを広げて大きなサイズのタイヤを履き、それを収めるためにワイドフェンダー化したことによる75mmである。フロントのシャークノーズデザインやグリルはAMG専用のお化粧で、グリルだけでなくバンパーからもエアを取り込んでエンジンルーム内の冷却に使うという機能的デザインも採り入れられている。ディフューザーや左右4本出しマフラーなどを備えるリアもAMG専用である。インテリアは基本的にCLE200カブリオレ スポーツを踏襲するものの、ステアリングやシートはAMG専用。ブラックのオープンポアウッドトリムが標準装備だが、試乗車には「AMGダイナミックパッケージ」が装着されていたので、AMGカーボンファイバーインテリアトリムとなっている。
このクルマに限ったことではないけれど、最近のオープントップは総じてクローズ時の静粛性が高い。ソフトトップの操作は60km/h以下であれば走行中でも可能、かかる時間は20秒以内と公表されている。4シーターなのでキャビンの開口部が広く、オープン時の風の巻き込みは2シーターよりも格段に多い。そこでセンターコンソールに置かれたスイッチを押すと、フロントウィンドウ上部にはウインドディフレクターが、後席後ろにはドラフトストップが立ち上がり、風の巻き込みを大幅に低減する。今回のような冬場には、フロントシートに内蔵されたエアスカーフが首元を温めてくれるし、もちろんシートヒーターも標準装備なので、露天風呂に入っているかのように快適だった。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
コンフォートにも俊敏にも
実はこのクルマの取材には「A45 S 4MATIC+ファイナルエディション」も同行していた。それと比べると、CLE53 4MATIC+カブリオレの乗り味は総体的にずいぶんと穏やかである。最高出力449PS/最大トルク560N・mのパワースペックは、出力もトルクもA45を上回っているものの、前述のようにモーターと2つの過給機がなめらかに力強いトルクを立ち上げてくれるので、めっぽう速いけれどジェントルな加速感である。AMGスピードシフトTCT 9Gトランスミッションの変速も「コンフォート」を選んでいる限りではシフトショックは少なく、スムーズな変速優先のロジックとなっている。これを「スポーツ」「スポーツ+」、さらに「レース」(AMGスポーツパッケージのみ追加)にすると、コツンと適度なシフトショックを伴いながら変速速度も速くなり、勇ましいサウンドやダウンシフト時のブリッピングなども味わえるようになる。
操縦性も基本的にはナーバスになるほどクイックではない。それでも後輪操舵や4MATIC+の前後トルク配分などが連携して優れた回頭性を示す。AMGダイナミックパッケージにはAMGダイナミックエンジンマウントが含まれていて、これはコンフォートモードではマウントを柔らかくすることでエンジン振動を吸収してシャシーに伝わることを抑えるいっぽう、スポーツとスポーツ+、レースでは硬くして重量物であるエンジンを動きにくくし、クルマにヨー方向の力が加わったときのスッキリとした旋回を可能としている。快適性と操縦性の両立を図った有効なアイテムである。
全体的にAMGにしてはジェントルなセッティングになっているのは、カブリオレというクルマのキャラクターや、オーナーのドライブスタイルを考慮してのことだろう。ガシガシ走りたいならクーペの「CLE53」があるわけで。
AMGの4座のカブリオレの1400万円というプライスタグが適正なのかどうかは正直よく分からないのだけれど、2+2の「SL43」が1765万円を掲げているのを見ると、リーズナブルなような気もしてくると同時に、自分の金銭感覚がちょっとおかしなことになっているとも思ってしまう。
(文=渡辺慎太郎/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝/車両協力=メルセデス・ベンツ日本)
テスト車のデータ
メルセデスAMG CLE53 4MATIC+カブリオレ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4855×1935×1435mm
ホイールベース:2875mm
車重:2090kg
駆動方式:4WD
エンジン:3リッター直6 DOHC 24バルブ ターボ+スーパーチャージャー
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:9段AT
エンジン最高出力:449PS(330kW)/5800-6100rpm
エンジン最大トルク:560N・m(57.1kgf・m)/2200-5000rpm
モーター最高出力:23PS(17kW)/1500-3000rpm
モーター最大トルク:205N・m(20.9kgf・m)/0-750rpm
タイヤ:(前)265/35ZR20 99Y XL/(後)295/30ZR20 101Y XL(ミシュラン・パイロットスポーツS 5)
燃費:10.5km/リッター(WLTCモード)
価格:1400万円/テスト車=1490万1000円
オプション装備:ボディーカラー<MANUFAKTURパタゴニアレッド>(10万1000円)/AMGダイナミックパッケージ(40万円)/レザーエクスクルーシブパッケージ(40万円)
