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第878回:スタッドレスタイヤなのにドライとウエット性能を強化? 「ミシュランX-ICE SNOW+」の走りを試す

2026.10.23 エディターから一言 櫻井 健一
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「X-ICE SNOW+」はミシュランの冬用タイヤ「X-ICE」シリーズの新製品。2020年に登場した「X-ICE SNOW」の後継となるスタッドレスタイヤとして2026年8月に発売された。
「X-ICE SNOW+」はミシュランの冬用タイヤ「X-ICE」シリーズの新製品。2020年に登場した「X-ICE SNOW」の後継となるスタッドレスタイヤとして2026年8月に発売された。拡大

2026年8月に発売された「ミシュランX-ICE SNOW+」は、氷雪路でのグリップ性能をそのままに、ドライ/ウエット路面での走行安定性や快適性の向上を目指したという最新のスタッドレスタイヤだ。冬道のさまざまな路面状況において安心感を提供するというその走りを、スケートリンクの氷上と特設コースでチェックした。

雪の結晶をモチーフとする「ニューサイドウォールデザイン」の採用も特徴とされる「X-ICE SNOW+」。16インチから22インチまでの全97サイズをラインナップする。価格はオープン。
雪の結晶をモチーフとする「ニューサイドウォールデザイン」の採用も特徴とされる「X-ICE SNOW+」。16インチから22インチまでの全97サイズをラインナップする。価格はオープン。拡大
新品時から摩耗時までトレッドパターンが大きく変化しない「フルデプスサイプ」を採用。「ロングラスティングトレッドデザイン」と呼ばれるトレッド面は、従来製品である「X-ICE SNOW」と基本的に同デザインと説明される。
新品時から摩耗時までトレッドパターンが大きく変化しない「フルデプスサイプ」を採用。「ロングラスティングトレッドデザイン」と呼ばれるトレッド面は、従来製品である「X-ICE SNOW」と基本的に同デザインと説明される。拡大
今回は氷上とドライの一般道、そしてウエット路面という3つのステージで、最新の「X-ICE SNOW+」と2020年に登場した「X-ICE SNOW」との比較試走を行った。
今回は氷上とドライの一般道、そしてウエット路面という3つのステージで、最新の「X-ICE SNOW+」と2020年に登場した「X-ICE SNOW」との比較試走を行った。拡大

性能アップの秘密はコンパウンド

X-ICE SNOW+は、2020年に登場した「X-ICE SNOW」の後継モデル。X-ICE SNOWで定評のあった氷雪路での高いグリップ性能をキープしながら、これまで両立が難しいとされてきたドライ/ウエット路面での走行安定性や快適性の向上をうたう。同時に耐摩耗性能や低燃費性能も改善されている。前者の耐摩耗性能は従来製品のX-ICE SNOW比で約25%アップ、後者は転がり抵抗を5.6%低減させ、低燃費性能を引き上げている。

一見するとトレッドパターンはX-ICE SNOWと変わらない。ただ、X-ICE SNOW+には雪の結晶をモチーフとしたサイドウォールデザインが採用されているので、両者を見分けることはさほど難しくない。

トレッドパターンの見た目が同じなのに全体性能がアップしているのは、極低温でもしなやかさを失わず、氷・雪の路面でしっかりとグリップを発揮する「フレックス–アイス3.0トレッドコンパウンドテクノロジー」の採用によるものと説明される。つまり、トレッドデザインは現状が最適解で、主にコンパウンドの改良によって性能の底上げを図ったと分析することができる。その違いと進化が、製品名の「+」に込められている。

では、この両モデル、実際のパフォーマンスはどの程度違うのか。今回は氷上とドライの一般道、そしてウエット路面という3つのステージで試走。それぞれの特徴を確認することができた。

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ブレーキコントロールで減速Gの微調整も自在

最初のステージはスケートリンク。この氷上でグリップ力の違いを検証する。ミシュランはアイス性能をX-ICE SNOWと同等にキープさせながら、相反するドライ/ウエット路面でのパフォーマンスをアップしたというが、果たしてどうか。

ここではミシュランのオールシーズンタイヤ「クロスクライメート3」と従来製品のX-ICE SNOW、そして新製品のX-ICE SNOW+を順番に試した。比較タイヤを含め、これらを装着した車両は「トヨタ・カローラ ツーリング」。サイズはいずれも205/55R16である。

オールシーズンタイヤのクロスクライメート3でも、ていねいなペダル操作を心がければ、ツルツルの氷上でも発進・停止はしっかり行えた。ステアリングを切ってからクルマが向きを変えるまでにワンテンポ遅れる感覚はあるものの、その先できちんと曲がってくれる。ただし、冬の北海道を走った経験から言わせてもらえば、刻一刻と変わる路面コンディションのなかでは、スタッドレスタイヤを装着した車両と同じペースで走るのは少々難しいと感じた。

対してX-ICE SNOWは、走る・曲がる・止まるが安心して行える。速度域を高めたり、多少雑な運転をしてみたりしてもある程度許容してくれるのは、オールシーズンタイヤとは異なるスタッドレスタイヤの強みである。

