フォルクスワーゲン・パサートeHybridエレガンス(FF/6AT)
フォルクスワーゲンの新境地 2024.12.18 試乗記 フォルクスワーゲン(VW)の世界的な大黒柱である「パサート」が、9代目にフルモデルチェンジ。新世代のプラットフォームを得た基幹車種の仕上がりを、プラグインハイブリッド車(PHEV)の「eHybridエレガンス」で確かめた。さよならセダン
新型パサートは9代目となる。「ゴルフ」が現在8代目だから、それより1世代多い。実際、「アウディ80」のVW版として生み出された初代パサートの登場も、初代ゴルフより1年早い1973年である。「ポロ」のデビューもゴルフと同年の1974年なので、パサートは現行VWとしては最年長のブランドとなる。
その歴史の長さもさることながら、あらためて驚くのは、3400万台超というパサートの累計販売台数だ。あのビートルの約2200万台を軽く超えて、ゴルフの3700万台(2024年4月時点)と大差ない。ゴルフのほうが圧倒的に売れている日本市場だけの感覚では、パサートの本質は理解できないわけだ。
新型パサート最大のトピックは、欧州に続いて日本でもセダンが姿を消して、VWでいうところの「ヴァリアント」=ステーションワゴンのみとなったことだ。世界的なセダンばなれを受けたものと思われるが、伝統的なステーションワゴンにしても、今日では一定以上の数がさばけるのは欧州と日本くらいだ。新型パサート ヴァリアントの販売は、この2地域が中心となるのだろう。ちなみに、中国市場では新型パサートのセダンモデルが姿を見せたが、初代からずっとパサートが売られてきた北米市場では、2023年をもってパサートそのものが姿を消している。
日本仕様として導入される新型パサートは、ひとまずパワートレインが3種類で、バリエーションは計7種類。パワートレイン/ドライブトレインは、マイルドハイブリッド付きの1.5リッターガソリンターボの「eTSI」と、同じエンジンでプラグインハイブリッドとなる「eHybrid」、そして2リッターディーゼルターボに4WDを組み合わせた「TDI 4MOTION」である。
このうちTDIの上陸は少し遅れるそうで、東名高速の御殿場インターチェンジ付近を拠点とした今回のメディア試乗会に用意されたのは、eTSIとeHybridという、1.5リッターガソリンターボをベースとする2機種だった。
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よりモダンで合理的になった操作系
今回webCG取材班にあてがわれた車両は、PHEVのeHybrid、トリムグレードは落ち着き系の「エレガンス」だ。eHybridには、ほかにスポーツ系の「Rライン」も用意されている。
新型パサートのインテリアも、現行ゴルフ8に続いて一気にデジタル化された。なかでも目を引くのは15インチという巨大なセンターディスプレイだ。欧州では12.9インチが標準で、15インチはオプションあつかいだが、日本ではeTSIのエントリーグレード「エレガンスベーシック」以外では、これが標準で装備される。
ゴルフ8で話題となったエアコン温度調整とオーディオ音量のタッチスライダーは新型パサートにも残されるが、ゴルフ8の上級モデルに使われていたタッチ式ステアリングスイッチは、世界的に不評だったといい、今回は古典的なハードボタンを継承している。また、センターディスプレイの最下段にはエアコン調整画面、最上段にはドライブモードを含めた頻繁に使う機能のショートカットが常駐。ゴルフ8のように、ダッシュ上のタッチボタンでいちいち機能を選ぶ必要がなくなった。
さらにはシフトセレクターがステアリングコラムに移動したことで、センターコンソールのほぼ全面が収納になったのも今っぽい。ちなみに、シフトセレクターの操作方法は一般的なレバー式ではなく、電気自動車の「iD.4」同様、握りの部分を上下にひねるロータリー式である。
こうしたステアリングスイッチとセンターディスプレイ、シフトセレクターの組み合わせは、今回のメディア試乗会に同時に持ち込まれた新型「ティグアン」もほぼ同様で、これがVWの新しいインターフェイスということだろう。ロータリー式のシフトセレクターはちょっと慣れが必要だが、そのほかの点では、ゴルフ8の初期型にあった違和感や使いにくさは、ほぼ解消されたと思う。
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EV走行距離はおよそ2.5倍に
新型パサートのプラットフォームは、ゴルフ8に続いて、「MQB」の発展版である「MQB evo」となった。2840mmというホイールベースは、同じFFレイアウトの伝統的なDセグメント乗用車「ホンダ・アコード」より10mm大きい。先代比+50mmというホイールベースの伸長ぶんは、すべて後席レッグルームに充当されているという。
実際、新型パサートの後席は、身長180cmクラスの人でも脚がゆうゆうと組めるくらい、だだっ広い。「マツダ6」や「トヨタ・カムリ」が国内販売をやめてしまった今、SUVはいやだけど、とにかく室内の広いクルマがほしい……という一部好事家にとって、新型パサートは貴重な存在となるだろう。
試乗したeHybridは、新型パサートでは主要グレードのひとつになりそうなPHEVである。パワートレインは先代にあった「GTE」と同様に、エンジンと6段デュアルクラッチトランスミッションの間に、モーターをサンドイッチする構造だ。
