ホンダ・フリードe:HEVエアーEX(FF)/トヨタ・シエンタ ハイブリッドZ(FF/CVT)
宣戦布告 2024.08.26 試乗記 今や5ナンバーサイズというだけでも貴重なのに、「ホンダ・フリード」と「トヨタ・シエンタ」はそこに3列のシートを詰め込み、日本の家族を支える頼もしい存在だ。一緒に連れ出してアレコレ比較してみた。ライバルにあらずとはいうものの……
フリードとシエンタは現在、唯一ならぬ唯二(?)の、5ナンバーコンパクトサイズの3列シーターだ。しかし、先ごろフルモデルチェンジされた新型フリードの開発責任者は、シエンタについて「意識していないといえばウソだが、直接的なライバルとは考えていない」と語る。聞けば、この2台は客層がけっこう明確にちがっており、現実の販売現場で正面から比較されるケースは少ないのだという。
ただ、われわれ外野の人間からすると、「とはいえ、おたがいに強く意識しているのも事実ですよね」と申し上げざるをえない。細かく観察すればするほど、この2台はバチバチにしてガチンコの間柄だからだ。
両車は販売成績からしてバチバチだ。コロナ禍真っただ中の2020年は、国内登録車販売ランキングでフリードが7位、シエンタが8位とほぼ互角。先代のモデル末期だったシエンタが13位に落ちた2021年には、10位のフリードが少し先行。さらに、8月に新型に切り替わったシエンタが8位に回復した2022年も、フリードは粘り腰でシエンタをおさえる6位だった。新しくなったシエンタが3位に躍進した2023年は、さすがに10位のフリードを大きく引き離したものの、この2024年上半期(1~6月)は、新型の台数が少し加味されたフリードが7位となり、3位のシエンタにふたたび肉薄しはじめている。
車体のスリーサイズもガチンコに近い。新型フリードの全長が先代より45mm延びたことで、シエンタとの全長差は50mmとなったが、逆にいうと、それまではわずか5mmの差しかなかった。フリードが長くなったのは、主に新しいハイブリッドをおさめるためという。そして全幅は当然、(SUV風加飾の「フリード クロスター」を除けば)ともに5ナンバーいっぱいの1695mm。全高だけは60mmの差があるが、それがそのままフリードとシエンタのパッケージレイアウトや商品コンセプトのちがいを象徴する部分となっている。
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ホンダの販売現場からの要望
ともに2列シートの5人乗りが用意される点も、フリードとシエンタでバチバチだが、今回はあくまで、5ナンバー3列ミニバンとしての比較である。そんな5ナンバー3列シーターの最上級グレードに、自慢の装備をフルトッピングした今回の試乗車の合計価格は、フリードのほうが17万~19万円ほど高い。
単純な額面では、フリードのほうが少し高価なのは先代から変わりない。ただ、フリードはシエンタより広々と開放的な室内空間に加えて、リアクーラーや電動パーキングブレーキなど、シエンタにはない大きな装備もつくことを考えると、額面ほどの割高感はない。……が、シエンタはシエンタで、ステアリングヒーターに前の交通環境に応じて先回りでブレーキや警告をしてくれる「プロアクティブドライビングアシスト」が含まれるので、やっぱり割安感がある。今回のフリードの試乗車は、定員はシエンタよりひとり少ない6人だが、2列目がベンチシートになる7人乗りも、4万4000円のプラスで手に入る。
ただし、フリードでの売れ筋は圧倒的に6人乗りで、7人乗りが用意されるのは5ナンバー最上級の「エアーEX」のみ。2列目がキャプテンシートとなって、3列目にアクセスしやすい6人乗りに人気が集まるというところにも、フリードの客層がうかがえる。つまり、普段からミニバンとして3列目が頻繁に使われるのだろう。
新型フリードで新開発されたリアクーラーは、かねて販売現場から強く要望されてきた装備だという。なるほど室内最後端の3列目まで人が座るミニバンとして見ると、リアクーラーの存在はデカい。シエンタの試乗車にもオプションのサーキュレーターは備わっていたものの、今回のような激暑下でのロケ取材では、3列目どころか、2列目に座っていても、噴き出す汗の量はシエンタのほうが如実に多かった。
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3列目シートの構造に見るそれぞれの個性
フリードとシエンタの室内空間を比較すると、どちらが良い悪いというより、それぞれの設計思想が透けて見えるのが興味深い。先述のリアクーラーだけでなく、3列それぞれに実際に座ると、「客層がちがう」というフリード開発責任者の主張にも納得できる。
