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メルセデスAMG CLE53 4MATIC+カブリオレ(4WD/9AT)

高度なバランス 2024.11.18 試乗記 島下 泰久 メルセデスの新世代オープントップ「CLEカブリオレ」にメルセデスAMG版の「CLE53 4MATIC+カブリオレ」が登場。スペイン南部のリゾート地、マルベーリャで、最高出力449PSの直6エンジンが生み出す心地よい風を味わってみた。
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とにかくグラマラス

まず何より、そのルックスで虜(とりこ)にさせるのがメルセデスAMG CLE53 4MATIC+カブリオレである。期待はしていたが、実車と対面した瞬間、恋に落ちるかのような衝撃が走った……というのは、決して誇張じゃない。

すでに日本上陸を果たしているクーペと同じく、“63”シリーズ以外では初だという専用ワイドフェンダーの採用によって、ベースとなった「CLEクーペ」に対して全幅を75mm拡大したそのボディーは、もともとの2ドアFRらしい優雅さと挑みかかるような迫力を両立させている。そのうえ、このクルマはカブリオレである。フラットなベルトラインが際立つオープン時にも、布と金属の質感が際立つクローズ時にも、下半身のボリュームがますます強調されて、とてもグラマラスなのだ。

もちろんクーペも相当なものなのだが、このルックスだけでも十分カブリオレを選ぶ理由になる。そんな鮮烈な存在感を発揮しているのである。

実際のところ、ハードウエアについてはクーペとほぼ違いはない。パワードームがたくましいエンジンフードの下に収まるのは、M256Mというコードネームを持つ直列6気筒3リッターツインターボユニット。主に低回転域でのレスポンスに貢献する電動コンプレッサーをも備えて、最高出力449PS、最大トルク560N・mを発生する。さらにオーバーブースト時にはトルクが最大10秒間まで600N・mまで増強され、ダメ押しとしてISGによる23PS、205N・mのアシストも加わるかたちだ。

トランスミッションは「AMGスピードシフト9G TCT」と呼ばれる9段ATで、これに「AMGパフォーマンス4MATIC」と呼ばれるドリフトモードも備えた4WDシステムを組み合わせる。シャシーは電子制御ダンパーを用いた「AMGライドコントロール」、そして同位相に0.7度、逆位相には2.5度までステアする後輪操舵システムも装備する。

かつての「Cクラス カブリオレ」と「Eクラス カブリオレ」の融合によって生まれた「CLEカブリオレ」。「メルセデスAMG CLE53 4MATIC+カブリオレ」はそのハイパフォーマンスバージョンだ。
かつての「Cクラス カブリオレ」と「Eクラス カブリオレ」の融合によって生まれた「CLEカブリオレ」。「メルセデスAMG CLE53 4MATIC+カブリオレ」はそのハイパフォーマンスバージョンだ。拡大
ボディーサイズは全長×全幅×全高=4853×1935×1435mm。トレッドの拡大に合わせてフェンダーがフロントで58mm、リアで75mmワイドになっている。
ボディーサイズは全長×全幅×全高=4853×1935×1435mm。トレッドの拡大に合わせてフェンダーがフロントで58mm、リアで75mmワイドになっている。拡大
ルーフは多層構造の電動式ソフトトップ。カラーリングはこのレッドのほかにブラックとグレーも選べる。
ルーフは多層構造の電動式ソフトトップ。カラーリングはこのレッドのほかにブラックとグレーも選べる。拡大
ルーフの開閉に要する時間はそれぞれわずか20秒ほど。60km/h以下であれば走行中でも操作を受け付ける。
ルーフの開閉に要する時間はそれぞれわずか20秒ほど。60km/h以下であれば走行中でも操作を受け付ける。拡大
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クーペよりも入念な補強

試乗の拠点となったのはスペイン南部のマルベーリャ。天候が今ひとつということもあり、ソフトトップを閉じたままで走りだし、まず感心させられたのがそのライドコンフォートの質の高さだった。石畳を抜けて、ざらついた舗装の街なかを行く最中にも、とにかくボディーがガッチリした印象で、ファットなタイヤからの鋭い入力もすんなり受け流してしまう。

