日産の未来は明るい! 新社長と商品戦略にみる再生への曙光
2025.03.21 デイリーコラム弱い者いじめに精を出す世間に物申す
3月11日……といえば日本人にとっては災禍の光景が刻み込まれた日でもありますが、2025年のその日その時、日産自動車では取締役会が行われ、内田 誠CEOの退任が決まりました。その日の夕方にオンラインのみで開かれた会見では、内田さんに加えて次期社長に内定したイヴァン・エスピノーサCPOと、取締役会議長の木村 康社外取締役が会見を行っています。
その内容はYouTube(参照)にもアップされていますが、内田さんの忸怩(じくじ)たる思いは言葉の端々から伝わってくるような気がしました。まあその意をくむこともなく、効果測定もなされぬまま、水に落ちた犬はなんたら状態でののしりまくる一部メディアや評論家たちの態度が世論の大勢を形成しつつあるのはかなり残念な感じがしています。
そう思うのは、日産に餌付けされてるからとか株を持ってるからとかいう話ではまるでなく……というか、そういうお断りの字幅を割かないとなんないおかしな世の中自体が面倒なんですが……クルマ屋&商品軸視点の自分としては、日産の自力再生に関してはポジティブでして、どうにかうまくハンドリングできるのではと考えているからです。
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「未来は明るい」と言えるこれだけの理由
特に向こう1~2年は新技術を搭載する新開発車両の投入効果が見込まれ、その一部として第3世代の「e-POWER」を当初予定より前倒しの2025年内に投入することが発表されています。全体燃費で第1世代比20%、高速燃費では第2世代比で15%の改善をみながら、コストも第1世代比で20%削減したというこのパワートレインは、欧州向けの「キャシュカイ」や北米向けの「ローグ」、そして日本向けの「エルグランド」後継車種等に採用されることになるでしょう。
……と思いきや、頼みの米国はトランプ政権の方針で自動車の輸入関税を25%まで引き上げるブロック経済化にまい進しようとしているわけで、テネシーにある生産拠点でのローグの現地生産・調達化をさらに推し進める必要に迫られるかもしれません。いっぽう、ローグの減産で考えられる九州工場の稼働低下を穴埋めするには、エルグランド後継のヒットが欠かせなく……と、新技術で万事オーケーとはいかないところもクルマという商売の難しいところです。
ともあれ、肝となってくるのが新しい商品企画です。思えばルノー傘下でリストラの嵐が吹き荒れていた2000年付近、日産は人気が根強かった2代目「マーチ」に加えて、初代「エクストレイル」のヒットで屋台骨をなんとか支えつつ、2002年の3代目マーチ&2代目「キューブ」、2代目「エルグランド」といったモデルで時流をつかんでV字回復の足がかりとしたわけです。
で、そこで手腕が期待されるのがエスピノーサCPOです。
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新社長は新卒プロパー以上のたたき上げ
エスピノーサさんの経歴をみると、大学は機械工学専攻。卒業後は自動車情報調査会社などを経て程なくメキシコ日産に入社し、タイやASEANなどの担当を経験します。そして2016年にプログラムダイレクターとして日産本体に入り、2024年に現職に就くという、ある意味、日本の新卒プロパー以上にたたき上げの経歴で、しかも一貫して商品企画畑を歩んできています。年齢は46歳。この3月11日にテレビで報じられていたのは、左ハンドルの現行「フェアレディZ」を自ら駆って横浜の本社に入る姿です。内田さんも太鼓判を捺(お)すカーガイとのことですが、他の報道ではビッグバイクでツーリングを楽しむ姿やドラムをたたく姿なども紹介されています。webCGの読者諸兄とは話の合いそうな方かもしれません。
対外交渉や財務面など、直近課題の速やかかつスムーズな解決が大前提ではあるものの、その能力に長(た)けた部署からの選出ではなく、商品企画出身者が次期社長に就くことになったのは、課題解決のさらにその先を見据えてのことでしょう。言い換えればこの人事は、自力再生を捨てたわけではないという日産側の腹づもりを示しているともみてとれます。
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戦う意志は受け取った
日産はこの社長交代と相前後して、役員体制の見直しによるスリム化や、前述のモデル以外にも三菱からのシステム供給を受けてのプラグインハイブリッド車、「リーフ」ならびにコンパクト系の電気自動車といった新型車の投入を発表しています。これらは立場上、エスピノーサさんがなんらかのかたちで関わっているはずです。とはいえ、新社長のもとでの商品企画がクルマに反映され始めるには、早くても2~3年の時は要することでしょう。持ち駒で戦う綱渡りは続きますが、ファイティングポーズをとり続ける意志は伝わってきます。
どうやら日産は、この3月下旬に今後の新技術や新商品に関するプレゼンテーションを、相次いで行うもようです。その内容はwebCGでもリポートされることでしょう。現況での主たる目的は当然ステークホルダーへの示しになるわけですが、クルマ好きにとっては商品軸で日産の未来を垣間見る機会にもなります。「日産はこんなもんじゃない」(2025年3月11日の記者会見より、エスピノーサ氏談)と仰せるその可能性がどんなもんなのか、ぜひ注目してみてください。
(文=渡辺敏史/写真=日産自動車/編集=堀田剛資)
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渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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