夢の実現まであと一歩!? 進化する自動運転技術と“世界共通のルールづくり”の重要性
2026.07.06 デイリーコラム自動運転システムに世界共通の基準が誕生
去る2026年6月末のこと、国連傘下の機関である「自動車基準調和世界フォーラム」(WP29)が「自動運転システムの国際基準に合意」したという報が伝えられました。ちなみにWP29は自動車の国家間の相互認証化を促すべく、安全や環境基準の国際標準化を審議するのが主な役割で、その下には衝突安全技術や排ガスエネルギー技術など6つの専門分野の分科会がぶら下がり、そのひとつに自動運転もあります。
つまりWP29での決まり事は世界の共通認識と言い換えることもできるわけですが、そこが「レベル3・4級の自動運転車両はこういうものでなければならない」という世界初の定義づけを行ったというのが今回のトピックです。
一応おさらいしておくと、レベル3とは一定の条件下(自動車専用道路走行時など)でのすべての運転操作をシステムが行う自動運転のことで、周辺環境の監視も含め、運転の主体はシステムということになります。それでもシステムの作動継続が困難な場合は人間が運転を引き継ぐことになっていますが、これがレベル4になると、緊急時の対応すらシステムが実行。ドライバーがクルマに乗っている必要すらなくなる……といった具合です。今回のWP29での合意では、日本が審議を主導し取りまとめを行ったということで、そこが国内でのニュースバリューをぐっと持ち上げることになりました。
で、共通認識として採択されたのはどういうことかといえば、まずレベル3以上の自動運転車の前提として「有能で注意深い人間のドライバーと同等以上の安全性」というハードルが設けられています。そのうえで、車両の製造者には、乗員への運行情報提供やサイバーセキュリティー対策といったハード側の安全性確保、そして車両モニタリングや不具合改善などの仕組みを継続的に維持する組織体制の構築が求められることになりました。
……てか、今どきがん首そろえてそんな話し合いしてるわけ? と、BYDの「天神之眼」やテスラの「FSDスーパーバイズド」といったE2E(End to End)の先進運転支援システム(ADAS)を体験している地域の方々は、そんな感想を抱くのかもしれません。すでにレベル3の自動運転に迫る、2.999……みたいなADASが市場には跋扈(ばっこ)しています。ここ数年でAIベースの自動運転的テクノロジーが大きく発展したことにより、膨大なパラメーターやダイナミックマップを要する従来のルールベースでのシステム構築が、大げさなものになりつつあることが背景にはあります。
急速に進む技術開発と“ルールづくり”の重要性
日本においてそれが象徴化されることになりそうなのが、日産の新しい「プロパイロット」です。すでに2027年度に新型「エルグランド」へと搭載されることが公言されています。私も2025年の秋に、「アリア」をベースとした開発車両に横乗りする機会がありましたが、歩行者やら自転車やらが入り混じる白昼の新橋や銀座を、ためらいなく走り抜けるそのこなれっぷりには驚かされました。たとえば玉川高島屋から銀座三越まで、カーナビ上のポイント間をすべてADASのみで走り切ることも難しくない、いわゆるP2P(出発地点の駐車場から目的地点の駐車場まで、システムが切れ目なく自動運転/自動駐車を実行すること)的な運用が日本でも視野に入る。それが技術ベースでみたADASの現在地といえます。
それを日々の生活で実感できる環境にある人々にとっては、先述のWP29による定義づけなどは、進化の足を引っ張るまどろっこしいものにしか見えないのかもしれません。でも、さまざまな文化や規則の垣根を超えて、世界の道路で世界の人々の生活を支えるクルマをつくる、その公共性の担保のために求められる責任は、「そんなん走りながら考えればいいじゃん」では通用しないわけです。
スマホのアプリが暴走しても再起動で事なきを得るかもしれませんが、こちとら2tの物体を動かすわけで、その物理エネルギーはリセットでチャラになるようなものではありません。万が一をゼロにはできなくても、限りなくゼロに近づける。そういう自動車メーカーの背負う十字架を国際協調の促進によって少しでも軽いものにする。WP29はそういう役割のためにあるものです。この機関がさまざまな国家間の利害をすり合わせ、現実社会との親和性をもって、先走りしたがる技術に押し切られる前にレベル3以上での約束ごとを共有できたことは、個人的には結構重いことだと思っています。
(文=渡辺敏史/写真=テスラ、日産自動車、メルセデス・ベンツ/編集=堀田剛資)

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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