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プジョー2008 GTハイブリッド(FF/6AT)

時間が解決してくれる 2025.11.05 試乗記 佐野 弘宗 「プジョー2008」にマイルドハイブリッドの「GTハイブリッド」が登場。グループ内で広く使われる最新の電動パワートレインが搭載されているのだが、「う~む」と首をかしげざるを得ない部分も少々……。360km余りをドライブした印象をお届けする。
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ステランティスでは最新のマイルドハイブリッド

欧州と北米で多くのブランドを抱えるステランティスで、いま増殖の一途なのが、1.2リッターのマイルドハイブリッドである。エンジンが1.2リッター3気筒直噴ターボの「ピュアテック」であることからもわかるように、旧プジョー・シトロエン(グループPSA)の技術をベースにしたパワートレインである。

このマイルドハイブリッドパワートレインも、欧州メーカーが近年こぞって手がけはじめた48Vハイブリッドの典型例のひとつといっていい。エンジンに従来型マイルドハイブリッドでおなじみのベルト駆動スターター兼発電機を備えて、さらにEV走行可能な駆動モーターと、フルハイブリッドなみの電池を追加している。48Vは安全基準がさほど厳しくなく、それでいて簡便なEV走行もできる使い勝手のいい電圧で、最初はドイツ大手自動車メーカー5社が手を組んで提唱した。

日本にいると、2025年に入ってから、いきなり押し寄せてきた感がある同ハイブリッドだが、欧州では2023年春に、当時(ということは先代)のプジョーの「3008」と「5008」で初めて世に出ている。日本向けプジョーでは、2025年5月の「308」を皮切りに、新型3008と「408」、今回の2008、そして「208」の順で搭載された。というわけで、現行プジョーで同マイルドハイブリッドの用意がないのは、現時点で「リフター」のみとなっている。

そのステランティス最新のマイルドハイブリッドを搭載する2008が、今回のGTハイブリッドだ。最高出力136PS、最大トルク230N・mの1.2リッターピュアテック、最大トルク51N・mの駆動モーター、総電力量0.9kWhのリチウムイオン電池……という各コンポーネントのスペックは、他車のそれと基本的に変わりない。2008ではモーターの最高出力のみ15kW(20PS)となっている(ほかは16kW)が、145PSというシステム出力は同じだから、実質同等と考えていいだろう。

「プジョー2008 GTハイブリッド」が国内で発売されたのは2025年8月21日のこと。車両本体価格は既存の1.2リッターガソリンターボ車と1.5リッターディーゼルターボ車の間に収まる419万円。
「プジョー2008 GTハイブリッド」が国内で発売されたのは2025年8月21日のこと。車両本体価格は既存の1.2リッターガソリンターボ車と1.5リッターディーゼルターボ車の間に収まる419万円。拡大
一応おさらいすると現行型「2008」は全長4305mmのコンパクトサイズがうれしいSUVだ。
一応おさらいすると現行型「2008」は全長4305mmのコンパクトサイズがうれしいSUVだ。拡大
新規導入された「GTハイブリッド」ながら、内外装の基本デザインは他のグレードと変わらない。2023年のマイナーチェンジでライオンの爪あとがモチーフの3本(片側)のデイタイムランニングライトが採用された。
新規導入された「GTハイブリッド」ながら、内外装の基本デザインは他のグレードと変わらない。2023年のマイナーチェンジでライオンの爪あとがモチーフの3本(片側)のデイタイムランニングライトが採用された。拡大
マイルドハイブリッド用の1.2リッターターボエンジンは純ガソリン車用のユニットをベースに、可変ジオメトリーターボ化やミラーサイクル化などの大規模な改良が施されている。
マイルドハイブリッド用の1.2リッターターボエンジンは純ガソリン車用のユニットをベースに、可変ジオメトリーターボ化やミラーサイクル化などの大規模な改良が施されている。拡大
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ディーゼルよりも低燃費

こうした細かい性能値は、2023年春の登場時からも基本的に変わっていない。しかも、BセグメントハッチバックからDセグメントSUVまで幅広く搭載されるが、クルマのサイズ(あるいはブランド)による差別化も、少なくとも数値上はやっていないようだ。

今回の試乗車は、その注目のパワートレイン以外は、2023年10月に国内発売となったマイナーチェンジ版2008そのものだ。既存の1.2リッターピュアテックと1.5リッターディーゼルという2種類の純エンジン車も健在である。WTLCモードで21.5km/リッターというGTハイブリッドの燃費性能は、低燃費を売りにしてきたディーゼルの「GT BlueHDi」の20.8km/リッターをしのぐ。加えて車両本体価格も8万3000円安い……のが、GTハイブリッドの大きな売りとなっている。

まあ、それぞれの指定燃料であるハイオクガソリンと軽油に大きな価格差がある日本では、これだけでハイブリッドのほうが経済的……とはならない。対して、排ガス規制強化とその対応コストの高騰でディーゼルの行く末が危惧される欧州では、ガソリンと軽油の価格差が小さく、この種のハイブリッドがディーゼルにかわる存在として期待されてもいる。