ソフトトップも秀逸で、どんな場面でもきしむようなそぶりを見せずパリッと張っていて、外界からの騒音も完璧に遮断している。もちろん、ボディー自体の歪(ひず)みの少なさも、それに貢献しているのは間違いない。

聞けば、その車体はまずエンジンコンパートメントの前方、ちょうどバンパーの裏側に追加の補強バーが入り、「CLE53 4MATIC+クーペ」ではフロントにだけ備わるアクスル下の補強プレートがリアにも追加されているという。それらの効果は絶大。オープンカーであることを忘れさせるほどの、という常套句(じょうとうく)を用いる以外にない、極上の快適性を味わわせてくれるのだ。

オープントップモデルらしからぬボディー剛性が印象的だ。「クーペ」ではフロントのみに施されるアクスル下の補強を、リアにも追加している。
オープントップモデルらしからぬボディー剛性が印象的だ。「クーペ」ではフロントのみに施されるアクスル下の補強を、リアにも追加している。拡大
タイヤは19インチが標準で、この試乗車はオプションの20インチをチョイス。フロントが265/35、リアが295/30の「ミシュラン・パイロットスポーツS 5」を履いていた。
タイヤは19インチが標準で、この試乗車はオプションの20インチをチョイス。フロントが265/35、リアが295/30の「ミシュラン・パイロットスポーツS 5」を履いていた。拡大
フロントに縦置きで積まれる3リッター直6エンジンはターボと電動スーパーチャージャーの過給を受けて最高出力449PS、最大トルク560N・mを発生。10秒間のオーバーブースト機能によってトルクを一時的に600N・mまで高められる。
フロントに縦置きで積まれる3リッター直6エンジンはターボと電動スーパーチャージャーの過給を受けて最高出力449PS、最大トルク560N・mを発生。10秒間のオーバーブースト機能によってトルクを一時的に600N・mまで高められる。拡大

優雅に楽しむための独自のセッティング

パワートレインの印象は非常にスイート。直列6気筒ならではの緻密な回転フィーリング、澄んだサウンドを、速度域を問わず楽しめる。パワー、トルクは十分以上にあるが、過剰という感じではなく、レスポンスも“63”シリーズほど暴力的ではない。この走りの感触からは、ふとAMGがメルセデス・ベンツ傘下となった直後の1990年代中盤の名作、「E50」や「C36」などが思い起こされた。

ワインディングロードに差しかかるころには、雨がほぼやんできた。速度を60km/h以下まで落とし、スイッチを操作して20秒待てば、ソフトトップがきれいに折り畳まれる。

強固なボディーのおかげで、オープン時の乗り心地にも文句をつける余地はない。風の巻き込みが気になるようなら、エアキャップを作動させればそれもほぼ抑え込まれるから、何のネガとも引き換えにすることなく開放感だけを味わえる。

実はソフトトップオープン時の「コンフォート」モードでの力の出し方は、クーペと比べてややマイルドに振っているのだという。優雅に流して楽しむための設定というわけだ。

最高速は250km/hで、0-100km/hのタイムは4.4秒。オプションの「AMGダイナミックプラスパッケージ」を装着すると前者が270km/hに引き上げられるほか、レーススタート機能の追加によって後者が4.2秒に縮まる。
最高速は250km/hで、0-100km/hのタイムは4.4秒。オプションの「AMGダイナミックプラスパッケージ」を装着すると前者が270km/hに引き上げられるほか、レーススタート機能の追加によって後者が4.2秒に縮まる。拡大
ダッシュボードは11.9インチの縦型タッチスクリーンを中心としたレイアウト。ルーフオープン時にはスクリーンが少しだけ立ち上がり、空の映り込みを抑制する。
ダッシュボードは11.9インチの縦型タッチスクリーンを中心としたレイアウト。ルーフオープン時にはスクリーンが少しだけ立ち上がり、空の映り込みを抑制する。拡大
ルーフとウインドディフレクターのスイッチはセンターアームレストの前方。操作系をタッチスクリーン内に統合することもできるはずだが、このほうがカッコいい。
ルーフとウインドディフレクターのスイッチはセンターアームレストの前方。操作系をタッチスクリーン内に統合することもできるはずだが、このほうがカッコいい。拡大

