アルファ・ロメオ・ジュニア イブリダ プレミアム(FF/6AT)
これがアルファの生きる道 2026.04.25 試乗記 世界的に好調な販売を記録している、昨今のアルファ・ロメオ。その人気をけん引しているのが、コンパクトSUV「ジュニア」だ。箱根のワインディングロードでの試乗を通し、その魅力をあらためて確かめた。これが新時代のアルファの生きる道だ。世界でいちばん売れているアルファ
ステランティスは昨2025年の通期決算で、223億6800万ユーロ(約4兆2000億円)の赤字を計上した。2021年にグループPSA(PSAプジョー・シトロエン)とフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)が経営統合してから、通期で最終赤字となるのは今回が初めてといい、しかも、前年にあたる2024年通期が54億7300万ユーロ(約1兆0200億円)の黒字だったから衝撃は大きい。
ステランティスによると、その最大の理由は、注力してきた電気自動車(BEV)の販売が世界的に軟調であることを受けて、投資戦略を転換(=ハイブリッド車の強化)したことによる巨額損失だそうだ。似たような話は、つい最近、日本の某メーカーでも耳にした気もするが、それはともかく。
そんなステランティスでも、個別の業績については好調をうたうブランドはいくつかある。今回のアルファ・ロメオもそのひとつで、7万3000台超という2025年の世界販売は、「前年比20%超の成長」だったそうだ。販売の8割以上を占める欧州市場でも、前年比で31.1%増という明確な成長をみせた。ただ、地域別の伸びでは前年比43.8%増を記録したアジア市場の拡大がより顕著で、これは日本市場での前年比71.4%という数字がけん引役となったとか。
こうした販売台数急増の理由は明白で、欧州では2024年、日本では2025年に発売されたジュニアによる貢献が大きい。ジュニアは2025年末までの約1年半の販売期間で、グローバル受注が累計6万台……ということは、恐らくは世界でいま売れているアルファの半分以上がジュニアということだ。ちなみに、貴重なFR系プラットフォームの純エンジン車であり、販売終了のウワサによって駆け込み需要が盛り上がっていた「ジュリア」と「ステルヴィオ」も、ひとまず2027年まで継続生産されることが公式にアナウンスされた。
いずれにしてもアルファ・ロメオは、少なくとも短期的にはBセグメントSUVとFRレイアウトのDセグメント……という2つの鉱脈で支えられる。その間を(ライバル多数の激戦区ではあるが)商品的に間口の広いCセグメントSUV「トナーレ」が埋めるという現在のラインナップは、アルファの規模でみても、悪くなさそうだ。
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コンパクトだけれどしっかり高級
というわけで、今回の主役は、アルファとしては近年まれにみる(?)ヒット作のジュニアである。好事家ならご承知のように、このクルマは旧グループPSA由来の「CMP/e-CMP」プラットフォームを基本骨格としている。BEV版も用意するが、売れ筋は「イブリダ」と呼ばれる1.2リッター3気筒ターボエンジンと6段DCTを組み合わせた48Vマイルドハイブリッド車で、このパワートレインもまた、旧グループPSAが開発したものだ。ジュニアはつまり、「プジョー208/2008」で使われてきた基本ハードウエアを最大限に活用した、小型アルファ・ロメオということである。
基本設計を共有するプジョー2008あたりと比較すると、ジュニアは同じクロスオーバーSUVというジャンルながらも、全長やホイールベースは小さめの仕立てとなっている。でありながら、価格は同じパワートレインの2008より高めの設定なのが特徴だ。
もっとも、日本のカーマニアにとってはプジョーよりアルファのほうが上級スポーツブランド的なイメージが強いと思われる。加えて、ヒップラインを断ち切った典型的な「コーダトロンカ」デザインに、いかにもスポーツカー的なスモールキャビンや独特のスクデット=盾グリルを生かした不敵なフロントエンドも相まって、凝縮感がうまく表現できている。小さな全長で、逆に高級感を醸し出すことに成功している。
ちなみに、コーダトロンカとは「尻尾を切り詰める」という意味のイタリア語だ。「ジュリエッタSZ」の丸いお尻を、軽量化と空力向上のためにスパッと切り落とした「SZコーダトロンカ=SZ2」が1961年に登場。その呼称とデザイン手法はレーシングスポーツカーの間で一気に広まった。
いっぽう、インテリアはプジョーほど斬新ではないが、ブラック一色の古典的なスポーツカーデザインで、10.25インチのカラー液晶メーターや効果的な部位にあしらわれた合皮クッション素材も、高級感の表現としてはうまくいっているようにみえる。しかも、内外装にこれでもか……とちりばめられたアルファ・ロメオのアイコン「ビショーネ(人食い大蛇)」などは、カーマニアの財布を開かせる必殺技というほかない。
