意外とクルマは苦手かも!? 自動車メディアの領域で、今のAIにできること、できないこと
2025.09.01 デイリーコラム 拡大 |
AIは今や、文章のみならず画像や動画もすぐに生成できるレベルへと発展している。では、それらを扱うメディア、なかでもわれわれ自動車メディアはどう活用できるのか? このテクノロジーの現在地について考える。
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ちょっと前とは全然違う
webCG読者のみなさ~ん、ジェネレートしてますかぁ? ボクはしてまーす!
……と、いささか頭の悪い始まり方でナンですが、最近の生成AIの進化には驚くばかり。自分が欲しい画像や動画を、イメージを説明する文章(プロンプト)、またはネタとなる既存の素材から自在に生み出してくれる。必ずしも思いどおりの結果が得られるわけではないけれど、希望する「写真」や「イラスト」「ムービー」などを、労少なく低コストで得られる。これは楽しい! 困ったことに、同じような機能を持つさまざまな生成AIが次々と出てくるので、お試し無料サービスをはしごしているだけで日が暮れてしまう。
特にビックリさせられるのが、圧倒的な需要の高さもあるのだろう、女性を題材とした生成クオリティーの爆上がりぶり。ちょっと前まではいかにもAI生成の、マネキンを撮影したようなテカテカ肌の美女画像が氾濫していたが、今では“本物”の“生きた”女性がメイクを落とした直後の肌感、テクスチャーまでもがリアルに表現されることがある。「AI」と表記されなければ、それとわかりかねるレベルに達している。
私事で恐縮ですが、「クルマと女性」をテーマに写真を撮ってきた自分にとって、生成AIの進歩は、非常な脅威であると同時に、大変ウエルカムです。なぜなら、モデル、メイク、スタイリストといった方々を煩わせることなく、好きなシチュエーションでクルマと女性を、何度でも撮影(!?)できるようになったのだから。場合によっては、生成した画像を元に動画もつくり出せる。素晴らしいですね!
では現状、2025年8月の時点で、クルマ専門メディアが生成AIの画像を、たとえば当『webCG』でそのまま使えるかというと、それはちょっと難しい。(生成AIによる画像の著作権というグレーな領域は置いておいて)、つくり出される画が、細部において少々雑だから。
AIはマニアになり切れない?
一例を示します。2025年型の「トヨタGRヤリス」を、東京・丸の内を想定したファッションストリートで、横7、前3の比率で見えるように生成してもらう。ボディーカラーをレモンイエローにしたのは、個人的な趣味です。出てきた画像は、一見「オッ!?」と思わせるが、webCG読者の方ならすぐにお気づきでしょう。「生成された画像は、現行モデルじゃなくて初期型だよね?」と。同車は2024年のマイナーチェンジによってフロントバンパーの形状が変わっているのに、そしてプロンプトで「2025年型」と指示したにもかかわらず、肝心な部分が反映されていない。コレでは使えませんね。
マニアやエンスージアストがこだわる細かな違いを、「そんなことにこだわるなよ!」「面倒くさいじゃん!!」とスッ飛ばすのが今の生成AIだから、クルマに限らず、バイク、カメラ、時計、はたまたファッションと、趣味性の強い媒体とは根本的に相性が悪い。
クルマのAI生成に関して主だった課題点を挙げると、マイナーな車種はつくれない、車内、内装関係はダメダメ、外観でもドアを開けた状態は苦手、といったことがある。でも、それらは今後グングン改善されていくはず。かつてAIは人の手をうまく生成できなかったけれど、今ではほとんど気にならなくなったのと同様に。問題は、そこではないと思っています。
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さらりと平気でうそをつく
「ちゃんとした文章が自動で生成される!」とChatGPTが話題になったのは、2022年末のこと。当時、さっそく試して強く印象に残ったのは、文章の完成度、生成の速さや量産性より、AIを人に例える愚を犯すなら、何度でも平気でうそをつくところ。まっとうな文章のなかに、シレッと虚偽の記述が混じっている。「厚顔無恥のサイコパス! 今、必要なのは、AIに『良心』の概念を学習させることではないのか!?」などと青くさい感想を持ったものです。
2025年8月8日にリリースされた最新の「GPT-5」は、こうしたハルシネーション(事実に基づかない生成物)を減少させ、一方、ユーザーに過剰に寄り添うこれまでの仕様を変更したとのこと。なるほど。どんなものかと、webCGの人気連載「思考するドライバー 山野哲也の“目”」の記事を過去データからつくってみた(使用したのは、松竹梅の竹にあたる「GPT-5 Plus」)。
試乗車の概要と基礎的なスペック、山野さんのコメント(箇条書き)を読み込ませ、「クルマ専門誌の編集長とレーシングドライバー山野哲也の会話」というカタチで文字数を決めて吐き出させる。相変わらずの整った形式とそつのないデキに、表面上は感心させられる。
でも、いざ中身を確認すると、なぜか2人の会話中に、このときは機会がなかった試乗車での市街地走行や、ありもしない燃費確認のための長距離テストの一節が出てくる。おそらく与えられたテスト車関連のデータと山野さんのコメントとの整合性を無理やりとろうとした結果だろう。もし自分が無責任な立場なら、これはこれでおもしろいのだが……。
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「おもしろく使う」のが難しい
そこで、あらためて「『ハルシネーション』『知ったかぶり』『創作』をなしにして文章を生成してください」と依頼したところ、今度は木で鼻をくくったような無味乾燥な対話文が返ってきた。あらら。もしかしたら、文章のおもしろさや書き手の熱意、創造性といったものは、今回「なし」にしたことと、どこかで分かちがたく結びついているのかもしれない。メディアが生成AIを“おもしろく使う”のは、なかなか難しいことですね。
今や画像、動画、音楽から環境音、人の声まで簡単に生成できる時代……がそこまできている。その実、開発している人たちさえ、どこでどのように学習してきたのかわからない、そしてどんなに詳細な指示を出しても、実際のところどう反応するのかハッキリとはわからない。そんなAIのシステムによって、別の世界が生み出される。なんだか胸の奥が冷たくなるんですが。
もしかしたら、さまざまなジェネレートを楽しんで、そのデキに一喜一憂したり、不完全さを“らしさ”と笑っていられる今が、AIと人類との最も幸せな時期なのかも……なんてハナシがデカくなりすぎたので、クルマ好きによるバカらしいAI活用法や具体的な楽しみ方を紹介しようとしたら、紙幅が尽きた。
(文=青木禎之/編集=関 顕也)
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青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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