室内寸法では甲乙つけがたい2台だが、スライドドアを開けて乗り込んだときの第一印象では、フリードのほうが広々と感じられる。その理由はキャプテンシートのおかげで3列目までの動線が開かれていることに加えて、全体に乗員の目線が高いことにある。全高はフリードのほうが高いが、室内高でシエンタが逆転するのは、シエンタのほうが全体にフロアとシート高が低いからだ。
両車の設計思想が如実に表れているのは、いうまでもなく3列目だ。その収納法はそれぞれおなじみのスタイルで、フリードが左右跳ね上げ式、シエンタが床下収納式となる。
新型フリードは新たに跳ね上げ機構の軸を低くして、スプリングやモーターなどの力を借りずとも、より小さな力で収納・展開ができるようになった。収納最後のベルト固定も、斜め上ではなく、真横方向に押しつけるだけでよくなった。成人男性なら片手で、非力な女性でも苦もなく操作できるだろう。
シエンタの3列目も、収納操作そのものに大きな腕力は要さない。しかし、2列目を最前端までスライド→2列目をタンブルアップ→3列目を引き出す(あるいはダイブダウン)→2列目を降ろす→2列目スライドを元位置に戻す……という工程がいちいち必要で、日常的にそれをおこなうのは正直いって面倒くさい。
逆にいうと、3列目収納時の荷室の使い勝手がすこぶるいいシエンタは、ミニバンというより、2列のハイトワゴンとしての姿を優先しているのは明らかだ。「このクラスで本格的なミニバンがほしい人は、フリードを選んでいただいている」というフリードの開発責任者の弁にウソはないと思われる。
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3列目シートの居住性を比べる
歴代フリードが3列目をあえて左右跳ね上げ式としているのは、初代では後のハイブリッド化のために床下空間を確保……という理由もあったと思われるが、現在では3列目の“イス”としての機能を損なわないためだという。床下収納式ではどうしてもシートの形状や厚みに制約がでてしまうからだ。実際、3列目シートは明らかにフリードのほうが分厚く、座り心地もシエンタに差をつける。また、ドライバーをアップライトに座らせるパッケージレイアウトもあってか、2列目をうまく融通すれば、身長178cmの筆者が3列すべてに座っても、ヒザまわりには一定の余裕がある。
対するシエンタの3列目はシートそのものが薄く平板であるだけでなく、足もとの余裕も明らかに小さい。このあたりも良い悪いというより、「2列が本来の姿?」というシエンタの設計思想の表れと理解すべきだろう。もっとも、シエンタの3列目にも178cmの筆者がなんとかヒザをそろえて座ることは可能で、ヘッドルームにも不足はない。シエンタの全長や全高を考えれば、これはたいしたものだ。
2列目については、空間そのものはどちらも似たようなものだが、シート自体の座り心地やホールド性は、見た目どおりフリードのキャプテンシートに軍配が上がる。
ただ、ちょっと気になるのはフリードのキャプテンシートのヒール段差(座面とフロアとの高低差)がちょっと小さいことで、身長178cmの筆者が普通に座ると、太ももがわずかに浮いてしまう。脚を伸ばせば少しはマシになるが、前席下に電動機構が配されるハイブリッドでは、つま先が途中までしか差し込めず、体格によっては伸ばしきることができないのがタマにキズである。
フリードとシエンタの基本パッケージレイアウトのちがいが象徴されるのは1列目だ。ドライビングポジションは、フリードのほうがアップライトで目線が高くミニバン感が強い。これと比較するとシエンタの運転席は、ミニバンというよりハイトワゴンだ。
(後編に続く)
(文=佐野弘宗/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)
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テスト車のデータ
ホンダ・フリードe:HEVエアーEX
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4310×1695×1755mm
ホイールベース:2740mm
車重:1480kg
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
エンジン最高出力:106PS(78kW)/6000-6400rpm
エンジン最大トルク:127N・m(13.0kgf・m)/4500-5000rpm
モーター最高出力:123PS(90kW)/3500-8000rpm
モーター最大トルク:253N・m(25.8kgf・m)/0-3000rpm