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似ているようで確かにちがう走りの味つけ
ジュニア イブリダの走りについては、『webCG』でもすでに複数回報告されている(その1、その2、その3)。今回の試乗記は、先日リポートした新しいトナーレ(参照)のメディア試乗会であわせて取材したものだが、そこに用意されていたジュニア イブリダ プレミアムも、ナンバープレートを見るかぎりは過去に取り上げている個体のようだ。
箱根のワインディングロードであらためて味わうジュニアのハイブリッド車は、上級のトナーレやジュリア/ステルヴィオに輪をかけて、しなやかなフットワークが印象的だ。ロールは大きくないが、ステアリングには荷重移動とともに、じつに濃厚な接地感が伝わってくる。
もっとも、このしなやかそのもののアシさばきを前にすると、思わず“ネコアシ”というプジョーの代名詞ともいえる形容表現が口をつきそうになるのも事実だ。このコンパクトカーとしては異例によく動くサスペンションには、よくも悪くもプジョーの血統を感じなくもない。
ただプジョーの場合は、そこに極小径で長円形のステアリングホイールを組み合わせるのがお約束である。いっぽうのアルファ・ロメオのそれは、径も形状も一般的なものだ。こうしてステアリングホイールがちがうだけでも、ドライバーが受ける印象は大きく変わるので、共通のハードウエアで差別化するにはうまい手法だ。ただ、ジュニアも2008も、実際にはそれだけで今の乗り味になっているわけではない。
聞けば、ジュニアはきっちりとアルファのホームコース=バロッコでアルファ担当のチームが調律したらしい。しなやかなフットワークにどことなくフランス風味を感じつつも、そのリアルな接地感と食いつくように利くステアリングは、古くは「アルファスッド」、近年では「147」や「156」などの歴代FWDアルファをしっかり想起させてくれる。
BEVのエレットリカでは、特有の疑似エンジンサウンドを響かせているジュニアだが、本物の内燃機関を積むイブリダでは、そこまで独自の表現はしていない。少なくとも単独で乗っているだけだと、プジョーやシトロエン、フィアット、ジープなどで味わう同様のパワートレインと、ほぼ選ぶところはない。しかし、走行中にエンジンが出入りするときのマナーなどは、他ブランドの共通ハードウエア車より少しだけ好印象なのは、開発が比較的新しいからかもしれない。
これまでのアルファ・ロメオは、メルセデス、BMW、アウディといった“ジャーマンスリーのイタリア版”を目指しては、思ったようにはいかず……を繰り返してきたようにみえる。これらドイツの高級車に正面から挑むのはむずかしい気もするが、ちょっとだけフンパツすれば手に入る上級スポーツコンパクト……というジュニアのようなアルファなら、食指を動かされる向きが多いのはなんとなく理解できる。
(文=佐野弘宗/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
アルファ・ロメオ・ジュニア イブリダ プレミアム
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4195×1780×1585mm
ホイールベース:2560mm
車重:1330kg
駆動方式:FF
エンジン:1.2リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:6段AT
エンジン最高出力:136PS(100kW)/5500rpm
エンジン最大トルク:230N・m(23.4kgf・m)/1750rpm
モーター最高出力:22PS(16kW)/4264rpm
モーター最大トルク:51N・m(5.2kgf・m)/750-2499rpm
タイヤ:(前)215/55R18 99V XL/(後)215/55R18 99V XL(グッドイヤー・エフィシェントグリップ2)
燃費:23.1km/リッター(WLTCモード)
価格:483万円/テスト車=522万6510円
オプション装備:ツートンスペシャルメタリック(15万円) ※以下、販売店オプション プレミアムフロアマットセット<イブリダ用>(5万2800円)/タッチスクリーンプロテクトフィルム(4180円)/タイヤバルブステムキャップ(4510円)/ドライブレコーダー付きディスプレイミラー(10万3400円)/リバースチャイム(1万4850円)/LEDフットイルミネーション(1万4740円)/アディショナルリアゲートLEDユニット(1万4300円)/ETC2.0車載器(3万5640円)/電源ハーネスキット(2090円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:13649km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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