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:1250km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:242.0km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:8.0km/リッター(車載燃費計計測値)

渡辺 慎太郎
-
マツダCX-60 XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ(4WD/8AT)【試乗記】 2026.1.14 「マツダCX-60」に新グレードの「XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ」が登場。スポーティーさと力強さ、上質さを追求したというその中身を精査するとともに、国内デビューから3年を経た“ラージ商品群第1弾”の成熟度をチェックした。
-
カワサキKLX230シェルパS(6MT)【レビュー】 2026.1.13 その出来には“セロー乗り”も太鼓判!? カワサキのトレイルバイク「KLX230シェルパ」に、ローダウン仕様の「シェルパS」が登場。安心の足つき性で間口を広げた一台だが、実際に走らせてみると、ストリートでも楽しめるオールラウンダーに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツC220dラグジュアリー(FR/9AT)【試乗記】 2026.1.12 輸入車における定番の人気モデル「メルセデス・ベンツCクラス」。モデルライフ中にも年次改良で進化し続けるこのクルマの、現在の実力はいかほどか? ディーゼルエンジンと充実装備が魅力のグレード「C220dラグジュアリー」で確かめた。
-
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション(FF/CVT)【試乗記】 2026.1.10 日産の軽スーパーハイトワゴン「ルークス」がフルモデルチェンジ。「見えない危険が……」のテレビCMでお茶の間をにぎわせているが、走る、曲がる、止まるをはじめとしたクルマ全体としての仕上がりはどうか。最上級グレードをテストした。
-
スズキDR-Z4S(5MT)【レビュー】 2026.1.7 スズキから400ccクラスの新型デュアルパーパスモデル「DR-Z4S」が登場。“Ready 4 Anything”を標榜(ひょうぼう)するファン待望の一台は、いかなるパフォーマンスを秘めているのか? 本格的なオフロード走行も視野に入れたという、その走りの一端に触れた。
-
NEW
新生ノートンがいよいよ始動! 名門の復活を担う次世代モーターサイクルの姿に迫る
2026.1.16デイリーコラム英国のモーターサイクル史にあまたの逸話を残してきた名門、ノートンが、いよいよ再始動! その数奇な歴史を振り返るとともに、ミラノで発表された4台の次世代モデルを通して、彼らが思い描く未来像に迫った。 -
第858回:レースの技術を市販車に! 日産が「オーラNISMO RSコンセプト」で見せた本気
2026.1.15エディターから一言日産が「東京オートサロン2026」で発表した「オーラNISMO RSコンセプト」。このクルマはただのコンセプトカーではなく、実際のレースで得た技術を市販車にフィードバックするための“検証車”だった! 新しい挑戦に込めた気概を、NISMOの開発責任者が語る。 -
ルノー・グランカングー クルール
2026.1.15画像・写真3列7座の新型マルチパーパスビークル「ルノー・グランカングー クルール」が、2026年2月5日に発売される。それに先駆けて公開された実車の外装・内装を、豊富な写真で紹介する。 -
市街地でハンズオフ運転が可能な市販車の登場まであと1年 日産の取り組みを再確認する
2026.1.15デイリーコラム日産自動車は2027年に発売する車両に、市街地でハンズフリー走行が行える次世代「ProPILOT(プロパイロット)」を搭載する。その発売まであと1年。革新的な新技術を搭載する市販車の登場は、われわれにどんなメリットをもたらすのか。あらためて考えてみた。 -
ホンダ・プレリュード(前編)
2026.1.15あの多田哲哉の自動車放談トヨタでさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さんが今回試乗するのは、24年ぶりに復活した「ホンダ・プレリュード」。話題のスペシャルティーカーを、クルマづくりのプロの視点で熱く語る。 -
第944回:こんな自動車生活は最後かもしれない ―ある修理工場で考えたこと―
2026.1.15マッキナ あらモーダ!いつもお世話になっている“街のクルマ屋さん”で、「シトロエン・メアリ」をさかなにクルマ談議に花が咲く。そんな生活を楽しめるのも、今が最後かもしれない。クルマを取り巻く環境の変化に感じた一抹の寂しさを、イタリア在住の大矢アキオが語る。





















































