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突如現れた「トヨタGT」は何を示唆するコンセプトカーなのか?

2025.08.07 デイリーコラム 渡辺 敏史
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「もうすぐ出しますよ」宣言!?

グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード(FOS)といえば、毎年7月前半にイギリスで行われる、選ばれしクルマ馬鹿(ばか)が世界のクルマ馬鹿に対して自らのクルマの馬鹿っぷりを走ってプレゼンする集いなわけでして、それを仕切るマーチ卿改め第11代リッチモンド公爵様は、自前のコースのみならず、かのロールス・ロイスの本社も含めて東京ドーム1000倍以上の敷地をおさめるガチ貴族の末裔(まつえい)なわけです。

2025年7月10日(現地時間)、その場所でトヨタが公に初お披露目したのが、2台のロングノーズスポーツカーです。うち1台、ゼッケン132は車体後端からはみ出たスワンネックの巨大なウイングを背負うことから、レース参戦を前提とした車両であることが読み取れます。対してもう1台、ゼッケン131のほうは、同じようなプロポーションながらミラー形状やタイヤサイズなどからそのストリート仕様であろうと推測することができます。

実はこのクルマ、2024年あたりからニュルかいわいでメディアにスクープされていました。出どころがトヨタである以上、その正体は2022年のオートサロンで発表された「GR GT3コンセプト」の開発車両であると考えるのが自然です。で、GT3準拠のレーシングモデルをつくるにはモノコックを共有する市販車が必要ですから、そのストリートモデルが存在することにも疑いはありません。

そんなGR GT3コンセプト、ウオッチャーにとっては、今回のグッドウッドで、ゼッケン131が内装のしつらえも含めてかなり市販車然としたカタチで現れたことが新しい驚きだったかもしれません。今までスクープされていた公道仕様は、アクリルサイドウィンドウにローマウントのGT羽根を背負った、いかにも開発中といったていでしたから。

クルマ好きのみならずメディアの視線も集まるFOSでそれを発表した理由は、「レクサスRC F」のディスコンに伴い、カスタマーレーシングの受け皿としてトヨタがきっちりマシンを供給するという意思表示。そしてその元ネタとなるストリートモデルも完成間近ですよというデモ的要素があったのでしょう。現場には招かれたプレミアムブランドやスーパースポーツブランドのカスタマーも多数いらっしゃいますから、お見知りおきいただくにはおあつらえ向きの場所でもあるわけです。

擬装を施したうえで、自動車の祭典、グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードに登場した「トヨタGTコンセプト」(写真右手前)と「トヨタGTレーシング コンセプト」(同奥)。
擬装を施したうえで、自動車の祭典、グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードに登場した「トヨタGTコンセプト」(写真右手前)と「トヨタGTレーシング コンセプト」(同奥)。拡大
左が「トヨタGTコンセプト」で、右が「トヨタGTレーシング コンセプト」。後者は、FIA GT3カテゴリーのレース参戦を視野に開発中のモデルと説明されている。
左が「トヨタGTコンセプト」で、右が「トヨタGTレーシング コンセプト」。後者は、FIA GT3カテゴリーのレース参戦を視野に開発中のモデルと説明されている。拡大
トヨタは2022年の東京オートサロンにおいて「GR GT3コンセプト」なるレーシングカーのコンセプトモデルを展示している。今回披露した車両は、その延長線上にあるものと考えられる。
トヨタは2022年の東京オートサロンにおいて「GR GT3コンセプト」なるレーシングカーのコンセプトモデルを展示している。今回披露した車両は、その延長線上にあるものと考えられる。拡大
「GR GT3コンセプト」のリアビュー。3年半前の写真ではあるが、そのシルエットは見れば見るほど「トヨタGTレーシング コンセプト」によく似ている。
「GR GT3コンセプト」のリアビュー。3年半前の写真ではあるが、そのシルエットは見れば見るほど「トヨタGTレーシング コンセプト」によく似ている。拡大
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夢のあるコンセプトカー

そのブリッピングや走行音を聞くに、フロントノーズにおさまるエンジンがともにV8であることは間違いなさそう。恐らくはクロスプレーンの4リッターツインターボというプロファイルではないでしょうか。プロポーションも含めて、「メルセデスAMG GT」とガチで対峙(たいじ)する存在になりそうです。思えばAMG GTはカスタマーレーシングではトップシェアを誇るモデル。ルーキーレーシングでもS耐参戦車両として採用していた経緯がありました。

一方で、ストリート仕様の端々を観察すると、カモフラの向こうに独特のディテールも見てとれます。フロントフェンダーは「ポルシェ911 GT3 RS」ばりの形状で、ホイールハウスの空気を効率的に抜く仕立てになっていますし、ショルダーラインの延長線にあたるリアフェンダー部には「レクサスLFA」のようなエアインレット造形も見てとれます。同様にラジエーター等の冷却チャンネルを後端に配しているのではないでしょうか。

これらのディテールをもって、このクルマのストリート仕様はLFAの後継にあたるのではないかと思えなくもないわけですが、果たしてこれがレクサスのクルマなのか、GRのクルマなのかという点は現時点でもやもやしています。ちなみにFOSでの出走にあたって発表された名前は、131が「トヨタGTコンセプト」、そして132が「トヨタGTレーシング コンセプト」です。

思うに、レクサスがLFAの後継的位置づけとしてこのモデルを売ろうとなると、ちょっと「役」が足りないような気がします。例えばストリート仕様がハイブリッドなんて話ならブランドのビジョンとも合致するかもしれませんが、現時点ではニュルかいわいを走る擬装車両にも高電圧の識別子はなく、パワートレインの全容はうかがえません。価格的には当然高額でしょうから、それを扱うファシリティーとしてはレクサスのほうが適切かもしれませんが、クルマの立ち位置としてはサーキット出自のGRブランドのフラッグシップとみるほうが自然かと思います。

現時点で車両概要がみえないということはレースデビューは2027年以降の話になるのかもしれません。でも、トヨタが自前でつくったGT3車両がカスタマーレーシングのトップカテゴリーを走るというのは夢があります。そういう意味ではお名前も「トヨタ4000GT」みたいな感じがしっくりくるのかもしれません。

(文=渡辺敏史/写真=トヨタ自動車、webCG/編集=関 顕也)

V8エンジンのものと思われる排気音を聞かせながら、グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードのヒルクライムコースを「トヨタGTコンセプト」が駆け抜ける。
V8エンジンのものと思われる排気音を聞かせながら、グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードのヒルクライムコースを「トヨタGTコンセプト」が駆け抜ける。拡大
「トヨタGTレーシング コンセプト」のリアビュー。車体の後端にそそり立つ大きなリアウイングが目を引く。
「トヨタGTレーシング コンセプト」のリアビュー。車体の後端にそそり立つ大きなリアウイングが目を引く。拡大
「トヨタGTレーシング コンセプト」のコックピットまわりはレーシングカーそのもの。下地むき出しの車内には、カーボンパーツが散見される。
「トヨタGTレーシング コンセプト」のコックピットまわりはレーシングカーそのもの。下地むき出しの車内には、カーボンパーツが散見される。拡大
レクサスのスーパースポーツ「LFA」(写真)の生産が終了したのは、2012年12月。「トヨタGT」はその後継モデルなのか。筆者は、あくまでGRブランドのフラッグシップとみる。
レクサスのスーパースポーツ「LFA」(写真)の生産が終了したのは、2012年12月。「トヨタGT」はその後継モデルなのか。筆者は、あくまでGRブランドのフラッグシップとみる。拡大
渡辺 敏史

渡辺 敏史

自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。

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