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世界遺産・高野山で大型電動バス「BYD K8」の営業運行がスタート その狙いとは?

2026.05.07 デイリーコラム 生方 聡
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高野山で初めての和歌山を体験

これまで旅行や仕事で日本のあちこちを訪れてきたが、実はまだ行ったことがない都道府県がいくつかある。佐賀と長崎だ。今年こそこの2県に行ってみたいと思っているのだが、つい最近、もう1県、未踏の地があることがわかった。和歌山である。

なぜそれが発覚したかというと、BYDから「プラグインハイブリッド車(PHEV)の『シーライオン6』に乗って高野山に出かけませんか?」という誘いを受けたからだ。よく考えると、高野山も和歌山県も訪れた記憶がない。それだけに、世界遺産の高野山も気になるし、シーライオン6での長距離ドライブも気になる……ということで、急きょ和歌山行きを決めた。

ところでなぜこのタイミングで高野山なのか。実は4月24日から、「南海りんかんバス」が高野山でBYDの大型電動バス「K8」を走らせることになったからだ。

大型電動バスが和歌山県内に導入されるのは今回が初めて。この記念すべき瞬間に立ち会い、せっかくなら高野山の街並みを走る姿も見てみたいし、実際に電動バスに乗って高野山を巡ってみたい。そんな思いを抱きながら、BYDのPHEV、シーライオン6で東京から和歌山を目指すことにした。

高野山の玄関駅として知られる南海電鉄の高野山駅。南海りんかんバスはここを起点とする路線バスにBYDの大型電動バス「K8」を導入。2026年4月24日に運行を開始した。
高野山の玄関駅として知られる南海電鉄の高野山駅。南海りんかんバスはここを起点とする路線バスにBYDの大型電動バス「K8」を導入。2026年4月24日に運行を開始した。拡大
高野山にはさまざまな人気スポットがあり、南海りんかんバスの停留所もすぐ近くにある。壇上伽藍(だんじょうがらん)の「根本大塔(こんぽんだいとう)」はそのシンボルともいえる朱塗りの塔。
高野山にはさまざまな人気スポットがあり、南海りんかんバスの停留所もすぐ近くにある。壇上伽藍(だんじょうがらん)の「根本大塔(こんぽんだいとう)」はそのシンボルともいえる朱塗りの塔。拡大
高野山真言宗の総本山である「金剛峯寺(こんごうぶじ)」は、まさにメインスポットと呼べる存在。
高野山真言宗の総本山である「金剛峯寺(こんごうぶじ)」は、まさにメインスポットと呼べる存在。拡大
BYDのプラグインハイブリッド車としては日本初上陸となった「シーライオン6」。FWD仕様車とAWD仕様車の2モデルをラインナップする。
BYDのプラグインハイブリッド車としては日本初上陸となった「シーライオン6」。FWD仕様車とAWD仕様車の2モデルをラインナップする。拡大

航続距離240kmのK8なら夜間の充電だけでOK

今回導入される電動バスのK8は、全長×全幅×全高=1万0500×2495×3270mm、最大乗車定員80名(座席と跳ね上げ席は26席)の大型バスだ。主に屋根の上に搭載される容量314kWhのバッテリーは、BYD自慢のリン酸鉄リチウムイオンタイプの“ブレードバッテリー”で、一充電走行距離は240kmと発表されている。

導入は6台で、弘法大師(空海)の御廟(ごびょう)がある高野山を代表する参拝地である「奥の院」と、高野山駅とを行き来するメインの路線に導入される。一日に走行する距離は一台あたり100km程度といい、240kmという一充電走行距離は十分なスペック。営業終了後の夜間に急速充電を行えば、翌朝の始発までには満充電にできるという。

南海りんかんバスでは、このエリアを走るディーゼルバス40台のうち、6台をK8に入れ替えた。その理由を同社の和田純一社長に伺うと、「南海グループでは環境経営に取り組んでおります。高野山は信仰の聖地でもありますので、走行時に二酸化炭素を排出しない電動バスは、クリーンな空気やその雰囲気の維持にもつながると考えております。同地は南海グループの沿線では有数の観光地でもあり、ステークホルダーの皆さまに向けて環境経営をPRするうえでも、電動バスの導入は最適であると考えております」という答えが返ってきた。

