フォルクスワーゲン・パサートヴァリアントTSIエレガンス アドバンス(FF/7AT)
積み重ねの美学 2021.08.28 試乗記 新世代の1.5リッターガソリンエンジンを搭載した「フォルクスワーゲン・パサートヴァリアント」に試乗。室内が広く快適で、荷物もたくさん積めるという実用性に注目が集まるパサートだが、その走りはいかなる進化を遂げたのか。2021年の主役は「1.5 TSI Evo」
2021年のフォルクスワーゲンは、ニューモデルラッシュである。主力の「ゴルフ」シリーズがフルモデルチェンジし、ようやく日本でも発売になったのに加えて、「パサート」「ティグアン」「アルテオン」のマイナーチェンジ版が立て続けに導入され、さらに「ゴルフトゥーラン」と「Tクロス」のエンジンバリエーションにも変更が加えられている。
このニューモデルラッシュを支えるひとつの要素が、ガソリンエンジンの世代交代。ダウンサイジングコンセプトを掲げて過給機付きの1.4リッター直列4気筒ガソリンエンジンの「1.4 TSI」が登場したのが2006年のこと。
当初はターボとスーパーチャージャーの2つを搭載する“ツインチャージャー”の1タイプだったが、その後はターボのみの“シングルチャージャー”や、気筒休止機構の「アクティブシリンダーマネジメント(ACT)」を搭載したバリエーションを展開。これが多くのモデルに搭載され、ガソリンエンジンの主力として、フォルクスワーゲンの一時代を築いてきた。
この主役が1.5リッター直列4気筒ガソリンターボの「1.5 TSI Evo」エンジンに世代交代し、マイナーチェンジなどのタイミングで各モデルに搭載されるようになった。今回、試乗したパサートシリーズでも、ガソリンエンジンモデルには新しい1.5 TSI Evoエンジンが採用されているのだ。
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デジタル化も良しあし
この1.5リッターエンジン、最高出力150PS/5000-6000rpm、最大トルク250N・m/1500-3500のスペックは、従来の1.4 TSIとまったく変わりがないが、排気量を拡大しただけでなく、気筒休止機構のACTや高圧の直噴システムなどに手が加えられているのは想像に難くない。組み合わされるトランスミッションは、デュアルクラッチギアボックスの7段DSGで、乾式単板クラッチを用いることで、軽量かつ高効率を実現しているのは従来どおりである。
もちろんマイナーチェンジのハイライトはエンジンの変更だけではない。エクステリアでは、前後バンパーやラジエーターグリルのデザインなどを変更するとともに、リアの「PASSAT」のバッジをVWエンブレムの下に移すなど地道な手直しが行われている。自動的に配光を制御するLEDマトリクスヘッドライト「IQ.LIGHT(アイキューライト)」が標準装着となるのはうれしいところ。0〜210km/hで動作する同一車線内全車速運転支援システム「Travel Assist(トラベルアシスト)」も全車に標準である。
インテリアでは、常時オンライン接続可能なインフォテインメントシステムがこのパサートにもいよいよ搭載され、ディスプレイオーディオの「Ready 2 Discover(レディートゥーディスカバー)」またはナビゲーションシステムの「Discover Pro(ディスカバープロ)」ともにオンランサービスの「We Connect(ウィーコネクト)」が利用可能になった。
細かいところでは、アナログクロックの代わりにハザードランプのスイッチがダッシュボード中央に配置されている。また、エアコンのパネルが一新され、タッチスライダーにより温度調節が可能になった。ただ、パネルそのものが低い位置にあるため、操作の際にいちいち視線を落とすのが面倒。個人的にはカチカチと回す、従来のダイヤル式のほうが使いやすいと思う。デジタル化も良しあしである。
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新エンジンの進化を実感
さて、今回試乗したのは、ナッパレザーのパワーシートや純正ナビゲーションシステム、駐車支援システム「Park Assist(パークアシスト)」、アラウンドビューカメラ「Area View(エリアビュー)」、デジタルメーターの「Digital Cockpit Pro(デジタルコックピットプロ)」など、快適装備や先進装備を充実させた「エレガンス アドバンス」。このグレードにだけ、フロントシートにベンチレーション機構が搭載されるのも見逃せないポイントである。
前置きはこのくらいにして、さっそく走らせると、4気筒ターボエンジンの感触が明らかに良くなっていることに気づく。1.5 TSI Evoは低回転から十分なトルクを生み出し、1500kgのパサートヴァリアントに対して、不満のない加速をもたらす。しかも、以前の1.4ターボに比べるとアクセルペダルを踏んだときの反応が素早くなり、静粛性やスムーズさも向上しているのだ。おかげで、これまで以上に街乗りがしやすくなった。
一方、アクセルペダルを深く踏み込めば、5000rpmあたりまで勢いが続く。とくにスポーティーな性格ではないが、追い越しなどの場面で力不足を感じることはないだろう。
一般道や高速道路でアクセルペダルを軽く踏んで巡航する場面では気筒休止機構のACTが作動する。それはメーターに「eco」や「2シリンダーモード」の表示が現れるのでわかるのだが、これまでの1.4ターボよりも頻繁に2気筒運転を行っているようで、実用燃費の向上が期待できそうだ。
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とにかく広い
パサートシリーズでは、フロントにマクファーソンストラット式、リアに4リンク式のサスペンションを採用する。タイヤに関しては、パサートヴァリアントTSI エレガンス アドバンスでは245/45R18サイズを装着。このコンビネーションでは乗り心地は少し硬めだが、走りだしてしまえば十分快適で、高速走行時のフラット感もまずまずといったところだ。
ただ、このクラスであれば、さらに洗練された乗り心地を期待したくなるのも確かで、オプションでもいいので、ダンピングコントロールサスペンションの「DCC」が選べるようになるとうれしい。
ところで、パサートシリーズといえば、クラストップレベルの広い室内が自慢であるが、あらためてチェックしてみると、後席は無理なく足が組めるうえ、後方にルーフが伸びたヴァリアントならヘッドルームも余裕のひとこと。ラゲッジスペースも、後席を使用したままでも110cm強も奥行きが確保され、大人4人とたくさんの荷物を楽に飲み込んでしまうキャパシティーは見事というしかない。
フォルクワーゲンというと、どうしてもゴルフばかりに注目が集まるが、より広いスペースを求める人にはこのパサートヴァリアントは見逃せない存在。ゴルフに比べると地味だが、買ってよかったと思える一台なのである。
(文=生方 聡/写真=神村 聖/編集=櫻井健一)
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テスト車のデータ
フォルクスワーゲン・パサートヴァリアントTSIエレガンス アドバンス
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4785×1830×1510mm
ホイールベース:2790mm
車重:1500kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:150PS(110kW)/5000-6000rpm
最大トルク:250N・m(25.5kgf・m)/1500-3500rpm
タイヤ:(前)235/45R18 94W/(後)235/45R18 94W(ピレリ・チントゥラートP7)
燃費:15.0km/リッター(WLTCモード)
価格:519万9000円/テスト車=523万2000円
オプション装備:なし ※以下、販売店オプション フロアマット<テキスタイル>(3万3000円)
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:605km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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