第339回:駆けぬけるヨロコビは安くない
2026.07.06 カーマニア人間国宝への道日本はホントに恵まれてる
私はBMWが好きだ。正確には「BMWの中古車が好きだ」ということになるが、あまりドイツ車と縁のない車歴のなかで、BMWは「3シリーズ」を2度買っている(もちろん中古車)。
いまでもBMW(の中古車)にはそそられるが、3シリーズはだいぶデカくなり、逆に自分の運転能力は縮小しているので、もし今後買うとすれば、「1シリーズ」とか「2シリーズ」のBMWが有力。FRへのこだわりもないので、1とか2はドンピシャだ。
そういうわけで、いまさらながらBMW 1シリーズに試乗させていただきました。発売からもう1年以上たってますけど、買うとしたらどうせ中古車ですし。
試乗したのは「120d Mスポーツ」。車両価格は540万円だ。
それにしても最近の輸入車は高い。国産車も高いけど、輸入車はさらに高い。1シリーズが540万円と聞くと、「何かの間違いでは」と思ってしまう。ひと昔前の感覚だと、それって完全に3シリーズの値段だよね?
先代1シリーズは、300万円台で最安グレードが買えたはず。1シリーズが540万円ってマジか! と思い、本国のウェブサイトを確認して仰天した。120d、4万1750ユーロしてるじゃん! それって770万円だぞぉ!? Mスポーツなんか付けたらもっと高くなる! ヒエーーーーー! 恐るべし世界的物価高! 日本はホントに恵まれてるんですね。しみじみ。
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「BMWだから」の一言ですべて納得
値段でかなり肝が潰れてしまったが、それでも私は現行1シリーズが好きだ。なにしろデザインがよくなったので。
先代1シリーズは、キドニーグリルをむりやり上のほうまで伸ばして折り畳み、口をギイーッと笑わせて、わざわざ不細工にしたみたいだったけど、現行1シルーズは、小ぶりでシンプルなキドニーグリルに、けれん味のない切れ長ヘッドランプの組み合わせ。フォルムも正統派ハッチバックそのもので、誰にも嫌われないタイプである。
それでいて、リアディフューザーまわりの威圧感はかなり高く、適度に男のオラオラ欲をかなえてくれる。
インテリアはいまどきのBMWそのもので、湾曲した巨大なディスプレイが運転席の前に置かれる。ドライブモードを変更するのも、まずセンターコンソールのボタンを押し、そのうえでディスプレイを操作しなきゃならない。ドイツ人はバカなんじゃないかと思ってしまうが、いま中国では、インフォテインメントが無意味に充実(≒複雑化?)してないと見向きもされないとか。日本車がドイツ勢ほど中国市場に深入りしてなくてヨカッター。
住宅街を走り始めると、足まわりの硬さにビビる。さすがMスポーツ。BMWってまだこういうことやってるんだな。こんな硬い足、ニッポンの日常ユースには百害あって一利なしだけど、「BMWだから」の一言ですべて納得させてしまう。継続は力なり!
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抜け穴を塞がれた
この硬い足が、首都高では超頼もしい。速度を上げると硬さは7割がた消え、すばらしいハンドリングやスタビリティーに満たされる。まさに駆けぬけるヨロコビ。
2リッター直4ディーゼル+マイルドハイブリッドのパワートレインも最高だ。スペックは控えめながら、1.5tという今どきとしては軽めのボディーには必要十分で、トルクの太さがもたらすダッシュ力により、狭い首都高では完全に無敵である。なにしろシステム最大トルクは400N・mもあるわけですからね。それでいて燃費は、18km/リッター以上をマーク。いやー、いいなぁ120d Mスポーツ。
試乗を終えて装備表を見て愕然とした。このクルマ、オプションが123万円分も付いてる! ボディーカラーが30万円、「テクノロジーパッケージ」が40万円、「Mスポーツパッケージ」が35万円、その他少々。車両価格は合計663万8000円!
いや、本国では素の状態で770万円なんだから、これでもバーゲン価格だ。でも、でもでも、かつて「335iカブリオレ」(中古車)を265万円で買い、その後「320dスポーツ」(中古車)を255万円で買った私からすると、1シリーズが663万円というのは天文学的。諸経費を考えるとフェラーリの中古車に手が届くじゃん、15年前なら!
あーいやだいやだ、中高年カーマニアは、なにかというと「昔はよかった(安かった)」になってしまう。
BMWの場合は、新車に関しても、かつては登録済み未使用車が100万円引き以上でゴロゴロしてましたからね。昔はよかった、真剣に……。
いまやそういう超絶値引きは完全に絶滅し、中古相場もしっかり上昇。市場は健全化しましたが、カーマニア的には抜け穴を塞がれたとしか言いようがない。ションボリ。
(文と写真=清水草一/編集=櫻井健一/車両協力=BMWジャパン)
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清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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