では、X-ICE SNOW+はというと、発進も停止も、もちろんステアリング操作もX-ICE SNOWよりも反応がいい。走りだしは最初のひと転がりのグリップ感と、ブレーキングによって速度が落ちた後の路面(氷上)とのコンタクト感が明確に違う。ブレーキペダルのコントロールで、減速Gの微調整も自在だ。

氷雪路での高いグリップ性能を維持しながら、これまで両立が難しいとされてきたドライ/ウエット路面での走行安定性や快適性にも配慮したとうたわれる「X-ICE SNOW+」。その性能や特徴を、群馬県総合スポーツセンターの高崎健康福祉大学伊香保リンクで確かめた。
氷雪路での高いグリップ性能を維持しながら、これまで両立が難しいとされてきたドライ/ウエット路面での走行安定性や快適性にも配慮したとうたわれる「X-ICE SNOW+」。その性能や特徴を、群馬県総合スポーツセンターの高崎健康福祉大学伊香保リンクで確かめた。拡大
高崎健康福祉大学伊香保リンク(屋内第1リンク)での走行シーン。試走を行った際の屋内リンクにおける氷中温度は約ー7℃、リンクの表面温度は約ー5℃であった。
高崎健康福祉大学伊香保リンク(屋内第1リンク)での走行シーン。試走を行った際の屋内リンクにおける氷中温度は約ー7℃、リンクの表面温度は約ー5℃であった。拡大
「X-ICE SNOW+」のサイドウォール。雪上性能の確保を示す国際基準の「スリーピークマウンテンスノーフレークマーク」と、滑りやすい氷の上でも規定の基準を満たしていることを示す「アイスグリップシンボル」が備わる。
「X-ICE SNOW+」のサイドウォール。雪上性能の確保を示す国際基準の「スリーピークマウンテンスノーフレークマーク」と、滑りやすい氷の上でも規定の基準を満たしていることを示す「アイスグリップシンボル」が備わる。拡大
「X-ICE SNOW+」は、発進も停止もステアリング操作も「X-ICE SNOW」よりも反応がいい。走りだしは最初のひと転がりのグリップ感と、ブレーキングによって速度が落ちた後の路面(氷盤)とのコンタクト感が明確に違うと感じた。
「X-ICE SNOW+」は、発進も停止もステアリング操作も「X-ICE SNOW」よりも反応がいい。走りだしは最初のひと転がりのグリップ感と、ブレーキングによって速度が落ちた後の路面(氷盤)とのコンタクト感が明確に違うと感じた。拡大

実はアイス性能にも違いはある?

そうした印象をもとに、アイス性能は同等のはずなのにフィーリングが明確に違うのはなぜ? とミシュランの開発陣に疑問を投げかかると、「氷上性能が同等」と公表しているのは、タイヤの表示に関する公正競争規約上の公式試験方法と試験を行ったサイズでの結果によるもので、例えば別サイズやテスト方法によっては明確な性能アップを実感することも少なくないという。つまり、最低ラインの性能向上評価が、控えめにも同等という表現になるわけだ。

したがってアイス性能の向上は、(メーカーがうたえないだけで)気のせいなどではなかったといえそうだ。実際会場にいたなじみのモータージャーナリストにそのことを話すと、「確かにアイス性能の違いを感じられる」と同意を得ることができた。

続く「日産エクストレイル」を用いたドライの一般道におけるX-ICE SNOW+の試走では、直進安定性と乗り心地の良さが印象的だった。腰のあるしっかりとしたステアリングフィールは、ちょっとほめすぎのような気もするが、まるでサマータイヤのようである。

比較タイヤはX-ICE SNOWで、こちらもドライ路面での評判がいいスタッドレスタイヤだけに違いが分かるか不安だったが、床下からの透過音の少なさで新・旧を判別できそうだ。ちなみにスタッドレスタイヤで聞き覚えのある高周波ノイズは、どちらも見事にカットされていた。

こうしてプログラムを進め、X-ICE SNOWとX-ICE SNOW+の性能差がより明らかになったのが、最後のウエット路面での制動テストセクションだった。

「X-ICE SNOW+」のテストが行われた高崎健康福祉大学伊香保リンク。巨大なミシュランマンが参加者を迎えてくれた。
「X-ICE SNOW+」のテストが行われた高崎健康福祉大学伊香保リンク。巨大なミシュランマンが参加者を迎えてくれた。拡大
「X-ICE SNOW+」は、極低温でもしなやかさを失わない「フレックス–アイス3.0トレッドコンパウンドテクノロジー」を採用。これが氷・雪の路面でしっかりとグリップを発揮し、ドライやウエット路面でも安定して走ることができる秘密だ。
「X-ICE SNOW+」は、極低温でもしなやかさを失わない「フレックス–アイス3.0トレッドコンパウンドテクノロジー」を採用。これが氷・雪の路面でしっかりとグリップを発揮し、ドライやウエット路面でも安定して走ることができる秘密だ。拡大
235/60R18サイズの「X-ICE SNOW+」を装着した「日産エクストレイル」で、ドライの一般道を走行。腰のあるしっかりしとしたステアリングフィールは、まるでサマータイヤのようであった。
235/60R18サイズの「X-ICE SNOW+」を装着した「日産エクストレイル」で、ドライの一般道を走行。腰のあるしっかりしとしたステアリングフィールは、まるでサマータイヤのようであった。拡大
水をまいた舗装路で「X-ICE SNOW」と「X-ICE SNOW+」(写真)の比較テストを実施。約50km/hからフルブレーキングを行い、それぞれの制動距離と挙動を確認した。
水をまいた舗装路で「X-ICE SNOW」と「X-ICE SNOW+」(写真)の比較テストを実施。約50km/hからフルブレーキングを行い、それぞれの制動距離と挙動を確認した。拡大