BYDを選んだ理由は、航続距離やメンテナンス性に加え、冬場はマイナス10°Cを下回ることもある高野山で使える実績があったこと、さらに南海グループ内での導入経験もあり、整備面の不安が少なかったことも大きいそうだ。

南海りんかんバスにおける大型電動バスの運行開始にあたり、南海りんかんバスの和田純一社長(写真左)にBYDジャパンの石井澄人副社長(同右)から記念のキーが手渡された。
南海りんかんバスにおける大型電動バスの運行開始にあたり、南海りんかんバスの和田純一社長(写真左)にBYDジャパンの石井澄人副社長(同右)から記念のキーが手渡された。拡大
南海りんかんバスの和田純一社長。「高野山は信仰の聖地。大型電動バスの導入は環境対策として最適であると考えました。クリーンな空気と、高野山が持つ特別な雰囲気の維持にもつながります」と話す。
南海りんかんバスの和田純一社長。「高野山は信仰の聖地。大型電動バスの導入は環境対策として最適であると考えました。クリーンな空気と、高野山が持つ特別な雰囲気の維持にもつながります」と話す。拡大
南海りんかんバスの高野山営業所には、3基6口分の急速充電器が設置されている。
南海りんかんバスの高野山営業所には、3基6口分の急速充電器が設置されている。拡大
急速充電器の出力は50kW。夜間の充電だけで日中の走行分がまかなえるという。
急速充電器の出力は50kW。夜間の充電だけで日中の走行分がまかなえるという。拡大

“山上の宗教都市”を駆け抜けるBYDの電動バス

電動バスの拠点となる高野山駅で出発式を見届けた私は、営業運転が開始されたばかりのK8に乗り込み、人気の奥の院まで行ってみることにした。後方の席について待っていると、ほどなくしてバスが発車。ディーゼルエンジン車と違い、走行中も停車時も静かなのが電動バスのうれしいところ。もちろん加減速もスムーズだ。バスの運転士に話を聞くと、ギアチェンジやクラッチ操作から解放されるのも助かるという。

高野山駅を出た電動バスは曲がりくねった山道を3kmほど走り、「大門」のあるT字を右に折れる。すると森ばかりの視界が突然開け、山の上に広がる街とおびただしい数の寺院にあっけにとられる。標高約900mにある高野山が“山上の宗教都市”と呼ばれるのも納得だ。

初めて訪れる高野山は、観光地っぽいにぎわいを想像していたのだが、実際はかなり静かで落ち着いた空気が流れている。そんな雰囲気のなかを電動バスが静かに走り抜けていく。赤いボディーカラーも、高野山の街並みになじんでいて、ここ高野山の移動手段としては、かなり相性がいいのではないかと思う。

20分ほどバスに揺られていると、目的地の「奥の院前」バス停に到着した。奥の院を参拝したあとは、電動バスで街の中心にある「金堂前」まで移動し、高野山真言宗の総本山である「金剛峯寺(こんごうぶじ)」や、弘法大師が最初に整備したという「壇上伽藍(だんじょうがらん)」を見たり、ランチを楽しんだり。街なかに響く鐘の音が心を癒やす。

ひととおり見どころを回って、電動バスで高野山駅に戻るころには、都会と違って静かにゆっくり流れる時間に、すっかり気持ちが緩んでいた。

今回導入された「BYD K8」は、座席と跳ね上げ席が26席で、立ち席を合わせると定員は80名となる。
今回導入された「BYD K8」は、座席と跳ね上げ席が26席で、立ち席を合わせると定員は80名となる。拡大
このバスは通常の営業運転のほかに、地元の小学生のスクールバスとしても運用。車内には小学生の絵が飾られている。
このバスは通常の営業運転のほかに、地元の小学生のスクールバスとしても運用。車内には小学生の絵が飾られている。拡大
高野山で運行される南海りんかんバスの「BYD K8」。ボディーのデザインは南海電鉄の観光列車「GRAN天空」を踏襲したもの。落ち着いた赤が高野山の街並みによくなじむ。
高野山で運行される南海りんかんバスの「BYD K8」。ボディーのデザインは南海電鉄の観光列車「GRAN天空」を踏襲したもの。落ち着いた赤が高野山の街並みによくなじむ。拡大
多くの参拝者が訪れる奥の院前バス停まで、高野山駅前バス停からは約20分。マイカーで訪れる人も多いが、外国人観光客などにとってはバスで簡単に移動できるのがうれしい。
多くの参拝者が訪れる奥の院前バス停まで、高野山駅前バス停からは約20分。マイカーで訪れる人も多いが、外国人観光客などにとってはバスで簡単に移動できるのがうれしい。拡大

