ボルボS60 2.0T(FF/6AT)【海外試乗記】
ラテン系スウェディッシュ! 2010.11.03 試乗記 ボルボS60 2.0T(FF/6AT)フルモデルチェンジで2代目に進化した「ボルボS60」。スポーティなスタイリングの新型セダンはどんな走りを見せるのか? イタリアはベローナ郊外で試した。
25年前のハナシではありますが
「フライング・ブリック」をご存じだろうか。かつて欧州ツーリングカーレース選手権(ETCC)を戦った「ボルボ240ターボ」があまりに速かったために付けられたニックネームだ。ブリックとはレンガのこと。「ボルボ240」の角張ったボディを揶揄(やゆ)して(いや、この場合は尊敬して、といった方が正しい)、こう呼ばれたのだ。
ご存じない方のためにもうちょっと説明しておくと、スイスのスゴ腕チューナー、エッゲンバーガーが手がけた「ボルボ240ターボ」は、1980年代半ばのツーリングカーレースでそれこそ飛ぶように走り、1985年のETCCでチャンピオンに輝いた。1985年には日本にもやってきて、インターTEC(懐かしい!)で1-2フィニッシュを飾り、なんと3位を7周遅れにしたという伝説まで残っている。ちょっと信じられない話である。
今から25年も前の話を蒸し返すのもナンではある。けれども、筆者にとっては多感なティーンエイジャーだったときの出来事なので、忘れようにも忘れられないのだ。同じスポーティなボルボでも、ずいぶん変わったもんだよなあと、目の前の「S60」を見てしみじみ思う。その低く寝かされた身構えは、ベンツよりもビーエムよりも、アルファ・ロメオよりもスポーツカー的に映る。
余裕を求めるなら2リッター
もっとも、どんなにスポーツカー的になっても、実用性を犠牲にしないのがボルボの流儀である。運転席に着くと、「フリーフローティング・センタースタック」と呼ばれるしゃれたセンターパネルがこちらを向いていて、ドライバーが主役のスポーティな部屋作りがなされている。しかし、窮屈さはまったく感じない。あの大振りで、体を包むようなボルボのシートもしっかり引き継がれている。それは後席も同じで、クーペのようなルーフラインを持つにもかかわらず、頭上には十分な空間が残されている。
今回試したのは、先ごろ「XC60」のラインナップにも加わった、2リッター直4ターボ(203ps、30.6kgm)ユニットに、ボルボが“パワーシフト”と呼ぶ6段のDCT(デュアルクラッチトランスミッション)を組み合わせたモデルだ。早くも1000rpm台の後半から力強いトルクを生み出し、イタリア・ベローナ郊外のストップ・アンド・ゴーでもとても扱いやすい。
そしてこの2リッター直4ターボは、エンジン音が静かで、回転フィールのキメが細かく思えた。実はさっきまで1.6リッター直4ターボ(180ps、24.5kgm)を搭載する新型ワゴン「V60 T4」に乗っていて、あちらがどちらかといえば「頑張って回る」という印象だったので、2リッターユニットが持つ余裕が際立って感じられたのかもしれない。1.6リッターと2リッター、両エンジンの差ははっきりと存在している。
日本へは来春上陸
スタイリングがそうなら、ハンドリングも今までのボルボとは明らかに一線を画している。テスト車の足まわりが欧州向けでは標準となる「ダイナミックシャシー」仕様だったこともあり、ステアリング操作にダイレクトに反応する気持ちのいいハンドリングを備えていた。そのキビキビとしたフットワークは、ボディ剛性の面で有利なセダンの「S60」の方がワゴンの「V60」より一枚上手。60シリーズの持ち味であるスポーツ性を体感したければ、「S60」の方がわかりやすいはずだ。
ただし今回の試乗会では、ワゴンの「V60」にも乗り、1.6リッターエンジンを搭載する「T4」の軽快感が非常に好印象だったこともあらためて強調しておきたい。つまり山道だけを考えるなら、1.6リッターの、ダイナミックシャシーを装着した、セダンボディの「S60 T4」がベストではないかという想像している次第だ。
さらにこのサスペンション、乗り心地が良いこともすでに「V60」の試乗記でお伝えしたとおりだ。ムダな動きが抑えられ、フラット感が強いのに、キツい突き上げがない。適度なしなやかさが隠し味でちゃんと効いている。スポーティなのに遠くまで旅したくなる足まわり、とでも言おうか。
この「S60」、日本には来春上陸する。そのとき、この2リッター直4ターボ搭載モデルは「2.0T」ではなく「T5」と呼ばれ、パワーも203psから240psに引き上げられている予定というから、このリポートはだいたい2割増しで読んでもらうといいかもしれない!
(文=竹下元太郎/写真=ボルボ・カーズ・ジャパン)

竹下 元太郎
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