大きく進化したウエット制動性能

ウエット路面での制動テストは、水をまいた舗装路で約50km/hからフルブレーキングを行い、制動距離を確認するというもの。フルブレーキング時に足裏で感じるフィーリングには大きな違いはなく、どちらもリニアに、そして強力に減速Gが立ち上がる。ガツンとブレーキが利く印象だ。ただ、X-ICE SNOW+のほうが、制動距離は断然短い。それは誰の目にも明らかで、今回は事情により機器による制動距離の計測は行われなかったが、体感的には半車身分ぐらい手前で止まる感覚だ。

ミシュランによれば、ウエットブレーキ性能はX-ICE SNOW比で約7.3%の向上とされる。社内テストでは80km/hから完全停止までの制動距離比較で、X-ICE SNOWの44.0mに対して、X-ICE SNOW+では40.8m(!)であったという。

X-ICE SNOW+がセリングポイントとする耐摩耗性能と低燃費性能の向上、摩耗が進んだ後も性能が落ちにくいという項目を短時間の試走で確認することはできないが、ミシュランは最初の1kmから最後の1kmまで安心感が続くとうたう。

降雪地の冬道は、ドライ/ウエット/シャーベット/圧雪/アイスと行く先々で目まぐるしく変化し、同じ路面は二つとない。これまで冬道のドライ路面で、操安性やロードノイズ、乗り心地をがまん……というか、「まぁスタッドレスタイヤだしこんなものか」と思っていた人に向けたミシュランの新たな提案がX-ICE SNOW+である。

その乗り心地やハンドリングは、氷上での水膜除去や吸水を、ミクロレベルでチューニングした専用のコンパウンドやゴムなどの素材で行う他メーカーの製品とは異なるものだ。サマータイヤに近いステアリングフィールと乗り心地は、X-ICE SNOW+の特徴にして最大のアドバンテージといえる。

(文=櫻井健一/写真=日本ミシュランタイヤ、webCG/櫻井健一)

ウエット路面での制動テストには「トヨタ・プリウス」が用いられた。手前が「X-ICE SNOW」を、奥が「X-ICE SNOW+」を装着した車両で、装着サイズはいずれも195/50R19。
ウエット路面での制動テストには「トヨタ・プリウス」が用いられた。手前が「X-ICE SNOW」を、奥が「X-ICE SNOW+」を装着した車両で、装着サイズはいずれも195/50R19。拡大
約50km/hからのフルブレーキングでは、「X-ICE SNOW」よりも「X-ICE SNOW+」のほうが、制動距離が短かった。体感的には半車身分ぐらいの違いを感じた。
約50km/hからのフルブレーキングでは、「X-ICE SNOW」よりも「X-ICE SNOW+」のほうが、制動距離が短かった。体感的には半車身分ぐらいの違いを感じた。拡大
ミシュランの社内テストでは80km/hから完全停止までの制動距離比較で、「X-ICE SNOW」が44.0mであったのに対して、「X-ICE SNOW+」では40.8mを記録したという。
ミシュランの社内テストでは80km/hから完全停止までの制動距離比較で、「X-ICE SNOW」が44.0mであったのに対して、「X-ICE SNOW+」では40.8mを記録したという。拡大
「X-ICE SNOW+」の試走会場に展示されたミシュランの歴代スタッドレスタイヤ(写真手前が最新のX-ICE SNOW+)。ミシュランでは1982年に発売した「XM+S100」を、現在のスタッドレスタイヤの原型と説明している。
「X-ICE SNOW+」の試走会場に展示されたミシュランの歴代スタッドレスタイヤ(写真手前が最新のX-ICE SNOW+)。ミシュランでは1982年に発売した「XM+S100」を、現在のスタッドレスタイヤの原型と説明している。拡大
櫻井 健一

櫻井 健一

webCG編集。漫画『サーキットの狼』が巻き起こしたスーパーカーブームをリアルタイムで体験。『湾岸ミッドナイト』で愛車のカスタマイズにのめり込み、『頭文字D』で走りに目覚める。当時愛読していたチューニングカー雑誌の編集者を志すが、なぜか輸入車専門誌の編集者を経て、2018年よりwebCG編集部に在籍。

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