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頓挫してしまった次世代EV「アフィーラ」は、本来どうあるべきだったのか?

2026.04.27 デイリーコラム 世良 耕太
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最終局面で「やっぱ、やめます」

ソニーグループと本田技研工業が折半出資して設立したソニー・ホンダモビリティ(SHM)は2026年3月25日、親会社のソニーとホンダによる2社間協議と、その協議をSHMが受けて検討した結果、それまで開発を進めてきた電気自動車(EV)第1弾モデルの「AFEELA 1(アフィーラ1)」および第2弾モデルの開発と発売を中止すると発表した。同年4月21日には、同社の事業自体を縮小するという方針も明らかにしている。

アフィーラ1は2026年内に米国カリフォルニア州での納車を開始する予定で、SUVタイプの第2弾モデルは2028年以降に米国で発売する予定だった。

ホンダが自社の四輪電動化戦略見直しを発表したのは2026年3月12日のことである。「事業環境の変化」を踏まえ、米国で生産予定だったEV「Honda 0 SUV」「Honda 0サルーン」「アキュラRSX」の開発・発売の中止を発表した。アフィーラはホンダの米国工場で生産する予定だったので、ホンダが「0シリーズ」の開発・発売中止を決めた時点で、アフィーラの開発・発売中止も秒読みと予想することはできた。

いかに急な展開だったかを示すのが、SHMとホンダ・レーシング(HRC)とのコラボレーション企画である。SHMは同年3月4日、HRCとのコラボ企画第1弾として、ホンダが1965年にF1で初優勝を果たした「RA272」のデザインをイメージしたアフィーラ1のラッピングカーをRA272とともに東京・銀座のギャラリーで3月20日から展示すると発表した。ところが3月25日の開発・発売中止の決定を受け、4日後の29日まで予定されていた展示期限を急きょ、翌26日に変更した(見に行く機会が得られなかったのが悔やまれる)。

ソニー・ホンダモビリティが次世代EVとして開発してきた「アフィーラ」。そのプロダクト第1号たる「アフィーラ1」の開発および発売は、正式デビューまであと一歩というタイミングで中止となってしまった。
ソニー・ホンダモビリティが次世代EVとして開発してきた「アフィーラ」。そのプロダクト第1号たる「アフィーラ1」の開発および発売は、正式デビューまであと一歩というタイミングで中止となってしまった。拡大
「アフィーラ1」の開発・発売中止に先駆けて、ホンダは2026年3月12日、四輪電動化戦略の見直しを発表。次世代EV「Honda 0サルーン」(写真左)と「Honda 0 SUV」(同右)の開発が凍結されることになった。写真はそれよりおよそ14カ月前、2025年1月のCES 2025でこれらのモデルが披露されたときのもの。
「アフィーラ1」の開発・発売中止に先駆けて、ホンダは2026年3月12日、四輪電動化戦略の見直しを発表。次世代EV「Honda 0サルーン」(写真左)と「Honda 0 SUV」(同右)の開発が凍結されることになった。写真はそれよりおよそ14カ月前、2025年1月のCES 2025でこれらのモデルが披露されたときのもの。拡大
ソニー・ホンダモビリティ(SMH)のオフィシャルサイトから、本文で触れたSHMとホンダ・レーシング(HRC)とのコラボレーション展示のイメージ。イベント中の電撃発表により、展示会は早じまいとなった。
ソニー・ホンダモビリティ(SMH)のオフィシャルサイトから、本文で触れたSHMとホンダ・レーシング(HRC)とのコラボレーション展示のイメージ。イベント中の電撃発表により、展示会は早じまいとなった。拡大
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あれもこれも“あるにはある”が……

アフィーラとは何だったのか。電気製品とエンターテインメント技術にたけたソニーと、クルマのスペシャリストであるホンダが手を組むことで、「新しい何か」(それが分かれば苦労しない)が生まれることを、少なくとも筆者は期待した。音楽を持ち運ぶことができるソニーの「ウォークマン」や、ホンダの軽ミドシップカー「ビート」のように、所有欲を刺激してくれるプロダクトが出てくるものと期待した。「そうきたか」と。

アフィーラのプロトタイプが初披露されたのは、2023年1月に米国ラスベガスで開催された「CES 2023」でのことだった。同年10月末には、「ジャパンモビリティショー2023」で日本初披露となった。筆者が実物を目にしたのはこのタイミングである。

アフィーラの特徴は、「パノラミックスクリーン」と呼ぶワイドなディスプレイと立体音響システムにより、没入感ある映像や音楽、ゲームが楽しめること。フロントグリルに「メディアバー」と呼ばれるディスプレイがあり、そこにさまざまな情報を表示でき、外部とコミュニケーションできることにあった。パノラミックスクリーンに表示するテーマやメディアバーに表示するコンテンツ、アクセルペダル操作などと連動するモーターサウンド、ナビアプリの地図上に追加できる独自情報などは、社外のクリエイターやデベロッパーが自由に開発し、提供できる環境を用意するという触れ込みだった。

以上はエンタメ系。クルマの技術としては、車内外に計45基のカメラ、センサー等を搭載し、「特定の条件におけるレベル3の自動運転機能を目指すと同時に、市街地などより広い運転条件下での運転支援機能の開発にも取り組む」とされた。クルマのカタチは、没個性的なのが個性だと主張しているように思われた。ポジティブに受け止めれば。