ただ、先代GTEのエンジンが1.4リッターターボだったのに対して、今回は最新世代の1.5リッターターボとなる。また、リチウムイオン電池の総電力量も従来のほぼ2倍となる25.7kWhで、電気のみでの最大航続距離(WLTCモード)は約2.5倍の142kmに達した。
新型パサートのeHybridには、自動的に最適な駆動形態を選択する「Hybrid」と電動走行優先の「E-MODE」があるが、GTEにあったチャージモード的な機能は省かれた。チャージモードは充電設備は持っていないけど、いろいろなパターンを試したい……という、われわれのような人種には重宝されるが、実際のユーザーにはあまり意味がない。チャージモードはもともと効率的ではないうえに、それが現実に役立つのは、電気のみで走るクルマだけが乗り入れ可能で、かつPHEVもそこに含まれるような交通規制に、予定外に出くわすようなケースだ。しかし、少なくとも日本では、そうした規制じたいがほぼ見られない。
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素晴らしい出来栄えの「DCC Pro」
eHybridは電池残量がたっぷりあっても、アクセルを奥まで踏み込むとエンジンが目をさますが、その始動や駆動の出入りもスムーズで、静粛性は常に高い。ただ、電動パノラマスライディングルーフも備わっていた取材車の車両重量は1860kg。エンジンやモーターのスペックからも想像できるように、その動力性能は上級乗用車としても十二分だが驚くほどパワフルというわけでもない。あえて気になる点をあげるとすれば、回生協調ブレーキのマナーにちょっとクセがあるくらいだ。
新型パサートには電子制御連続可変ダンパーの「DCC Pro」がオプションで用意されており、今回の取材車にも装着されていた。DCC Proは従来の「DCC」に対して、伸び側と縮み側の減衰を独立制御できる2バルブ構造なのが特徴だ。VWの担当者から事前に「DCC Proはすごくいいんです」と自慢されていたが、はたしてそのとおりだった。
新しいDCC Proも従来のDCCと同じく、「コンフォート」や「スポーツ」といったデフォルトのドライブモードに連動するほか、それとは別に全15段階の細かい調整も可能だ。もっともソフトな設定にすると、明確なショックを伝えず、ふわりと吸収する。従来のDCCだと、そのぶんオツリめいた揺り戻しが副作用として残るが、新型パサートにはそれがない。細かい凹凸でもつっぱることなく、無駄な上下動もなく、ロールも最小限……と、そのフットワークのデキはほとんど文句なし。素直に素晴らしい。
また、減衰を引き締めていくと、上下動が減ってステアリング反応は鋭くなるが、その肌ざわりは、これまでより明らかにソフトで快適なのだ。フランスのシトロエンでいうと、「ハイドラクティブ」というより最上級に仕上がった「ハイドロニューマチック」のような……といえば、一部の好事家にはご理解いただけるだろうか。
いずれにしても、撮影をのぞくと1時間にも満たない今回の試乗時間では、まるで乗り足りない気分だった。DCC Proを備えた新型パサートの乗り心地はそれくらい、VWとしては新境地の仕上がりだと思う。
(文=佐野弘宗/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
フォルクスワーゲン・パサートeHybridエレガンス
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4915×1850×1500mm
ホイールベース:2840mm
車重:1860kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:6段AT
エンジン最高出力:150PS(110kW)/5000-6000rpm
エンジン最大トルク:250N・m(25.5kgf・m)/1500-4000rpm
モーター最高出力:116PS(85kW)/2500-4000rpm
モーター最大トルク:330N・m(33.6kgf・m)/0-2250rpm
タイヤ:(前)235/45R18 94W/(後)235/45R18 94W(グッドイヤー・イーグルF1アシメトリック6)
ハイブリッド燃料消費率:18.0km/リッター(WLTCモード)
充電電力使用時走行距離:153km(プラグインレンジ、国土交通省審査値)
EV走行換算距離:142km(等価EVレンジ、国土交通省審査値)
価格:655万9000円/テスト車=711万7800円
オプション装備:レザーシートパッケージ(17万6000円)/DCC Proパッケージ(17万6000円)/電動パノラマスライディングルーフ(16万5000円) ※以下、販売店オプション フロアマット<テキスタイル>(4万1800円)
テスト車の年式:2024年型
テスト車の走行距離:694km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
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佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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