タイヤ:(前)185/65R15 88S/(後)185/65R15 88S(グッドイヤー・エフィシェントグリップ パフォーマンス2)
燃費:25.4km/リッター(WLTCモード)
価格:304万7000円/テスト車=357万1700円
オプション装備:ボディーカラー<フィヨルドミストパール>(3万8500円)/マルチビューカメラシステム+LEDアクティブコーナリングライト+アダプティブドライビングビーム+後退出庫サポート(11万9900円) ※以下、販売店オプション Honda CONNECTナビ9インチ(20万2400円)/ナビ取り付けアタッチメント(9900円)/ナビフェイスパネルキット(5500円)/ETC2.0車載器(1万9800円)/ETC2.0車載器取り付けアタッチメント(8800円) フロアカーペットマットプレミアム(5万2800円)/ドライブレコーダー3カメラセット(6万7100円)
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:2544km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(6)/山岳路(3)
テスト距離:240.2km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:19.5km/リッター(車載燃費計計測値)
トヨタ・シエンタ ハイブリッドZ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4260×1695×1695mm
ホイールベース:2750mm
車重:1370kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直3 DOHC 12バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:91PS(67kW)/5500rpm
エンジン最大トルク:120N・m(12.2kgf・m)/3800-4800rpm
モーター最高出力:80PS(59kW)
モーター最大トルク:141N・m(14.4kgf・m)
システム最高出力:116PS(85kW)
タイヤ:(前)185/65R15 88S/(後)185/65R15 88S(ブリヂストン・エコピアEP150)
燃費:28.2km/リッター(WLTCモード)
価格:291万円/テスト車=338万4100円
オプション装備:185/65R15タイヤ+15×5 1/2Jアルミホイール<切削光輝+ブラック塗装/センターオーナメント付き>(5万5000円)/トヨタチームメイト アドバンストパーク+パーキングサポートブレーキ<周囲静止物>+パノラミックビューモニター<床下透過表示機能付き>+パーキングサポートブレーキ<後方歩行者>(9万3500円)/ディスプレイオーディオ<コネクティッドナビ>Plus(8万9100円)/天井サーキュレーター+ナノイーX(2万7500円)/アクセサリーコンセント<AC100V・1500W/2個/非常時給電システム付き>(4万4000円)/ドライブレコーダー<前後方>+ETC2.0ユニット(3万1900円)/コンフォートパッケージ<UVカット・IRカット機能付きウインドシールドグリーンガラス[合わせ・高遮音性ガラス]+スーパーUV・IRカット機能付きフロントドアグリーンガラス+スーパーUV・IRカット機能付きプライバシーガラス[スライドドア+リアクオーター+バックドア]+シートヒーター+ステアリングヒーター+本革巻き3本スポークステアリングホイール[シルバー加飾付き]>(7万9200円)/ファンツールパッケージ<カラードドアサッシュ+カーキ内装>(0円) ※以下、販売店オプション フロアマット<デラックスタイプ>(4万2900円)/ラゲージボード(1万1000円)
テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:1万4597km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(6)/山岳路(3)
テスト距離:208.0km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:19.3km/リッター(車載燃費計計測値)

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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