トヨタ・カローラ ツーリングW×B(FF/6MT)
筋力が欲しい 2020.07.20 試乗記 1.2リッター直4ターボエンジンにレブマッチ機能付きマニュアルトランスミッション「iMT」を組み合わせた「トヨタ・カローラ ツーリングW×B」に試乗。新世代プラットフォームや個性的なデザインを用いて若返りを狙ったという、新世代「カローラ」の走りやいかに?この反応には覚えがある
トップ6速で100km/hをキープするとエンジン回転数は2000rpmほど。ほんの少しの上り坂に差し掛かり、スピードが落ちかけたので半ば無意識にスロットルペダルをわずかに踏み込むが反応しない。5速に落として速度回復を図るものの、やはり満足なレスポンスが得られず、さらに4速にシフトダウン。ああ、このもどかしさには覚えがある。と、頭の中の引き出しをあさる。あれは同じ1.2リッター直噴ターボを積む「C-HR」だった。上信越道の長い上り坂で床まで踏み込んでもなかなか加速せず、抜いたトラックに後ろに迫られてひやひやしたものだ。
2019年9月に通算12代目にモデルチェンジしたカローラのワゴンが「カローラ フィールダー」改めカローラ ツーリングである。1.2リッター4気筒ターボ搭載車は今どき珍しく、6段MTとの組み合わせとなる。新世代のTNGAプラットフォームを採用し、ボディーの幅も長さも切り詰めた低くスリークな日本国内専用ボディーに生まれ変わって若返りを狙ったことが最大の特徴。その中でもスポーティーモデルという位置づけだろう。
ところが肝心のエンジンに活気がない。8NR-FTS型はトヨタ初のダウンサイジングターボとして「オーリス」に積まれてデビューした1.2リッター直4直噴ターボエンジンで、最高出力116PS(85kW)/5200-5600rpmと最大トルク185N・m(18.9kgf・m)/1500-4000rpmを生み出す。
この数字を見る限り悲観的にならずともすむはずなのに、さらに車重は1320kgとそれほど重くはないはずなのに、実際にはモアパワーを望む場面が多いのだ。
癖はないけど力もない
街中や交通量の多い一般道での印象は悪くない。悪くないどころか、サラリと身軽で扱いやすい。クラッチをつなごうとするとエンジン回転をわずかに持ち上げる機構も付いているようだし、シフトもクラッチ操作そのものも軽く、さらにスポーツモードを選ぶとエンジン回転数を合わせるシステム(iMT)も作動するので、マニュアルトランスミッションにあまり慣れていないドライバーでもギクシャクすることはないだろう。至れり尽くせりである。
ところがオープンロードに出て少しスピード域が上がると印象が一変する。低いギアではスイッと出るが、ある程度スピードが乗ってからは思い切ってスロットルペダルを踏んでも、あれれ? と思うほどレスポンスが得られない。癖のない軟水のミネラルウオーターのようにきれいにスムーズに回るが、トルクは細く平板で、これが本当に直噴ターボ? と首をかしげたくなるほど。といって実用燃費も特筆すべきものではない。
GA-Cプラットフォームを採用したことで低くスリークになった新型のプロポーションはなかなかにカッコいいが、その分AピラーとCピラーは大きく寝かされており、コーナー部分に細いサブピラーを何本も建ててサイドウィンドウとの兼ね合いを処理していることが分かる。
運転席まわりの視界に特に問題はないが、低く構えたことで乗り降りにも影響が出るのは現行「プリウス」と同じ。特に後席に乗り込む際にはかもいに頭をぶつけないよう注意が必要だ。
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インテリアには疑問が残る
上質とまでは言えないが、整然と仕上げられたインテリアの中でとりわけ目立つのはダッシュ中央にデンと据え付けられた大型スクリーンである。すっきりとした水平基調のインストゥルメントパネルの上にそびえるモニターは田舎の実家のテレビのように巨大に見える。しかもトヨタとしては初めてのディスプレイオーディオである点が新しい。
これはスマートフォンとの接続を前提としたインフォテインメントシステムで、さまざまなアプリケーションを利用できる。もちろん従来通りの車載ナビゲーションシステムも選択可能であり、試乗車にはオプション(11万円)の「T-Connectナビキット」が装備されていた。
ただし、四角いディスプレイだけが浮いているように見えるし、便利とか操作性うんぬん以前に今どき画面が粗く、鮮明ではないことにちょっとがっかり。大きなディスプレイはおそらく車内で動画を見たいという需要に応えたものだろうが、今は“ながら運転”の罰則が厳しいことを忘れてはいけない。