2020年に発売された現行2008は、今のプジョーでは古参に属する。そうはいっても、フランス本国でも2020年初頭の発売だから、そこまで長寿でもない。また、もとが最近ハヤリのクーペSUVを先取りしたようなプロポーションだし、2023年のマイチェンがツボを押さえているので、少なくともエクステリアに古さは感じない。フレームレスのグラデーショングリル、モチーフが“牙”から“三本爪”になったLEDランニングライト、より幾何学的になった3連リアコンビランプ……などのアップデートは、素直に効果的といっていい。

1.2リッターターボエンジンには駆動用モーター(最高出力20PS/最大トルク51N・m)を内蔵した6段のデュアルクラッチ式ATが組み合わせられる。システム最高出力は145PSを発生する。
1.2リッターターボエンジンには駆動用モーター(最高出力20PS/最大トルク51N・m)を内蔵した6段のデュアルクラッチ式ATが組み合わせられる。システム最高出力は145PSを発生する。拡大
インテリアはプジョーではおなじみの「i-Cockpit(iコックピット)」。ステアリングホイールはおなかの前で抱え、メーターはその上にレイアウトされる。
インテリアはプジョーではおなじみの「i-Cockpit(iコックピット)」。ステアリングホイールはおなかの前で抱え、メーターはその上にレイアウトされる。拡大
シート表皮はアルカンターラとテップレザー(合皮)の組み合わせ。少々硬めの座り心地ながらホールド性は高い。
シート表皮はアルカンターラとテップレザー(合皮)の組み合わせ。少々硬めの座り心地ながらホールド性は高い。拡大
後席は全長4305mmの全長から想像するよりは広く感じられる。座面の端をばっさりと斜めにカットしてあるため乗り降りがしやすい。
後席は全長4305mmの全長から想像するよりは広く感じられる。座面の端をばっさりと斜めにカットしてあるため乗り降りがしやすい。拡大

EV走行もできる“強化型マイルドハイブリッド”

いっぽう、ソフトウエアから刷新された10インチセンターディスプレイ以外は見慣れたままのインテリアには、正直いって、少し古典感がただよう。最新プジョーでは「iトグル」というタッチパネルが配される位置には、鍵盤風スイッチがズラッとならぶ。ただ、目を凝らすとそのスイッチパネル上面に、ホームや空調、車両設定などのタッチ式ショートカットが追加されていた。使い勝手がいいかどうかはともかく、最新のiトグルのロジックを少しでも取り入れようとする工夫は見られる。

この最新パワートレインは、変速機を従来のトルクコンバーター式8段ATからモーター内蔵の6段DCTに置き換えて、従来のマイルドハイブリッドになかったEV走行を実現した。さしずめ“強化型マイルドハイブリッド”とでも呼ぶべきメカニズムだ。

2008 GTハイブリッドは、(ドライブモードが「スポーツ」以外なら)停止中は基本的にアイドルストップして、十分な電池残量で市街地をおだやかに走るかぎりは、EV走行するケースが多い。電池が底を尽きかけたり、大きくアクセルを踏み込んだりすると、即座にエンジンがかかるが、電池残量が戻ればいつでもEV走行に戻る。資料には「30km/hまでは100%電動走行可能」とあるが、実際には、一般道ではもちろん高速道でも、低負荷走行ではEV状態になる。

この1.2リッターマイルドハイブリッドについては、個人的には、先日リポートした3008(参照)に続く2回目の試乗だった。市街地をおとなしく転がす以外はエンジン走行が主体だが、停止からの発進や下り坂、低負荷巡航になると、ふとエンジンが止まって燃料消費を抑制……といった、このパワートレインの基本所作は2008も3008も同じだ。

同じパワートレインの3008より車重が300kg近く軽いこともあり、動力性能は“活発”といえるくらいで不満はない。1.2リッターピュアテックはもともと2008のメインエンジンだったのだから、それも当然だろう。

発進時だけでなく、条件が整えば30km/hまではEV走行が可能とされているが、実際には高速道路での低負荷走行時にもEV走行に切り替わるシーンがあった。
発進時だけでなく、条件が整えば30km/hまではEV走行が可能とされているが、実際には高速道路での低負荷走行時にもEV走行に切り替わるシーンがあった。拡大
液晶式メーターは3D表示ができるのが特徴。スクリーンサイズの割に表示項目が小さく、盤面をぜいたくに使っている。
液晶式メーターは3D表示ができるのが特徴。スクリーンサイズの割に表示項目が小さく、盤面をぜいたくに使っている。拡大
センタースクリーンのサイズは10インチ。ドライバーに向けてグイッと曲げてレイアウトされていることがよくわかる。
センタースクリーンのサイズは10インチ。ドライバーに向けてグイッと曲げてレイアウトされていることがよくわかる。拡大
スクリーンの下部にはエアコンやハザードなどのスイッチが鍵盤状にならべられる。その上部にエアコンの温度調整などのタッチスイッチが備わっているのは、初期型「2008」には見られないポイントだ。
スクリーンの下部にはエアコンやハザードなどのスイッチが鍵盤状にならべられる。その上部にエアコンの温度調整などのタッチスイッチが備わっているのは、初期型「2008」には見られないポイントだ。拡大

