イヤーカーでその市場の動向がわかる? 日・欧・米のカー・オブ・ザ・イヤー受賞車を見比べてみる
2025.02.27 デイリーコラム電動車が注目される欧州COTY
ルノー・ジャポンは2025年1月、2025年度のヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤー(欧州COTY)に新型電気自動車(BEV)「ルノー5(サンク)E-TECHエレクトリック」と、そのホットバージョン「アルピーヌA290」が選出されたというニュースリリースを配信した。
じつはルノー車が欧州COTYを受賞するのは今回で通算8回目、しかも2年連続である。2024年度の欧州COTYは同じくBEVの「セニックE-TECHエレクトリック」だったが、それについてのプレスリリースをルノー・ジャポンは出さなかった。その理由は、セニックを日本に導入する予定がまったくないからだろう。いっぽう、5およびA290については、2024年の世界初公開当初から、ルノー・ジャポンは「日本導入を検討」としている。
ところで、近年の欧州COTYは2018年度にBEVの「ジャガーIペース」が受賞して以降、その獲得車のほとんどがBEVとなっている。2019年度の「プジョー208」と2023年度の「ジープ・アベンジャー」はBEVとエンジン搭載車の二刀流(アベンジャーはハイブリッド車)で、前出のセニックと5/A290に加えて、2021年度の「キアEV6」もBEV専用車である。唯一の例外は2020年度の「トヨタ・ヤリス」だけだ。
対して、同時期の日本カー・オブ・ザ・イヤー(日本COTY)受賞車は2018-2019年度の「ボルボXC40」にはじまり(XC40は2018年度の欧州COTYも獲得)、以降は順に「スバル・レヴォーグ」「日産ノート/ノート オーラ/ノート オーラNISMO/ノートAUTECHクロスオーバー」「日産サクラ/三菱eKクロスEV」「トヨタ・プリウス」「ホンダ・フリード」という顔ぶれとなっている。このうち、BEVは2022-2023年度のサクラ/eKクロスEVだけで、2020-2021年度のレヴォーグにいたっては、電動車ですらない純エンジン車だ。電気ずくめの欧州とは、ある意味で好対照である。
ところ変わればイヤーカーも変わる
わが日本の新車市場におけるBEVの存在感は、まだまだ高くないのはご承知のとおり。フリードがイヤーカーを獲得した先日の日本COTY 2024-2025でも、ノミネートされた国産車18台のなかにBEVは「ホンダN-VAN e:」と「三菱ミニキャブEV」の2台しかなかった(燃料電池車は2台あったが)。しかも、この2台は完全な新型車でもない。
いっぽう、つい先日まで官民あげて「2035年までにエンジン搭載車の全面販売禁止」にまい進してきた欧州勢は、近年の新開発車の大半がBEVになってしまっている。もちろん、マイルドハイブリッドやプラグインハイブリッドを含めたエンジン搭載車でも、フルモデルチェンジとうたう改良は定期的に実施されているが、近い将来の廃止が想定されるエンジン搭載車に多額の開発コストが投じられるわけもない。実際、ここ数年で登場したエンジンを搭載する欧州ニューモデルのプラットフォームやパワートレインは多くが従来改良型で、商品としても新鮮味に欠けていたのは否定できない。これでは欧州COTY受賞車がBEVばかりになるのも当然だ。
まあ、COTYというものは、良くも悪くもクルマ業界のお祭りにすぎないが、こうして見ると、それなりに各地域の世相を反映してもいるのだ。そんなことを思いながら、欧州COTY(1964年創設)と日本COTY(1980年創設)に続いて長い歴史をもつノースアメリカン・カー・オブ・ザ・イヤー(北米COTY)の顔ぶれを見ると、これまた北米クルマ市場のいまが垣間見えて興味深い。
北米ではホンダが存在感を放つ
北米COTYの創設は1994年だが、2017年度からは「乗用車」「トラック」「ユーティリティー≒SUV」の3部門に分割された。その2017年度以降の北米COTY受賞車は、乗用車部門が「シボレー・ボルトEV」「ホンダ・アコード(先代)」「ジェネシスG70」「シボレー・コルベット」「ヒョンデ・エラントラ」「ホンダ・シビック(現行ガソリン車)」「アキュラ・インテグラ」「トヨタ・プリウス」「ホンダ・シビック ハイブリッド(現行e:HEV)」である。
同じくトラック部門は2017年度の「ホンダ・リッジライン」から「リンカーン・ナビゲーター」「ラム1500」「ジープ・グラディエーター」「フォードF-150」「フォード・マーベリック」「フォードF-150ライトニング」「フォード・スーパーデューティー」「フォード・レンジャー」となっている。
そして、いわゆるSUV部門は2017年度の「クライスラー・パシフィカ」を手はじめに「ボルボXC60」「ヒョンデ・コナ」「キア・テルライド」「フォード・マスタング マッハE」「フォード・ブロンコ」「キアEV6」「キアEV9」「フォルクスワーゲンID.BUZZ」が獲得した。
近年の北米COTY受賞車の顔ぶれを見て思うのは、日本未導入のリッジラインやアキュラ・インテグラを含めたかの地でのホンダの変わらぬ存在感と、韓国ヒョンデ/キアグループの勢いである。ここにあげただけでも、ヒョンデ/キアの北米COTY受賞車は(2019年度乗用車部門のジェネシスも含めると)6台にのぼり、われらがホンダ(5台)やトヨタ(1台)をしのぐ。
そして、もうひとつ気づかされるのが、バイデン前政権の影響下にあった2021年度から2025年度までの北米COTY受賞車に、BEVが多いことだ。同時期内では、フォードのマスタング マッハEとF-150ライトニング、そしてキアのEV6とEV9、そしてフォルクスワーゲンのID.BUZZがBEVである。
ご承知の向きも多いように、欧州ではどうやらエンジン車の販売容認期間が延長されるようだし、北米はあのBEV嫌い(?)のトランプ大統領が復権した。……ということから素直に考えると、欧州COTYと北米COTYでは今後、BEVの存在感が少し後退する可能性が高い。いっぽう、近年BEV存在感が低い日本では、ダイハツ/スズキ/トヨタ連合による軽商用BEVをはじめ、次期「日産リーフ」、スズキのグローバルSUVの「eヴィターラ」、ホンダの軽乗用BEVの「N-ONE:e」(?)などなど、2025年度中の発売がウワサされる新型BEVが多い。さて、次回の各国COTYはどうなりますかね?
(文=佐野弘宗/写真=ルノー、ジャガー・ランドローバー、ステランティス、ボルボ・カーズ、スバル、日産自動車、ゼネラルモーターズ、ヒョンデ、本田技研工業、フォード/編集=櫻井健一)
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佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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