第808回:クルマ好きに国境なし! 初開催の「Hyudai N × TOYOTA GAZOO Racing FESTIVAL」に見る自動車文化交流
2024.10.28 エディターから一言 拡大 |
日本のトヨタと韓国のヒョンデが協力して、メーカーの垣根を越えた盛大なファン感謝イベントを開催。初の試みとなった「Hyudai N × TOYOTA GAZOO Racing FESTIVAL」の内容とは?
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トップ同士の「やってみる?」から実現
WRCのトップカテゴリーに参戦しているワークスチームは3チーム。うち2チームは言わずと知れたトヨタとヒョンデのアジアの2チーム。Mスポーツ(フォード)はぶっちゃけ1軍半的な立ち位置でもあるので微妙なところ。そんなWRCの現場で感じるのはトヨタとヒョンデの人気の高さや、それに伴う存在感だ。
アジアからはるか遠くヨーロッパなんかに大枚はたいて取材に行っているボクにとって(最近行けてないけど)、この2チームの選手はもちろん、関係者や友人たちの活躍を見るにつけ、経済的にも体力的にもつらいものの、ああ、オレも頑張らないとなあと勝手にシンパシーを感じていたわけです。
そんなアジアの自動車メーカー2社のめちゃくちゃエライ人であり、お互い生粋のカーガイであるトヨタの豊田章男会長とヒョンデの鄭 義宣(チョン・ウィソン)会長が2024年の春に会った際に話が盛り上がり、んじゃ、2社でイベントやっちゃう? みたいな流れになったようなんです。そんな初の試み「Hyudai N × TOYOTA GAZOO Racing FESTIVAL」は、たまたまなのか狙ったのかはわからないけれど、ラリージャパン直前の同年10月27日に、韓国・ソウルからクルマで約1時間ほどの、エバーランドという遊園地に併設された龍仁スピードウェイで開催されました。
たまたま韓国の友人と「ソウルで一杯やろうぜ!」って約束があったので、こりゃちょうどいいや、飛行機も沖縄に行くより安かったしで突撃取材を敢行しました。あまりに突然すぎて、関係者の皆さまにご尽力いただき大変感謝です。おかげでこうして焼肉代も稼げました!
本気のイベントにファンも興奮
日本の岡山国際サーキットに似た雰囲気の場所で、そんなに広くもないしこぢんまりしたイベントかな、と思いきや、着いてみてびっくり。両社ともに気合の入ったガチなイベントでした。
地元のヒョンデはHyundai WRTから、最終戦ラリージャパンを前にランキングトップのティエリー・ヌービルを筆頭にダニエル・ソルドとアンドレアス・ミケルセンが登場。「i20N Rally HYBRID」や「i20N RAlly2」などでデモランを披露。トヨタからはTOYOTA GAZOO Racing WRTを代表してヤリ=マティ・ラトバラと勝田貴元が、日本からは全日本ラリーで活躍中で貴元の父である、勝田範彦とモリゾウこと豊田章男会長がデモランを担当。「GR Yaris Rally1 HYBRID」や「GR Yaris Rally2」などで、デモランというには激しすぎる走りを披露しました。
本コースではヒョンデとトヨタのオーナーたち向けの走行会を開催。ヒョンデはWRCからのフィードバックが色濃い“N”の役付きモデル、「i20 N」や「アバンテN」などのオーナーが、トヨタの車種では「GRスープラ」や「GR86」といったモデルのオーナーたちが親睦を深めていました。WRCドライバーたちはデモラン以外にジムカーナにも挑戦。アバンテNやGR86といったライバルメーカーのクルマをドライブしたりと、普段は見られない光景にギャラリーも大ウケでした。
クルマの未来も見据えたイベント
とはいえ、これはモータースポーツに全振りしたイベントではなく、会場には、水素と電気のハイブリッドという、未来感満載なのになぜか“昭和の改造車な外観”をイメージさせるヒョンデの「N Vision74」、トヨタは実戦で開発を続ける水素エンジン搭載の「GRカローラ」に、まさに昭和のクルマをベースに未来の方向性を示した「AE86 H2コンセプト」といった水素を動力源とする内燃機関のクルマを展示。カーボンニュートラルの推進をリードする両社の展示に訪れた人々も関心を示していました。
オープニングで豊田会長、チョン会長ともにイベントを実現できたことをうれしく思うと、サポートしてくれた人たちへの感謝を述べ、両社が協力し合ってモビリティーの未来や、ドライビングの興奮や喜びをクルマ好きの人々に伝えていきたいと語っていました。そのためのひとつの手段がモータースポーツであり、公道が舞台となるラリーは最も適した舞台だとあらためて感じました。
ちなみに、ボクは今年の5月にジムカーナの取材のため、このサーキットに日本から愛車の「プジョー106ラリー」で自走で行ってきました。“初韓国”だったのだけれど、うわさに聞いていためちゃくちゃ荒い運転マナーとはいかほどのもんや? とワクワクしながら上陸してみたら、なんてことはない、イタリアやトルコに比べたらはるかにおとなしくて、拍子抜け。そりゃまあ日本よりは若干アグレッシブな運転が目立つけれど……。
新たな試みが文化をはぐくむ
ところで、日韓両国の若いクルマ好きたちが自分のクルマでお互いの国を旅することがはやっているのを知ってますか? 今回のイベントでも、日本からS15「シルビア」で走ってきました! っていう若者に会いました。しかも初海外が韓国自走旅。いいぞ、若者! クルマ離れ、海外旅行離れが叫ばれる昨今にあって、その意気やよし!
韓国の友人に聞くと、日本と同様に韓国でもいわゆる「若者のクルマ離れ」が進んでいるようです。日本のアニメやマンガも人気で、「そういったいろんなコンテンツが増えているのも(クルマ離れの)理由かなあ」って、マッコリをちびちびやりながら少し悲しそうな目をして言っていました。
だけど、日本と同様にクルマ好きな若者は確かに存在していて、周囲からはクルマなんかにお金を注ぐ“変な人”扱いをされる彼らは、そんな言われなき迫害にも負けず、クルマ道を邁進している。なかにはアニメとクルマが好きというハイブリッドな人もいて、“痛車”も多数存在しています。韓国でも痛車は「イタシャ」と呼ばれていて、日本のコミケやオートサロンに自走でやってくる人たちの姿も……。そういや、今回のイベントでも5月に見たDC2「インテグラ タイプR」の痛車を見かけたなあ。
豊田会長とチョン会長の「アジアのクルマ好きをもっと増やしたい」という心意気は、少しずつではあるけれど日韓両国のクルマ好きな若者を刺激していて、過去には悲しい出来事があった両国だけれど、クルマを通してお互いをリスペクトしあう土壌ができつつあると感じました。GRのフラッグを振りながらデモランに声援を送る韓国の人々を見て、ありきたりな言葉だけれど、クルマ好きに国境なんかないなあとあらためて感じたとてもステキなイベントでした。次回があるかどうかは知らないけれど、ぜひ富士でも開催してほしいなあ。きっと韓国から自走でやってくるファンもいると思います。
(文と写真=山本佳吾/編集=関 顕也)

山本 佳吾
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