バランスのとれた万能オープンカー

実際、「スポーツ+」にまで切り替えると、エンジンはより躍動感のある反応を示すようになり、変速の切れ味も明らかに高まる。ダンパーが引き締まるのはもちろん、駆動力配分もリア寄りになって、フットワークはまさしくニュートラルステアという感触に。思わずペースが上がってしまう。キメの細かいエンジンサウンドが、クローズ時よりもダイレクトに響いてくるのも、気分をさらに後押しする。

途中で再び雨粒が落ちてきてしまったのだが、飛ばしているぶんには室内に入り込むことはない。それを口実に、爽快な走りを思い切り楽しんだのだった。

ルックスにしても走りにしても、迫力はあるけれどたけだけしすぎることはなく、オープンカーの快楽も味わえる。しかも大人4人が難なく乗れて荷物スペースも十分備わる。昨今のパワートレインを巡る情勢の変化で、近い将来にV型8気筒ユニットを積む“63”が追加される、あるいは置き換わるとのうわさも出てきているが、個人的には、優雅さも迫力も、あらゆる要素が極めて高い次元でバランスされた、このCLE53 4MATIC+カブリオレこそが大人のオトコがデイリーに楽しむための理想的な一台じゃないかと思えた。

ひと目でほれ、そして実際にステアリングを握ったらますます虜になってしまった。CLE53 4MATIC+カブリオレ、日本には年内にも導入される予定とのことだ。

(文=島下泰久/写真=メルセデス・ベンツ/編集=藤沢 勝)

ドライブトレインは4WDの「AMG 4MATIC+」。前後駆動力配分は50:50から0:100の間で連続的に可変される。
ドライブトレインは4WDの「AMG 4MATIC+」。前後駆動力配分は50:50から0:100の間で連続的に可変される。拡大
このAMGパフォーマンスシートはオプションで選べる。ヒーターとベンチレーションのほか、首元から温風を吹き出すエアスカーフ機能も付いている。
このAMGパフォーマンスシートはオプションで選べる。ヒーターとベンチレーションのほか、首元から温風を吹き出すエアスカーフ機能も付いている。拡大
後席は大人でも難なく乗り込めるだけのサイズが確保されている。シートはヘッドレスト下の横線の部分から前に倒せるようになっている。
後席は大人でも難なく乗り込めるだけのサイズが確保されている。シートはヘッドレスト下の横線の部分から前に倒せるようになっている。拡大
トランク容量は通常時が385リッターで、ルーフオープン時は295リッター。後席の背もたれはこちら側からでも倒せる。
トランク容量は通常時が385リッターで、ルーフオープン時は295リッター。後席の背もたれはこちら側からでも倒せる。拡大

テスト車のデータ

メルセデスAMG CLE53 4MATIC+カブリオレ

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4853×1935×1435mm
ホイールベース:2875mm
車重:2110kg
駆動方式:4WD
エンジン:3リッター直6 DOHC 24バルブ ターボ+スーパーチャージャー
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:9段AT
エンジン最高出力:449PS(330kW)/5800-6100rpm
エンジン最大トルク:560N・m(57.1kgf・m)/2200-5000rpm
モーター最高出力:23PS(17kW)/1500-3000rpm
モーター最大トルク:205N・m(20.9kgf・m)/0-750rpm
タイヤ:(前)265/35ZR20 99Y XL/(後)295/30ZR20 101Y XL(ミシュラン・パイロットスポーツS 5)
燃費:9.8-9.6リッター/100km(約10.2-10.4km/リッター、WLTPモード)
価格:--円
オプション装備:--

テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

メルセデスAMG CLE53 4MATIC+カブリオレ
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メルセデスAMG CLE53 4MATIC+カブリオレ(4WD/9AT)【海外試乗記】の画像拡大
島下 泰久

島下 泰久

モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。

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