2022年3月4日に行われた、ホンダとソニーの提携発表におけるワンシーン。写真右が本田技研工業の三部敏宏 代表執行役社長で、左がソニーグループの吉田憲一郎 代表執行役会長兼社長CEOである。その4年後にソニー・ホンダモビリティ(SHM)のプロダクト第1号「アフィーラ1」は開発中止となり、SHMについても事業の縮小が発表された。
2022年3月4日に行われた、ホンダとソニーの提携発表におけるワンシーン。写真右が本田技研工業の三部敏宏 代表執行役社長で、左がソニーグループの吉田憲一郎 代表執行役会長兼社長CEOである。その4年後にソニー・ホンダモビリティ(SHM)のプロダクト第1号「アフィーラ1」は開発中止となり、SHMについても事業の縮小が発表された。拡大
ずらりと液晶画面が並ぶ「アフィーラ プロトタイプ」のインストゥルメントパネル。対話型のパーソナルエージェントも用意され、自然な対話を通じてさまざまな車載機能をコントロールできるほか、エージェントから行動計画の提案を受けられる。
ずらりと液晶画面が並ぶ「アフィーラ プロトタイプ」のインストゥルメントパネル。対話型のパーソナルエージェントも用意され、自然な対話を通じてさまざまな車載機能をコントロールできるほか、エージェントから行動計画の提案を受けられる。拡大
車体の前後には「メディアバー」と呼ばれる外部ディスプレイを搭載。歩行者をはじめとする車外とのコミュニケーションが図られる。
車体の前後には「メディアバー」と呼ばれる外部ディスプレイを搭載。歩行者をはじめとする車外とのコミュニケーションが図られる。拡大

そのスタートから省みるべし

2025年1月に発表されたアフィーラ1の価格は標準モデルで8万9900ドル(当時のレートで約1400万円)、上位モデルで10万2900ドル(約1600万円)だった。富裕層かつアーリーアダプターを狙ったものと思われるので、「そんなふうに言われる筋合いはない」層に属する筆者から言われたくはないだろうが、ソニーとホンダのタッグという夢のような組み合わせから生み出されるプロダクトだとするなら、ウォークマンやプレイステーションにAIBO、CVCCやVTECにASIMOにロケット、それに技術力で一時代を築いた第2期ホンダF1を知る身としては、正直物足りなかった。

文化の異なる企業がタッグを組んで新しい何かを生み出すには、それぞれの企業がお互いを深く理解する必要がある。しかし、それには時間がかかる。アフィーラ1として結実したSHMのEV第1弾は、そもそもプロトタイプにすぎなかったのだろう。これをたたき台にした次の一手が、真の意味でソニー×ホンダのコラボ製品第1弾だったのかもしれない。両者の理解が進む前、着地点が見えずに走りだした結果が、アフィーラ1だったように思える。

ソニー主導のホンダコラボ製品であったり、ホンダ主導のソニーコラボ製品であったりしたら、違った成果が生まれていたかもしれない、とも思う。対等な立場では、お互いがお互いに遠慮し、とがったアイデアを出し、それを推し進める空気を出しづらかったのではないか。そんな臆測も働く。

中国のメーカーは24カ月で新車を開発する時代に、プロトタイプの初披露からでさえ3年から4年もかけているようでは、販売にこぎ着けた段階でウリとするはずだった機能やサービスは陳腐化して当然である。「売れるのが確実なものをつくる」マーケットインであれ、「良いものと信じてつくる」プロダクトアウトであれ、SHMにはスピード感が欠けていた。

世界的なEVシフトの停滞や米国の不透明な政治情勢もSHMにとって逆風に働いたのは疑いの余地がない。しかし、そもそも「最初のボタン、掛け違えていなかった?」と疑うところから検証が必要なのではないかと、そう思わずにいられない。

(文=世良耕太/写真=ソニー・ホンダモビリティ、webCG/編集=関 顕也)

CES 2025のプレスカンファレンスにおいて、「アフィーラ1」の詳細を語るSHMの水野泰秀会長兼CEO。その価格は、標準モデルで8万9900ドルという、多くの人の予想を上回るものだった。
CES 2025のプレスカンファレンスにおいて、「アフィーラ1」の詳細を語るSHMの水野泰秀会長兼CEO。その価格は、標準モデルで8万9900ドルという、多くの人の予想を上回るものだった。拡大
「アフィーラ1」の後席から見たキャビン。音響については、SHM独自のノイズキャンセリング技術等によって実現した圧倒的な車内の静粛性と、最適に配置されたスピーカー、ソニーの立体音響技術により、「没入感のある音場で高品質なオーディオ体験が可能」とされた。
「アフィーラ1」の後席から見たキャビン。音響については、SHM独自のノイズキャンセリング技術等によって実現した圧倒的な車内の静粛性と、最適に配置されたスピーカー、ソニーの立体音響技術により、「没入感のある音場で高品質なオーディオ体験が可能」とされた。拡大
運転支援技術の充実も「アフィーラ1」のセリングポイントだった。自動運転機能については、将来的にはレベル4までの進化が見込まれていた。
運転支援技術の充実も「アフィーラ1」のセリングポイントだった。自動運転機能については、将来的にはレベル4までの進化が見込まれていた。拡大
幻と消えた「アフィーラ1」のボディーサイズは、全長×全幅×全高=193.5×74.8×57.5インチ(約4915×1900×1460mm)。駆動方式は4WDで、一充電走行距離は300マイル(約483km)以上とされていた。
幻と消えた「アフィーラ1」のボディーサイズは、全長×全幅×全高=193.5×74.8×57.5インチ(約4915×1900×1460mm)。駆動方式は4WDで、一充電走行距離は300マイル(約483km)以上とされていた。拡大
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