シーライオン6は快適なグランドツアラー

冒頭でも触れたが、今回の高野山取材は、往復ともにBYDのミッドサイズSUVであるシーライオン6を走らせた。先行して導入されたFWD仕様車に加えて、この4月からは4WD仕様車「シーライオン6 AWD」もデリバリーが始まり、私は往路に前者、帰路に後者のステアリングを握ることになった。

これまで日本に導入されてきた「ATTO 3」「ドルフィン」「シール」「シーライオン7」がすべてBEVであるのに対し、このシーライオン6はPHEVであるのが大きく異なるところ。短距離であれば電気だけで走行できる一方、長距離ではガソリンエンジンで発電することで、FWDでは1200kmに及ぶ長い航続距離を実現するのがアドバンテージである。

これを支えているのが「DM-i(デュアル・モード・インテリジェンス)」と呼ばれるプラグインハイブリッドシステムで、バッテリー残量に余裕がある場合はその電力のみで走行し、バッテリー残量が少なくなると、1.5リッター直4エンジンで発電しながら走行。状況によってはエンジンが直接前輪を駆動することもあるが、基本的には発電用に徹するというのがDM-iのコンセプトだ。

それだけに、FWD、AWDとも加速はスムーズで、走行時の静粛性も高く、ロングドライブには打ってつけ。今回初めて運転したAWDは、モーターの最高出力が前後合わせて408PSと、FWDの197PSを大きく上回るだけに加速にも余裕があり、とくに高速道路で加速するような場面では頼もしかった。

片道約550kmのドライブでは、当然、途中の給油は不要。満タン法による燃費は、行きのFWDが17.4km/リッター、帰りのAWDが16.6km/リッターという数字で、レギュラーガソリン対応というのもうれしい。

車両価格はFWDの398万2000円に対して、AWDは50万6000円高の448万8000円だが、加速性能や悪条件での走破性などを考えると、私なら積極的にAWDを選びたいと思いながら、気がつけば約1200kmを走破。BYDの高い技術力に感心させられた2日間だった。

(文=生方 聡/写真=BYDジャパン、生方 聡/編集=櫻井健一)

「DM-i」と呼ばれるプラグインハイブリッドシステムを搭載するミッドサイズSUV「BYDシーライオン6」。写真はFWD仕様車で、価格は398万2000円。
「DM-i」と呼ばれるプラグインハイブリッドシステムを搭載するミッドサイズSUV「BYDシーライオン6」。写真はFWD仕様車で、価格は398万2000円。拡大
高級感あふれる「シーライオン6」のコックピット。デザインや装備はFWD仕様車とAWD仕様車で共通する。
高級感あふれる「シーライオン6」のコックピット。デザインや装備はFWD仕様車とAWD仕様車で共通する。拡大
世界最高水準の熱効率をうたう「シーライオン6」の1.5リッター直4自然吸気エンジン。エンジン単体で最高出力98PS、最大トルク122N・mを発生する。
世界最高水準の熱効率をうたう「シーライオン6」の1.5リッター直4自然吸気エンジン。エンジン単体で最高出力98PS、最大トルク122N・mを発生する。拡大
「シーライオン6 AWD」の走行シーン。408PSのシステム出力を誇り、高速走行時の加速にも余裕がある。
「シーライオン6 AWD」の走行シーン。408PSのシステム出力を誇り、高速走行時の加速にも余裕がある。拡大
バッテリー残量を気にすることなくロングドライブが楽しめるのが、PHEV「シーライオン6」の醍醐味(だいごみ)だ。
バッテリー残量を気にすることなくロングドライブが楽しめるのが、PHEV「シーライオン6」の醍醐味(だいごみ)だ。拡大
生方 聡

生方 聡

モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。

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