インテリアはやぼったいハイバックシートも含めて黒一色で、正直なところちょっとさえない感じ。ピラーが寝ていることもあり低く閉じ込められた雰囲気だ。そんなにも低くスリークであることが必要なのか、スポーティーモデルといえばMTで黒内装なのかなど、疑問は残る。トヨタが引きつけたい若者の多くは素直に歓迎してくれるのだろうか。
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乗り心地は近年のトヨタ車でベスト
いっぽうダイナミックな性能という点では、新世代プラットフォームを得て低くなったことは大いに効果があると言えるだろう。高いスタビリティーや安心できるステアリングフィール、けれん味のないすっきり素直なハンドリング、しっかりとした乗り心地など、基本性能は見違えるほど向上している。もちろん、従来型と比較するのは新旧の開発陣にとっても本意ではないだろう。
従来型は、極端な言い方をすればコストの制約が大きすぎた。先代「ヴィッツ」と同じコンパクトクラスのプラットフォームを使わざるを得ず、あらゆる面で満足できるレベルには達していなかったのである。それゆえ新型になって海外向けと同じレベルに底上げされたことは大歓迎である。
さらに最近発売されたヴィッツ改め「ヤリス」と比べても、こんなにも違うかと驚くほどしなやかで、ロードノイズなどもきちんと抑えられている。近年のトヨタ車の中ではベストの乗り心地と言いたい。
それゆえに惜しい。もう少し鍛え上げた筋肉があれば、さらにもう少し明るく、現代風に洗練されたインテリアがあれば、スカッと気持ちよく、どこまでもロングツーリングに出かけたいクルマになるはずだ。
(文=高平高輝/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
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テスト車のデータ
トヨタ・カローラ ツーリングW×B
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4495×1745×1460mm
ホイールベース:2640mm
車重:1320kg
駆動方式:FF
エンジン:1.2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6段MT
最高出力:116PS(85kW)/5200-5600rpm
最大トルク:185N・m(18.9kgf・m)/1500-4000rpm
タイヤ:(前)215/45R17 87W/(後)215/45R17 87W(ブリヂストン・トランザT002)
燃費:15.8km/リッター(WLTCモード)
価格:245万8500円/テスト車=289万4826円
オプション装備:ボディーカラー<ホワイトパールクリスタルシャイン>(3万3000円)/ステアリングヒーター+シートヒーター<運転席、助手席>(2万7500円)/ブラインドスポットモニター<BSM>+リアクロストラフィックアラート<RCTA>+オート電動格納式リモコンドアミラー<ヒーター、ブラインドスポットモニター付き>(6万6000円)/クリアランスソナー+バックソナー(1万5400円)/ディスプレイオーディオ<9インチディスプレイ+6スピーカー>(2万8600円)/おくだけ充電(1万3200円) ※以下、販売店オプション T-Connectナビキット(11万円)/トノカバー(2万5300円)/ETC2.0ユニット<ビルトイン>ナビキット連動タイプ<光ビーコン機能付き>(3万3176円)/カメラ別体型ドライブレコーダー<スマートフォン連携タイプ>(6万3250円)/フロアマット<デラックスタイプ>(2万0900円)
テスト車の年式:2019年型
テスト開始時の走行距離:1352km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(6)/山岳路(1)
テスト距離:203.1km
使用燃料:18.0リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:11.2km/リッター(満タン法)/12.3km/リッター(車載燃費計計測値)

高平 高輝
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