細かなマナーがいまひとつ

3008よりパワートレインへの負荷も小さいので、2008 GTハイブリッドは走行中にエンジンが停止してEV状態になる頻度も明らかに高まる。そうしたエンジン駆動が出入りする瞬間のショックは、3008でも皆無ではないが、2008のほうが明らかに目立つ。とくにクラッチの断続ショックと思われる、強めの振動は素直にうれしくない。

また、減速初期の回生ブレーキからメカニカルな油圧ブレーキへのバトンタッチにも、2008ではあまり気持ちよくない乗り越え感がある。これも、3008ではあまり感じなかったクセだ。また“停止直前でブレーキ踏力を少しだけ緩める”という、スムーズに停止するための定番ドラテクは、このクルマでは逆効果。停止時のギクシャク感を強めてしまう。

2008より3008の静粛性が高いのは、ヒエラルキーとしては正しい。ただ、それを差し引いても、ちょっとしたショックや振動、アクセルやブレーキのクセのようなものが、3008と比較すると2008で明らかに強めなのはプラットフォームのちがいによるものかもしれない。

2008の土台となっているCMPは、このマイルドハイブリッドが開発される以前の設計である。対して、新型3008の「STLAミディアム」は設計年次から考えて、“これありき”で設計開発された可能性が高い。

今回の試乗での平均燃費は13.2km/リッター(満タン法)で、日本的な交通環境では意外に伸びないな……という印象は3008 GTハイブリッドに似る。ただ、純ピュアテックエンジン車となる「2008 GT」との価格差は20万円以下。乗り味にクセがあるのは事実だが、良くも悪くもクセは慣れることも多く、最新電動車という魅力は捨てがたい。2008において、マイルドハイブリッド、そしてディーゼルやガソリンの純エンジン車……それぞれのコスパや商品力はマジで僅差。購入の際は、ご自分で試乗することをおすすめする。

(文=佐野弘宗/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝/車両協力=ステランティス ジャパン)

発進・停止時の振動低減やスムーズで心地よい加速などがうたわれているが、必ずしもそうではなかった「2008 GTハイブリッド」。満タン法で13.2km/リッターの実燃費もいまひとつ。
発進・停止時の振動低減やスムーズで心地よい加速などがうたわれているが、必ずしもそうではなかった「2008 GTハイブリッド」。満タン法で13.2km/リッターの実燃費もいまひとつ。拡大
ドライブモードは「ノーマル」「エコ」「スポーツ」の3種類。FWD車のみの設定ながらヒルディセントコントロールも備わっている。
ドライブモードは「ノーマル」「エコ」「スポーツ」の3種類。FWD車のみの設定ながらヒルディセントコントロールも備わっている。拡大
スマートフォンのワイヤレス充電器は鍵盤状スイッチの下にあるふたを開けると姿を現す。開けたふたがそのままトレイとして機能する。
スマートフォンのワイヤレス充電器は鍵盤状スイッチの下にあるふたを開けると姿を現す。開けたふたがそのままトレイとして機能する。拡大
荷室の容量は434~1467リッター。フロアボードはもう一段上に設定して開口部とフラットにできる。
荷室の容量は434~1467リッター。フロアボードはもう一段上に設定して開口部とフラットにできる。拡大

テスト車のデータ

プジョー2008 GTハイブリッド

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4305×1770×1580mm
ホイールベース:2610mm
車重:1330kg
駆動方式:FF
エンジン:1.2リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:6段AT
エンジン最高出力:136PS(100kW)/5500rpm
エンジン最大トルク:230N・m(23.5kgf・m)/1750rpm
モーター最高出力:20PS(15kW)/4264rpm
モーター最大トルク:51N・m(5.2kgf・m)/750-2499rpm
システム最高出力:145PS
タイヤ:(前)215/60R17 96H XL/(後)215/60R17 96H XL(グッドイヤー・エフィシェントグリップ2 SUV)
燃費:21.5km/リッター(WLTCモード)
価格:419万円/テスト車=431万7600円
オプション装備:ボディーカラー<オブセッションブルー>(4万9500円) ※以下、販売店オプション ドライブレコーダー<V263A>(5万9950円)/ETC車載器(1万6060円)/ETC取り付けハーネスキット(2090円)

テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:1456km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:364.0km
使用燃料:27.6リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:13.2km/リッター(満タン法)/13.1km/リッター(車載燃費計計測値)

プジョー2008 GTハイブリッド
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佐野 弘宗

佐野 弘宗

自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。

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