「ノイエクラッセ」は工場も専用 BMWが社運を賭けた最新の設備群を見る
2026.04.22 デイリーコラム本格稼働前の工場を見学
BMWは「iX3」に続く“ノイエクラッセ”の第2弾として新型「i3」を発表した。“i3”といってもあのコンパクト電気自動車(EV)のi3ではなく、新型「3シリーズ」のEV仕様である。日本ではエンジン仕様とEV仕様は別物と捉えられているようだけれど、本国では新型i3と新型3シリーズは同義語のようで、発表会には従業員約4000人を招待。これを計6回も行ったという。3シリーズはBMWにとって象徴的モデルだということがそれだけでも分かるだろう。実際、発表会会場には歴代3シリーズもずらりと顔をそろえた。
“ノイエクラッセ”はBMWが次世代モデル群として位置づけているもので、iX3もi3もプラットフォームからモーター、バッテリー、インターフェイス、OSに至るまですべてが新開発・新設計である。そしてそれはプロダクトだけにとどまらない。BMWはミュンヘン本社の敷地内に新工場を設立。i3と今後登場する予定のEVのいくつかがここで生産されることになる。i3の発表会の後、この新工場がメディアに初めて公開された。
工場見学はこれまでにもう数え切れないくらい参加してきたけれど、隅から隅まで新品で、何よりまだ稼働していない工場を見学するのはほぼ初めてである。実際、ここでは生産プロトタイプと呼ばれるモデルが数十台つくられただけで、本格的な生産が始まるのは2026年8月の予定とのこと。広く明るくきれいで、でもシーンと静まりかえっている工場はなんだか魂が抜かれたようでもあるけれど、こんな工場が見られる機会はめったにないのも事実である。
BMWはこの工場を「iFACTORY」と呼んでいる。最大で一日あたり約1000台を生産する能力を有すると同時に、さまざまなモデルにフレキシブルに対応できる設備であることも特徴のひとつだそうだ。徹底的な合理化と自動化、産業用ロボットの導入により、生産コストはこれまでの工場より10%も抑えられている。まずはi3の生産が立ち上がり、「i3ツーリング」(=ワゴン)の追加がすでに決まっている。ちなみに、ミュンヘン工場では1922年に開始されたモーターサイクルの生産が最初とのこと。それから100年以上の年月を経て、四輪EVの生産が始まることになる。
巨額の費用を投じた新工場の中身
工場内は大きく分けてプレス工程とボディー工程、塗装工程、アッセンブリー工程の4カ所からなる。
プレス工程で使用されるプレス機は、中国やライプツィヒなどの工場と同型で、ネットワークでつなぐことにより品質の安定化を図っているという。ミュンヘン工場の敷地は他のBMW工場と比べるとそこまで広くはないので、通常ならロールの状態で搬入されるアルミや鉄は裁断された板状でプレス工程に運び込まれる。1分間に18ストロークまで可能で、一日あたり最大約3万種類のパーツが製造できるそうだ。ボディーの組み立て工程はさまざまな車種に対応可能で、約800台の産業用ロボットを使い約3800カ所のスポット溶接(一台あたり)を行う。そして塗装工程は一日で最大1000台の塗装が可能とのこと。つまり現時点では塗装工程の能力がこの工場の生産キャパシティーとなっているようだ。アッセンブリー工程では、ワイヤハーネスの装着がフロントエンドとボディー、リア、ルーフの4つのゾーンに分けられている点が特徴。ノイエクラッセはワイヤハーネスの削減が開発の優先事項のひとつで、前世代モデルに比べ総配線長を600m短縮し、重量を30%削減したそうだ。これだけ減らせば、当然のことながら生産現場での作業効率の向上にも大きく寄与している。
BMWはドイツとハンガリー、中国、メキシコ、アメリカと世界各国に計5カ所のバッテリー生産工場を有している。これは、クルマの工場の近くにバッテリー工場を併設するというコンセプトに基づいているそうだ。また、モーターを含むEVのドライブユニットも専用工場による完全自社生産を実現している。そして今回の新工場、BMWは6億5000万ユーロもの資金を投入している。ノイエクラッセはプロダクトのみならず、生産方式までにも及ぶ一大プロジェクトなのだ。
(文=渡辺慎太郎/写真=BMW/編集=藤沢 勝)

渡辺 慎太郎
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